「雷」
「っく・・・ぇっく・・!」
シスイはすっと雷を抱きしめた。
雷は彼女の首元に顔を埋めた。
「・・泣かないで雷。もう泣かないって決めたじゃない」
「・・・っうん・・」
「泣かないで・・ずっと私の傍にいるんでしょう?」
「・・・うん・・・っ!!ごめ・・・なさい・・・!」
「あら、謝ることなんてないわ?・・それにさっきのちょっと嬉しかったし」
「ほ・・と?」
「本当。・・私は大事にされてるなぁって」
すると雷はバッと顔を上げ、シスイを見た。
シスイは涙でぐちゃぐちゃになった雷の顔をゆっくりと撫でた。
「あったりまえでしょ・・!僕も海輝も珀も牙も奏もみんな、シスイが大事なんだからね・・!」
「・・ありがとう雷・・」
「っうん・・!」
さて。とシスイはいい、立ち上がる。
「サイユウに行く準備をしましょう」
「シスイ様。荷物なら私が全て纏めます」
「手伝います珀」
二人はそそくさと準備をしに戻っていった。
シスイはありがとうとお礼言いながら、奏たちに向き直った。
「じゃあ行きは奏、帰りは牙。乗せていってもらえる?」
「とーぜん!シスイの頼みを俺らが断ると思ってる?」
「承知」
牙は原型に戻り、自分からMB(モンスターボール)に入っていった。
雷も同様だ。
そしてしばらくして荷物を纏めた珀と海輝がやってきて、「どうぞシスイ様」と荷物を彼女に渡す。
海輝はそのまま原型に戻りMBに入る。
大きめのショルダーだが、割と色んなものが入る優れもの。
だが、それには必要最低限のものしか入っていない。
それをシスイは「ありがとう」と受け取ると、肩に掛ける。
そしてパタパタと準備運動をしている、奏のもとに駆け寄り慣れた風に跨った。
「よろしくね奏。疲れたらいつでも言って」
『うん、ありがとうシスイ。じゃあ早速出発するから、しっかり掴まっていて』
ふわっと飛ぶ奏。
歌声のような羽音が辺りに木霊した。
〜続く〜
初めまして。べにです。
連載第1話でした。
よろしくお願いします。
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