突如。
彼らの前に長身のポケモンが現れた。
赤が特徴的なそのポケモンは。
もうかポケモンの“バシャーモ”
『ば、バシャーモ・・・?』
奏が目を瞠る。
バシャーモの腕には最愛の。
『し、シスイ・・様!!!』
シスイが抱かれていた。
珀はすぐに人型になり、バシャーモに近づく。
「貴方が、シスイ様を・・」
バシャーモはこくりと頷いた。
珀はバシャーモからシスイを受け取るとその華奢な身体を離すまいと掻き抱いた。
『シスイは・・?』
「生きています・・・少し冷えてしまっていますが、まだ温もりがあります」
珀は心底安心したように彼女を抱え直した。
その言葉に奏たちも安心したように息を吐いた。
「バシャーモ、助けていただき本当にありがとうございました」
珀は深々と礼をする。
バシャーモは珀をじっと見て、頭を振った。
『いや・・助けてくれたのはシスイの方』
少し低め、だけれど高すぎないその声。
珀は目を見開いた。
「何故・・シスイ様のお名前を・・」
『俺、シスイにずっと守ってもらってた』
ずっと守ってもらってた・・・?
珀は一つの結論にたどり着いた。
もしや。
このバシャーモは。
「あの“赤いタマゴ”・・・?」
バシャーモはまた一つ頷いた。
そこにすかさずいつの間にか人型に戻っていた奏が入った。
「待って待って待って!!何でタマゴから産まれたのがバシャーモなの!!何で最終進化系?!」
確かに。
普通タマゴから産まれてくるのは、彼の最初の姿であるアチャモやピチューや、なんや可愛らしいポケモンなはず。
しかし、目の前にいるのは長身で産まれたばかりとは思えない貫禄があるバシャーモ。
一体どういうことなのか。
「考えてもみろ皆」
しばらく黙っていた牙がようやく口を開いた。
彼は奏の隣に移動して、バシャーモを見上げる。
「いいか。4年もタマゴに引きこもりだったんだぞ。
タマゴの中とは言えそれなりの経験値が貯まると考えれば。
やっと出てきた反動で、一気に最終進化になってもおかしくはない」
牙の意見に皆、あぁ、と納得する。
4年もの年月が彼を強くしたに違いない。
バシャーモも頷く。
『俺もシスイが起きるまで待ちたい。家、連れてって・・?』
バシャーモは珀に言った。
珀は、もちろん、と言い、彼らは一先ず家に戻った。
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