彼らは聞いた。
拝啓 お父さん。
お元気ですか。
私は元気です。珀達もみんな元気にやっています。
シンオウの気候はどうですか。
タマゴの様子は…
手紙を書いていた。
宛先は勿論シンオウで医者をしている父にだ。
少し書いて手が止まった。
そして窓際に置いてあるタマゴに視線をやった。
なかなか生まれないタマゴ。
真っ赤な色が太陽の光りに反射して、キラキラ光っている。
私はまた紙面に視線を戻し、ボールペンを握った。
『タマゴの様子はまだ生まれませんが、元気でいるようです』
私はそう書いて誰にも気付かれないように笑った。
* * *
珀は快晴の空の下、いつものように庭に洗濯物を干していた。
雷は珍しくまだ寝ており、牙と奏はいつものようにセンターのフィールドで特訓。
獅闇もまだ安静で、結局家にはシスイと珀と獅闇、そして雷しかいなかった。
「今日も洗濯物がよく乾きそうですね」
『ハクは、いつもおせんたくもの、ほしてるのね』
『!シスイさま・・・はい、わたくしは父から干すようにいわれておりますから・・・』
『じゃあ、ハクがほしたからきっと早くかわくわね!!』
幼き頃。
小さかったシスイが珀にそう言ったのを珀はふと思い出した。
“ハクがほしたから”
なんの根拠もないその話さえ、珀は愛しくて仕方がなかったのを覚えている。
きっとその時から珀は彼女が自分にとってなくてはならない存在になるとわかっていたのだろう。
珀は自分の手の中にある洗濯物を見て、目を細めた。
そして窓際にあるタマゴに目をやる。
重大な任務を背負ったシスイ。
それでも珀は彼女にいつも笑っていて欲しい。
だから、全力で彼女のサポートをする。
珀はそう改めて決意して、また洗濯物を広げ始めた。
すると。
「珀ー…ごはんー・・」
雷が目を擦りながら、珀の元に来た。
珍しく遅くまで寝ていた雷。
おそらくシスイか誰かが彼を起こしたのだろう。
時刻は昼近いだろうか。
珀はそんな雷の姿を見て、くすっと笑った。
そしておはようございますと挨拶をする。
「ん・・おはよー珀」
「すみません、これを干してしまいますね。それから昼食にしましょう。その前に雷、顔を洗ってきなさい」
「はーい・・」
未だ眠そうに欠伸をしながら家に入っていく雷。
それを見届けて、珀は残りの洗濯物を干しにかかった。
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