「まぁまぁ、二人とも。少し落ち着いたらどうですか?」
「海輝は何とも思わないの!?こいつにシスイ盗られそうなんだよ?!」
海輝はそっと二人の間に入り込み、仲裁に入った。
雷は興奮冷めやらぬというように海輝に詰め寄った。
心なしか息も荒い。
「シスイは物じゃありませんからね雷。
あーえーっと・・ラティアス?でしたよね、貴女も少し落ち着いてください」
海輝はラティアスの顔を覗き込んでニコッと笑う。
「!」
ラティアスは海輝のあまりの綺麗さに言葉を失っているようだ。
ぽかーんと口を開けて、彼の顔に見惚れている。
「ラティアス?」
海輝は心配になって、さらに顔を近づけた。
ラティアスははっとして、ものすごい勢いで彼から距離を取った。
そんなラティアスの様子に海輝は首を傾げた。
「な、なな、なんでもないよ・・!!」
「そうですか?なら、よかった」
そして離れていったラティアスに再度近寄り、ポンと頭を撫でる。
どうやら警戒はされていないようだと判断し、そのまま撫で続ける。
ラティアスは顔を真っ赤に染めながらも、されるがままになっていた。
「(あーあ・・あいつ、惚れちまってる)」
獅闇はその光景を見ながら、ふと隣にいる雷に目を向けた。
「(雷・・?)」
ぐっと唇を噛み、何かに耐える様なそんな顔。
眉間には何本も皺が寄っている。
珍しい顔だな、と思い獅闇は雷に声を掛けようとしたが……
「もう皆知らない!!!」
雷はそのままばっと駆け出すと、二階へ上がっていってしまった。
「!雷!!」
獅闇が追いかけようとするが、意外な事に海輝に止められた。
獅闇は止まると、海輝に顔を向けた。
「獅闇、いいです」
「!海輝・・?」
「雷には少し大きくなってもらわなければいけませんしね」
少し放っておきましょう。
そう海輝は言い、ラティアスの腕を掴んでソファに座らせた。
「待っていてください、今ジュースをお持ちしますね」
とキッチンに入っていってしまった。
獅闇は納得がいかないものの、きっと雷のことをよく知っている海輝のことだからこれが最善の策なんだと思い、またソファに座り直した。
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