『いたいたいたあああああ!!緑の兄ちゃあああん!!!』
「ん・・・?・・!!ぶほぉぉっ!!!」



突然。
奏の顔面に何かが直撃した。
結構大きい。

牙は人型になり、それを覗き込んだ。
茶色い体躯に特徴的な頭。
羽・・・



「ムクホーク・・」



牙は未だ奏の顔の上で目を回しているムクホークの首根っこを引っ掴み、持ち上げる。




「痛い・・・誰だよ・・・・ムクホークぅ・・?なんでまた・・・!」



奏は牙の手にいるそれを見て、目を丸くした。
そしてばっと立ち上がる。



「何かデジャヴ」
「ああ」



こいつやっぱ馬鹿だと奏は訝しげにムクホークを見た。
牙は容赦なくムクホークを揺らす。



「おい、起きろ」
『んぁ・・おえっ!揺らすな・・!揺らすな・・!吐く!!吐くから!!』




牙はムクホークを地面に下ろし、用件を聞いた。
するとムクホークは掛けていたショルダーバッグの中から何かを取り出す。



『ほい、これ。ウツギ博士から』
「「!!」」



渡されたのは・・・・・赤いそれ。
そう、ウツギ博士に預かってもらっていたタマゴ。



「うっそ・・・返ってきた・・」
「で?伝言は?」



そう牙がムクホークに問うと、彼はまたショルダーをゴソゴソと漁り手紙を渡した。



『ん。これに全部書いてあるけど、一応言っておく。
簡単に言うとまだ産まれない。
本当に何かに怯えているらしい。
だけど、こっちでも結構ガタガタ動いていたみたいだから、時間はまだ掛かると思うけどこいつは生きることを諦めていないって』



奏はタマゴをそっと持ち上げ、落とさないようにしっかり抱えた。



「了解した、シスイに伝えておく」
「というか・・さ。お前、タマゴ持って俺に直撃したよな」
『・・・・・・・・・・・あ』



奏は無言でムクホークの頭に拳骨を落とす。



『いだぁぁあ?!?!』
「割れたらどうすんだよ、このマヌケ!!!お前いっぺん死んで来い!!」



奏はムクホークに怒鳴った。
それは、もう、すごい形相で。


『嫌だ!俺、何度も見てる、三途の川!!』
「じゃぁそれ渡ってこいよ!!」
『それ結局死ねってことじゃねーかああぁあ!!!』



奏とムクホークがガミガミ言い合いをしているのを、ふぅと息を吐いて呆れたように牙は見ていた。



産まれる。
だけどまだ時間が掛かる。
それを聞いて、シスイはどんな顔をするのだろう。

悲しむか・・・嬉しがってくれるか・・
だが、また部屋に篭るようなことは、実のところあまりしてほしくない。

牙はまた息を吐いて、天を仰いだ。



『嫌だ!絶対!』
「じゃあ俺が逝かせてやるよー・・さぁ、歯ぁ食いしばれ!!」
『何でえええ!!』



牙はまだ言い合いをしている二人に近寄り、拳を思い切り振り上げた。


「〜〜っ!!!」
『〜〜っ!!!!」



言いようのない痛みが彼らを襲う。
じんじんと痛む頭。
容赦ない拳骨。

殴った本人は身を翻し、歩き出した。



「帰るぞ、奏。しっかりタマゴ持っておけよ」
「いたい・・・痛すぎる・・・牙・・・」
『青の兄ちゃん・・・冗談キツすぎる・・・』



牙は奏の襟を引っ掴み、ムクホークに目を向けた。



「伝言はしかと聞いた。ウツギ博士によろしくな」
『り、了解・・・』



牙はたまたま持っていたオレンの実をムクホークにあげた。
そしてそのまま奏をズルズルと引っ張っていった。







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