『雷必殺アイアンテール!!!』



上から何かが降ってくる。
それは物凄い電気を帯び、振り下ろされてくる。



奏達は咄嗟に避ける。
黄色い体、バチバチと電気を纏った長い尾。
陥没した地面。
獅闇でもあと少し反応が遅れていたらどうなっていたことか。


彼らはさっと顔を青くした。



『・・・・こわー・・』
『雷・・・』
『容赦ねーな・・・・ッ!!牙、避けろ!!』



牙の後方から放たれる物凄い冷気。
牙はさっと身を翻し、自分の横を通っていった冷気を見やった。




『チッ…“れいとうビーム”ということは・・』



そして牙は放たれた方向を見据える。
そこから現れた長い体躯の綺麗なポケモン。


ニコリと笑って、今度は奏目掛けて“れいとうビーム”を放つ。
奏はそれをくるっと一回転をして、綺麗に避けた。



『ぎゃぁああ!効果抜群だって知ってるでしょ!・・海輝!!』
『すみません、奏のソーラービームを見ていたら放ちたくなりました』
『ちょ、それ意味わかんないからあああ!!
てか、さっきからチクチク刺さってた視線、お前らかああ!!』




先ほど、話している時から何やら気配を感じていた奏。
それはあとの二人も同様に感じ取っていた。
そう、それは海輝と雷の気配。

彼らはいつ奏たちに攻撃を仕掛けようかと機会を伺っていたのだった。




『さて獅闇』
『な、何だよ・・海輝』
『貴方もこれの餌食になってもらいます!』



さっきより威力の上がった“れいとうビーム”が獅闇に向かっていく。
それを見て、ギョッとする獅闇。



『嘘だろ!!』



獅闇も咄嗟に右に避け、パキパキに凍った木を見てさっと顔を青くする。
なかなかの威力である。



『ねぇ、海輝』



すると奏が急に真剣な表情になって海輝を見る。
その変わった雰囲気にその場にいた者達は奏に目を向けた。



『・・何です?奏』
『ちょーっとおいたが過ぎるんじゃない、かなっ!』



低空飛行で海輝に突っ込んでいく奏。
尋常ではないスピードにその場にいた者たちは目を瞠った。



『そんなこと、ありません、よっ!』



しかし、そんなことにも臆することなく海輝はあろうことか、その長い尾をぶんと思い切り振って、奏の体を跳ね飛ばした。




『うわっ・・!』



奏がよろめいた所に容赦なく、海輝はまた冷凍ビームを放つ。


当たる!と思い、奏は目を瞑った。
だが、いつまでたっても衝撃は来ない。
目を開けてみると、牙に“まもる”で守られていた。



『興奮しすぎだ馬鹿』
『・・・わり、サンキュー牙』
『おや、ダブルバトルですか?』



海輝はニコッと笑い、雷に視線を向ける。
雷はわかっていたかのように『ラジャー!』と海輝の隣に移動する。



『雷、俺等に敵うと思ってんの?』
『海輝、悪いが本気でいかせてもらう』
『奏、見くびらないでくれない?僕だって修行してるんだから』
『勿論。こちらも本気で向かわせていただきます』



と4人はバチバチと火花を散らす。
完全に蚊帳の外に放り出されてしまった獅闇は人型になり、呆れた表情をして、この勝負の行方を見守ることにした。


のだが。
見知った気配にふっと顔を向けた。






そこにはアブソルの姿の珀と、シスイが立っていた。



『お疲れ様です、獅闇』
「珀!シスイ!」
「皆いないから、何やってんのかと思えば・・まったく…」



シスイはやれやれと肩を竦め、止めに入ろうと一歩踏み出したところで珀に止められた。
珀は凛とした顔ですっと一礼した。



『シスイ様。シスイ様が自ら止めに入る必要は御座いません。
私が、しっかり、止めさせて頂きます』



珀はシスイに視線を向け、スタスタといつものように優雅な足取りで光線が飛び交う中に入っていった。




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