「そういえば、牙は?」


先ほどから姿が見えない仲間の姿にシスイは首を傾げた。
いつもならそこのロッキングチェアに座って読書に勤しんでいるというのに。

キョロキョロと見回しても彼の姿はなかった。



「あー、アイツ一人でポケモンセンター行ったよ」
「一人で?」
「うん、何か女の子に呼び出されてるっぽい」


奏は何ともないように言うが、その場にいた者達は目を丸くした。



「「「「女の子・・?」」」」
「ありゃあ告白だね」
「告白ぅ?!」


洗面所から帰ってきた雷が皆を代表して、その言葉を繰り返した。


「き、牙、告白されてるの?!」


雷はぐいぐいと奏の腕を引っ張って聞いた。


「そーなんじゃないかな?
俺等毎日のように、センターでバトルしてるけど、ここ数日なーんか視線感じんなぁって思ったら女の子がこっちずっと見てたし」




幸い、人の姿になるところを見られていたわけではないらしいが、奏と牙はその視線のせいで最近集中して特訓できていないという。



【うっわ!!あっつ!熱いよ!牙!】
【集中力が切れているぞ奏】
【・・あー!もう止め止め!!視線が痛くって集中なんかできねーし!】



「なんて、もろに火炎放射浴びたし・・俺」



と言うと、隣で獅闇が爆笑する。
獅闇の頭を軽くごつくと奏は“参ってたんだよねー”とため息を吐いた。



「それで・・牙は今、ボーマンダの姿なのでしょう?」



と今までキッチンにいた珀がシスイの逆隣に座って、奏を見る。
奏は頭の後ろで手を組み、うーんと唸った。




「そこまではわっかんないなぁ・・だけど、あの子は何とかするって自分で言ってたし。
というか・・確実に牙狙いか・・うー・・何でいっつも女の子にモテるの牙なんかなー・・」



奏はそう嘆き、テーブルに突っ伏した。
しかしそれを言った瞬間、彼はしまったという顔をした。



「いやシスイ!違うよ!そりゃあまあモテたいけど・・って・・・い、いや・・ほんと違・・」
「そうなの・・奏が彼女連れてきたら少し寂しいわね」



シスイはそう言って、少し困ったように眉を下げた。
その顔を見て、奏は血の気が引いていくのがわかった。



「奏」
「奏?」
「ちょ・・う、嘘だって・・冗談だよ・・なんで、そんなオーラ出すかなぁ・・海輝も珀も・・落ち着いてってば!!っ助けて!獅闇!」
「「自業自得」」


獅闇と雷が口を揃えて言った。


「お。雷、自業自得なんて使えたのか」
「へっへーん!僕だってちゃんと勉強してるんだよー」



奏を無視して、獅闇は雷と喋りだしてしまった。



「そっかそっかあ…」


シスイは意味ありげに言葉を零し、窓の外を見ている。
だが、奏はそれにも気付かないほど慌てていた。



「え、まっ、え・・シスイ・・!嘘だよ!俺にはシスイだけだからね!ね!?」
「「奏・・?」」
「珀!海輝も!!ちが・・ぎゃああああ!!」






断末魔が家中に響き渡った。






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