立ち寄った本屋でふと目についたヒーロー雑誌、表紙はアマイマスクさんが飾っている、また髪型変わってるよ、オシャレだなあ。普段は評価なんか気にしないがたまには見てみるか、とパラパラめくってみることにした。わたしもよく怪人から街を守ってるし、良いコメントを貰っててもいいんじゃないかな。

順位は特に変化なし。S級なんて人数も少ないし、皆したいことをしてるだけだから大きく上下することも特にない。だいたいシルバーファングさんやキングさんの上に行こうとなんて思わない、おこがましすぎる。1ページずつ貰った特集にはわたしの写真がずらりと並んでいた。先週コアラみたいな怪人を倒した時の写真、 オフィスにいる時の写真。探偵やってる時の写真も載るのか、うわ、物陰に隠れてるわたしだ。尾行してるわたしを尾行するってどういうことよ、気づかなかった。ヒーロー活動の評価は上々、良かった良かった。

ぼやーっと眺めながらページを進めると、市民からの投稿ページに行き着いた。わたしのファンとかいるのかな。ちょこっと弾む気持ちで読み始めたわたしが雑誌を棚に戻した時には、言葉を失っていた。唖然、愕然。突然ポケットで響いた着信音に弾かれたように走り出す。相手は察した。目指すはビルの合間から覗くあの白煙だ。



収まりつつある粉塵の中にヤツはいた。服の名残りしか残さない布を身につけたゾンビマンが、わたしを見つけて耳に当てた携帯を下ろす。

「ゾンビマンさんよォ、何度も言うけどさ、いいかげんわたしをアンタのパシリにするのやめてよね」

ばさり、と服を投げ渡す。受け取ったゾンビマンはいぶかしげな顔はするものの、何も言わない。それをいい事にわたしは話を続けた。

「ねえ、わたしが街で何て言われてるか知ってる?雑誌で読んだの。教えてあげる」


『ゾンビマンがいる所にいつもいるイメージ!付き合ってるのかなー』
『ちゃんとヒーローしてるの?ゾンビマンのマネージャーかと思った』
『毎度ゾンビマンの服持ってきてあげてるよね、2人の関係が気になる。恋人?』エトセトラ・・・


あの雑誌を読むまでこんな風に見られてるだなんて、知らなかった。どれだけこのパシリ活動が目立っていたのか、考えると嫌気がする。以前、だいぶ前になるが、その時のわたしに対する市民の評価はどうだったか。探偵業と掛け持ちしながら活躍するかっこいいヒーローだったじゃないか!今でもそういった言葉をくれる人はいた、だが、どうだ、コイツのおかげでわたしに対する評価が不名誉な方向へと変わってしまったことは紛れもない。事実とは程遠いあらぬ噂が立ってしまった、恋人?マネージャー?関係が気になる?そんな面白い関係があるか、いやない。いくら評価を気にしないと言えども限度があるだろう。探偵としてのイメージは大切にしていたい。しぶしぶながら我儘を聞いてたが、それも今日まで。話をつけよう。わたしは探偵をしているヒーローである!


ふむ、
黙って話を聞いていたゾンビマンが口を開く。

「なあなまえ、いっそのことお前探偵やめて俺の横に一生就職しろよ。仕事には困らせないぜ」
「は、」

それは一生電話一本でコイツの服をデリバリーし続けろってことか。パシリ続行、いや、マネージャー?探偵としての自分を保つことを諦めろと言いたいのか。


突如湧き上がる群衆の声、拍手、
おめでとう?お幸せに?・・・待て待て待て!

「いや!今のプロポーズとかじゃないから!一生パシリ宣言がプロポーズでたまるか!ゾンビマンも何とか言ってよ!」

ディスワズオンリーワットヒーセイド
いつもならペラペラと喋る彼が今日言ったのは、たったのあの一言。頭が真っ白になる。ニヤニヤ、口角をこれでもかと釣り上げるゾンビマンは、何を言ってもこちらを見ているだけだ。どうしてこんなことになった。彼の真意がわからない。どういうつもり、からかってるの、それともーーー



探偵業を辞める気はないものの、未だに続く胸の高鳴りが、これから今まで通りの目であいつを見れないことを物語っていた。



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