最近の彼らの行動は目に余る
なまえは憤った。彼らとはもちろん悪戯仕掛け人のことである。7年生となり残りのホグワーツ生活も残すところ数週間、彼らの活動は日に日に華やかさを増していた。(増していったのは華やかさだけじゃない。)そう、事あるごとに花火をあげ、浮かれ気分の7年生と盛り上がるのなら良い。

「何してるの」

繰り広げられる光景はもはや馴染み深くなったものだ。仕掛け人によるスリザリン生への悪戯、もっともこのところはかわいい悪戯と呼べる範囲に留まらない。悪質、陰湿さを増している。誰彼かまわずスリザリン生を対象にするのだ。今も縄で2人の生徒を縛り上げ引きずり回すシリウス・ブラックと隣で笑うリーマス・ルーピンがみえる。


ディフィンド、裂けよ
加減しながら呪文を唱えスリザリン生に絡まった縄を切ると、彼らはなまえを気にすることなく一目散に走っていった。(これでは1人で彼らの始末をしなければならないじゃあないか。)一つため息をついて、こちらを睨みつけるシリウスと冷めた目のリーマスに向き直る。


「ブラック、ルーピン、最近あんたたちの行動は目に余る」

あ?
面白くなさそうな声をあげたのはシリウスだった。

「7年間グリフィンドールで生活して何も学ばなかったの?傲慢すぎる、呆れたよ」
「そっちは7年間で純血主義でも学んだかよ。レギュラスとずいぶん仲が良いらしいなぁ?」

ニヤニヤ笑うシリウスは、やはり2人の関係が気に食わなかったようだ。先の不躾な視線を思い出して気分が悪くなる。それは関係ないことだよ、今彼らを助けたのは純血主義のスリザリンだからじゃない。そう言うとシリウスの眉間に皺を寄せた。なぜなまえが行動したのかわからないのだ。なまえが守り、教えとするのは創立者の精神だった。純血など、どうでもよかった。


「ブラック、あんたわかんないの?自分がグリフィンドールに属する意味を。どうやら想像以上に短絡的で頭が回らないらしい」
「テメェ・・・!」
「・・・!」

激昂したシリウスがなまえの胸元に掴みかかった。

「なんだよなまえ、何が言いたいのか知らねーけどよ、邪魔すんなよ」

掴んだ手で、グッと引き寄せられ息が詰まる。(身勝手でなんて傲慢なやつ!ゴドリック・グリフィンドールの精神はこいつにカケラも伝わっていなかった!こうなりゃ最後だ、全部わたしが教えてやる!)掴みあげられて締まった喉を精一杯に開いて、なまえは途切れ途切れ言葉にした。わたしが、何を言いたいか、なんて、わかっているでしょう!

「いいか、グリフィンドールの掲げる精神は、勇猛果敢の信念だ!信念を貫くこと、それは決して傲慢になる事ことじゃあない!」
「…ッ!」

シリウスは苦い顔をした。更に手に力を込めることから、己を顧みているわけではなく、なまえの物言いに苛立ちが増しただけだろう。


「大方純血主義者が気に入らなくて、スリザリンを狙うんだろ、見境なしに、気に入らなければ誰だって対象にする。アンタのそういうとこ、とってもクズだよ。横暴さ傲慢さってのは家を出たくらいじゃ治らないらしい」


バシッ
言い終わるのが早いか頬への衝撃が早いか、なまえの身体は横に飛ばされシリウスの手はもう胸ぐらを掴んではいなかった。リーマスが呪文唱えたのだった。

「…ルーピン」
「大切な友人を罵られて黙って見過ごす程じゃあないんでね」

彼の目は確かに怒りに満ちていた。今までの傍観者の目はどこかへといなかったが、杖は構えていなかった。魔法で争う気はないようだ。なまえは体制を整えリーマスに向き直った。彼女も杖を構えることはなかった。


「確かに彼は成績優秀、生徒の尊敬の的だし人を喜ばす術も知っている、あなたも心から慕い信頼しているんだろうね・・・」

しかし、
そのまま言葉を重ねる。

「ルーピンくん、どんなに大切な友人だろうと美点欠点は区別したほうが良い」
「そういう君は人を受け入れて付き合うことを学んだらどうだい。良いも悪いも全て併せ持つのが人だろう」

どうやら僕らは相入れない考えをもつようだね。リーマスはそれだけ言うとシリウスと共に去っていく。彼らが振り返ることはなく、立ちつくすなまえには、リーマスの言葉が焼き付いて残されただけだった。


「受け入れる・・・こと」


卒業までの数週間、そして卒業後も、なまえと2人が顔を合わせることはなかった。


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