※百合有り





「聞いてゾンビマン。今日ね、タツマキちゃんと一緒にランチに行ったの!」

口角をこれでもかと上げて話すなまえ。突然家に押しかけて何事かと思いきや、いつも通りの惚気話か。なまえのその甘美な色が掛かった目が映すのは、いつだって俺じゃない。なあ、それがそんなに嬉しかったか。今俺の家で俺と俺がお前の為に作った飯を食っているのより嬉しいか。



「帰りに会った怪人を一緒に倒したんだよ」

タツマキちゃんが動きを止めたところで、わたしがトドメを刺したの!
身振り手振り、その時の様子を交えながらアイツがいかにかっこよかったかを熱を込めて語る。つい先日、俺とも怪人を倒したよな。俺のこともそうやって思ってくれたか?



「タツマキちゃんとわたしはずーっと前から仲良しなの」

俺とだってそうだろ、お前にヒーロー協会を教えたのは俺だ。慣れないお前に一から全て教えてやったのだって俺だ。



「タツマキちゃんには何だって話せるんだよ」

俺の方が、現にお前がアイツに話していない愛を、俺には話してる。俺の方がアイツよりなまえの事を知っているに決まってる。



「でも、わたしを愛してなんて、言わないんだ。このままの関係が続けば十分」

わたしは彼女を愛してるけどね、と笑ってはいるが、何という事もないのだと気丈に振舞おうとしているだけなのは明瞭だ。俺ならいくらでも愛してやるのに。お前に悲しい顔なんてさせないのに。





なまえの目に止まった条件は全て満たしている、それどころか俺の方が優っていると思える点だってある。なのに、なまえはどうして女のアイツを選んだ?同性愛に落ちる確率は最低2、3%、最大だって20は越えやしない。そんな不確実なものに俺は負けた。

・・・分かってる、確率がなんだ同性がなんだじゃない事くらい。なまえの中で俺がアイツに及ばなかっただけの事くらい、分かってるさ。ただ理由をつけてこの不満と苛立ちの吐きだし口が欲しいだけだ。

なあなまえ、毎度お前の話を聞かせられる俺の身にもなってくれよ。俺はお前といる時間を一秒でも逃したくない一心で話を聞いているんだぜ。俺には決して向けられることのないお前の表情に死にたくなるのを抑えて、相槌を打っているんだぜ。





永遠に叶いそうにない恋をするお前を愛している俺の恋も、永遠に叶いそうにない。


(俺だってお前との関係を壊したくないから俺を見てくれとは言わないんだ)


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