※男主





「シ、リ、ウ、ス〜ッ!」
「よぉなまえ!楽しい休暇は送れたか?」

新学期のホグワーツ、賑わう生徒の波から少し外れた位置に、友人達と談笑を繰り広げる目的の人物、シリウスを見つけた。掻き分けて彼の元へ向かい、そのノーテンキな顔面に荷物を投げつける。いい気味だ!ずっこけやがった。このまま1発殴りつけてやる!

「おいクソ、ピーター、離せ!殴らせろ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてよなまえっ」

振りかぶって奴に食らわせるすんでのところで、ピーターに押さえつけられた。この腰巾着め。離せ落ち着けの応酬を繰り返すうちに、シリウスはリーマスの手を借りて起き上がってしまった。

「ってー、おい、何怒ってんだよ」
「なんだなんだ、シリウスの奴、またなまえを怒らせたのか」

ジェームズが囃し立てるように言う。僕だって毎度好きで腹を立てているわけじゃない、恒例のような言い方が少し癪だ。悪戯仕掛人共が僕の気に障る振る舞いをしてくる中で(ムカつく)、彼らを呆れた目で制すリーマスだけは良く出来た人間だと思える。

「なまえにまあた変なもの送りつけたんでしょー」
「別に変なものじゃねーよ、マグルの女のエロ本くらい」

平手で頭を叩くリーマス、ジェームズはドン引きだ、大げさに身を引いて友人を見つめている。ピーターはというと唖然としつつも拘束の手を緩めなかったので、僕は自由な足でシリウスをどついてやった。





由緒正しき純血一家、これが僕の家。故にブラック家の長男であるシリウスとは昔からの顔見知りであった。年も同じ為、幼馴染としてまずまずの関係を保っていたが、彼が家への反発を顕著に現し始めた頃、距離を置かれた。今から思えば遠くから睨まれる程度のその関係が羨ましい、しかし当時の僕はなんとか友好を取り戻したかった。(とても不本意だが寂しかったのだ)

とはいえ話しかけても取り合ってもらえない僕に出来ることは無く、諦めようとしていた時であった。シリウス彼自身からニコニコと話しかけてきたのだ。(後になってから知ったことには、彼は僕が純血主義者だと勘違いして疎んでいたそうだ。それが間違いであったと知り、同じ境遇で生きる僕に親近感が湧いたんじゃないだろうかと考える)

再度友好を結ぶと、シリウスとは昔以上に親しくなった。彼がとても懐いてくれているのを感じるが、それが少々困ったことになった。厄介な贈り物をしてくるのだ。具体例を挙げるとすると、ビキニ姿のマグルの女性のポスター、雑誌。いらない。とてもいらないが、何と言おうとシリウスは、一緒に楽しもうぜ!お前も必要だろ?と言わんばかりに持ってくる。とんだ有難迷惑だ。

学年末、休暇に入りやっと彼からの解放を味わっていたところに来たフクロウ、コイツが悪かった。ちょうどその時、僕は母上と進路について話し合っていた、僕の部屋で。フクロウが飛び込んできたのはどこか、僕の部屋だ。そしてソイツが何をしたか、荷物をブチまけたのだ、そうだ、僕の部屋に。何が入っていたか、エロ本だ!



「お前が家にまでそんなもの送ってきたせいで、母上に見られたんだ・・・ッ!」

シリウスがやっと気の毒そうな顔をする。

「怒られたか?それか、気まずい思いでも?」
「いいや」

真剣気味の声で否定。ちら、と見回す。全員がこちらを向いて次の言葉を待っている。関係の無い他3人に聞かれるのも嫌だが、しょうがない。

「夕飯が少し豪華になった」

とたんに沸き起こる笑声、リーマスまで笑ってる、だから嫌だったんだ!ジェームズが小声で、初潮かよ、と言うのを聞き逃さなかった僕は脛を思いっきり蹴ってやった、ピーターの拘束はもう解けている。何も言わないのは言い返せないから。母上は息子の成長を感じて喜ばしかったのだろう。僕はただただ恥ずかしかっただけだ。

「しょうがねぇな、なまえ」

笑いすぎて出てきた涙を拭いながらシリウスが言う。

「クリスマスには俺の1番お気に入りのエロ本送ってやるよ!」

周囲は笑い転げていたが、プッツンした僕はコイツに縛り上げ呪文かけてやった。冗談じゃない。シリウス・ブラック、絶対に許さない。


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