こんな夢を見た。

僕は道行くなまえの後ろを歩いている。辺りは一面真っ白だ。行く先も真っ白で一体なまえがどこに向かっているのかは分からない。そのまま彼女について行くと、なまえのローブの裾からころりと何やら丸く桃色に透き通った、紅水晶のような玉が転がり落ちた。林檎程のサイズで、キラキラと輝きを放つ玉を拾い上げて驚く、この玉、温かい。そしてなんと心臓の鼓動に似た振動を触れた皮膚へと伝えてくる。


なんだかそうしなければいけない気分になって、手の内の玉を胸に当てた。すると、それは服をすり抜け僕の胸に沈む。沈んだ所からそれがまるで溶けるようにじんわり温かくなった。


更に歩いて、またなまえの裾から同じものが落ちた。それを僕は大切に胸へしまう。そんなことを何度か繰り返すと、ふと幾つかの変化が認められた。真っ白だった周囲が色づいて見える、ぼんやりと仄かなパステルだ。そして僕の身体にも。全身がぽかぽか温かい、春の陽気の中にいるようだ。微かな高揚感と漠然としたもどかしさに気もそぞろになる。水晶玉が運んできたこの気分の正体、又は水晶玉それ自体の正体を、僕はたぶん知っている。それがなまえからこぼれ出たものだと思うと、口角がゆるゆると締まりがなくなるのが分かった。






「なまえ!」

座りこんでしまったなまえの側に寄る。なまえの目はぼーっと空を彷徨っていた。僕は自分の胸から桃色に輝く水晶玉を出す、拾ったなまえのそれではなく、確かに僕のものだ。温かく脈打つそれをなまえに手渡すと、一段と輝きを増した。柔らかな光に照らされた彼女の顔が笑顔に変わるのを見て、僕はこの玉の正体についての認識が間違ってなかったことに安堵した。





君が愛を捨てたのなら、拾えば僕のものだよね





そのかわり僕の愛をあげる









紅水晶は愛の象徴として出しました。


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