※ヤンデレのようなもの





だいたいにして"双子である俺たちの性質が違う"というのはあり得ないはずのことなのだ。



俺となまえは、同刻同所で生を与えられた。以来同じように育ち、同じ容姿を持ち、同じ考えで同じ行動をした。そうして物心ついた頃から俺たちは二人で一つの存在だと確信して生きてきたのだ。むしろなぜ一人ではいけなかったのか?身体すら共有してしまえればいいのに、と常々思う。

性差が現れ始めた時、吐気を催すような違和感に襲われた。どんなに俺が、彼女が互いに合わせても覆すことのできない壁がそこにはあったのだ。そしてそれこそが最大の壁と思っていた俺の前に、さらなる障壁が立ち塞がった。

不死の身体。望みもしなかった圧倒的な性質の差が生まれた。これによって今の俺は位置付けられている、彼女から遠い場所に。しかしまあ、悲観ばかりしているわけじゃない。俺は今、一種快感じみた感覚を味わっている。





「今日のハンバーグ、すっごく美味しいよ!」
「気に入ってくれたなら良かったぜ」
「うん!いつもご飯作ってくれてありがとね」


彼女の食卓に上る肉、あれは全て俺だ。"俺"の後に続く"が用意した"だの"調理した"だのと言った語は一切ない。先程切り出した身体の一部が、彼女の口に運ばれている正にそれだ、紛う方なく。今日はどこを使ったかなんて一々覚えてやいないが。これについてなまえは何も知らない、それでいい。気づかぬ内に刻一刻となまえは俺で構成されていくのだ!本当は野菜だって米だって、水だって摂ってほしくない。全てを俺で補ってほしい。こんな考えを持つようになったのも俺が不死になってからなのだから、お前にはきっと解らないだろう。何物にも代え難い感覚だが、一つ例を挙げるとすれば、お気に入りの花を丹念に育て上げているような気分だ。



どこかで皮膚は1ヶ月、血は4ヵ月、骨でも数年で代謝により入れ替わると聞いたことがある。さて今のなまえはどこまで俺になっただろうか?





今日のハンバーグも変な臭いがした。それは嫌な感じはしなくって、どこか慣れ親しんだ匂い。ご満悦の彼はわたしが気づいてないとでも思っているのだろうか。馬鹿だな、彼の考えることなんて全部お見通しなのに。なんてったって双子だからね、全部同じじゃなくちゃ、いけないの。だからこそ彼の行動もわかるのだけど。

先日、どうしても彼と同じになりたくて、行っちゃ駄目と言われてたのにジーナスの元へと頼み込んだ。(彼は偶然の産物で二度と同じものはできないのだと何度も諭された)彼をわたしの手の届かない所へ連れて行っただけでなく、わたしがそこへ追いつこうとするのさえ阻止するアイツが嫌いだった。でも今じゃ少し感謝もしている、少しね。だって特別で素敵じゃない?おかげでわたしは身体全てを彼で創り変えることができる。滅多にあることじゃない、どの双子だって兄妹だって、愛を誓った夫婦だって、同じ物質で構成されることなんてないでしょう?わたし達だけなの。きっと、"わたし達は一緒であるべきだからこそ"の彼の能力なんでしょうね。



お腹の壁からじんわり彼の体温が広がるのがわかる。それは血となり肉となりエネルギーとなり、わたしを彼に置き換える。幸せ!わたしのすべてが彼になる日が、早く来てほしいな。





俺を食べて系ヤンデレと、嫌がらずむしろ喜ぶ系ヤンデレのダブル病気を書いてみたかったんです。
ゾンビマンいくらでもコンティニューするから食べがいがありそうですね。



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