わたしがおそるおそる口に含んだブラックコーヒーは思った以上に苦くて、本当に折原さんは人間のことが好きなのかと疑うくらいだ。

夢の国のクマさんも泣いてるよ。ホットココアとかを入れてもらいたかっただろうに。


わたしがクマさんと目で会話していると、折原さんは窓の外からわたしへと視線を移した。


「まずは名前だね」

「…決めてくれるの?」

「ま、ペットみたいなものだからね。名前がないというのはとても不便だ」


淡々と話す折原さんに、これからわたしはペット扱いされて生きていくのか。

そんなことをするなんて、折原さんは人間が好きじゃないと思う。

まあ折原さんが飽きるまで、この遊びに付き合ったらさっさとここから飛び降りようかな。


わたしの考えていることを読んでいるかのように折原さんの視線はわたしを突き刺した。


「今ムッとした?ムッとしたよね?いや、面白いね。君はもう君じゃないんだ。俺に命を盗られたんだよ。捨ててあったものを興味深さから拾ったわけだから強盗というわけではないけど。とりあえず君は君自身を全て失ったってわけ。なのに君は自分が人間ではないペットというものにされたことにムッとした。実に面白いね」


でた、この絶対噛むような言葉を言っているのに噛まず、早口で喋っているのに聞き取りやすいこの声。





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