ふらふらと路地裏を歩いていたわたしの目に飛び込んで来たのは、高層マンションだった。

セキュリティレベルは高そうだけれど、マンションの住人がオートロックで入るのを見計らってわたしも滑りこめばいいだけの話。


わたしがそんなことを企んでいると人影が現れたので、わたしは反射的にオートロックの解除画面から退いた。


ピーという機械音の後で扉が開き、わたしはオートロックを解除した男の人と一緒に扉の内側へと進んだ。


当然エレベーターホールで一緒になったその男の人を一言で言うのなら、ホストだ。

綺麗な顔立ちをしていて、身につけているものが高そう。都会の高層マンションに住めるくらいなんだからそのくらい普通なのかもしれないけれど。


エレベーターに乗り込んだわたしは、その男の人に尋ねた。


「あの、何階ですか?」

「君と同じ階」

「はい?」


わたしはここの住人じゃないのに、なんでこの男の人はわたしと同じ階だなんて言うんだろう。

もしかしてわたしによく似た女の子がこの男の人と同じ階に住んでいるとか?
でもそうしたらわたしはこの男の人が住んでいる階を当てなければいけないわけで、それがどのくらいの確率かを瞬時に計算してみると、すごく低い確率なことがわかった。


  



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