少し嫌になった。

大好きなはずのチョコレートも、お気に入りのティーカップも、愛用しているサクラ色のシャンプーも、いつも通る繁華街も、点滅する信号機も、夜の薄暗い池袋も、ネオンが眩しい新宿も、嫌になった。

少し嫌になったら全て何もかも嫌になった。


わたしはそれらを嫌いになろうと思って嫌いになったのではない。なぜなのか、理由はよくわからないのだけれど嫌いになってしまったんだから仕方ない。


新宿にある高層ビルの46階。
さすがに屋上や展望台は施錠されていて、セキュリティもきつかったので、わたしは46階という何とも微妙な階に居た。


「開かない」


綺麗な高層ビルの上から舞いたいと思っていたのに、生憎そんな綺麗なビルのセキュリティレベルは高かったみたいだ。

舞えないのならここに居る意味がないから、わたしは場所を移動した。


キラキラしたネオンの下に集まる小さい人間の中に、わたしも入っているんだろうか。

わたしは一人だけ、ネオン街から外れた薄暗い道を歩いているのだから、あんな小さい人間と一緒ではないはずだ。きっとそう、そうであって欲しい。


  



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