臨也さんの家には…いや、わたしの部屋には時計がないことに気がついた。
意識していなかったからわからなかったけれど、こういう雰囲気の時は時計の音がカチカチ響いているのが王道だ。

わたしはそんなことを考えながら、臨也さんが発する言葉を聞かないようにした。


「いいかい、予測不能な君のことはシズちゃんと同じで嫌いだ、生意気だしね。それでも手離さない…手離せないのは貴重だからだと思ってる。それに…」

「それに?」

「君とこうして一緒にいると落ち着くから、死なないで欲しい」

「…それだけの理由で?」

「そうだよ。だから君に生きる理由がないからとかいうくだらない理由で死なれたら困るんだ」


いつもは言葉遊びをするあの臨也さんが真剣な顔をしている。

わたしはその状況に笑いそうだったけれど、というか笑い飛ばすつもりだったんだけど、臨也さんがいつになっても表情を崩さないから、笑えなくなった。


この人、本気だ。


「わたしは気分屋だから、明日空へダイブするかもよ?」

「しないよ」

「なんでそう言い切れるの」

「だって、俺のこと好きでしょ」


はっとした。
わたしの思考回路を先読みする臨也さんには、敵わないんだ。

いくらムカつくから好きだなんて一生言わないと思っていても、全てを見透かしてしまう臨也さんには、わたしなんかとても敵わない。





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