次の日の朝。
いつもは起きるのが遅いわたしが、起こしに来てくれる臨也さんより早く起きてしまった。

どうやっても気持ちがいっぱいで寝られずにごろごろしていると、人の気配がした。もちろん臨也さんだ。


臨也さんはわたしを起こすわけでもなく、ただわたしのことを見ていた。

わたしは臨也さんに見られているだけでドキドキして、心臓の音が聞こえたら嫌だなあと思いながら必死に臨也さんが起こしてくれるのを待った。


ふわっという感触と共に、わたしの髪の毛に手が置かれた。数秒後には離れていたその手が惜しくて、わたしは飛び起きた。


「触れたいなら、もっと触れればいいのに」

「なんで俺が君に…というか驚くから狸寝入りやめてくれる?」

「やめるから質問に答えて。なんで、昨日わたしなんかにキスしたの?」

「人間を愛してるからね」

「…わたしが人間じゃないって言ったら、臨也さんはわたしにキスしてくれなくなるの?」

「人間じゃないの?」

「質問を質問で返すな!に、人間に決まってるでしょ!それくらい例えだってわかりなさいよ。だいたい、人間だからキスするなんて理由が意味不明だってことに気付いてよ。平和島静雄さんだって人間なんだよ、臨也さんはあんなに平和島静雄さんのことを嫌っているのに平和島静雄さんが人間だからという理由だけで平和島静雄さんにキスできるわけ?できないでしょ、できるならしてみなさいよ」

「ちょっと色々な意味で待った、落ち着こう」

「臨也さんの人間が好きだとかいう思考回路を落ち着ければいいはなしでしょ」


わたしはベッドから出ると、ぼすんという音を立てて近くにあったソファへ座った。


人間が好きという思考回路を否定したいわけじゃない。

人間は好きでいいけど、わたし自身のことも好きになってくれないのかな。
そんなことを一瞬考えたら胸がいっぱいになって爆発しただけだ。


「……ねえ、」

「なによ」

「何で泣いてんの」


そんなのわたしが一番知りたいんだけど、そう言おうとしたけれど臨也さんには言っても伝わらないからやめた。


わたしは体育座りをして、臨也さんから顔が見えない体制になると、堪えきれずに声を出して泣いた。



な み だ ご え

明日にでも死のうと思っている君は人間の良さをまだ知らない


090310


   



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