わたしと臨也さんはリビングへ移動しないで、わたしのベッドなサイドテーブルで食事をした。

だってわたしは布団から出られないから。


「そうだ、何で平和島さんとわたしがおしゃべりするの?」

「…へえ、シズちゃんのことは知ってるんだ?」

「え、まあ…」

「俺のことは知らなかったのにシズちゃんのことは知ってるなんて、人間はシズちゃんばっかり愛してるんだね」

「…わたしは人間じゃなくてペットなのでわかりません(笑)」

「(笑)?いま笑ったよね?(笑)ってこのカギカッコ中に使っていいと思って……いや、もういい」

「じゃあ、お金下さい。ペットでも洋服くらい着たいので。いや、別に臨也さんが着るなと言うのなら着なくてもいいのですが、今から外出するんです。このまま服を身につけないで歩いていたら警察に通報されてしまいます。そしたら、臨也さんは警察まで出向かなくちゃいけなくなって、でも臨也さんは警察があまり好きではないと思うからそれだけは避けたいんです」

「…今何も着ていないみたいな口ぶりをしているけど、布団も微妙なところまでしかめくってないけど、俺が貸した服着てるだろ。あと警察は嫌い」


サンドイッチを黙々と食べ始めたわたしに、臨也さんは仕方ないなあ、とぼやきながらカードを投げた。

投げられたカードは黒。


「カードはスキミングする可能性があるので現金がいいです」

「するの?されるんじゃなくて?」

「わたし、機械を扱うのは得意ですよ」

「…もういいから、シズちゃんのとこ行ってきて。今日はシズちゃんに邪魔されたら困るんだ」


なんてうざいくらいに爽やかに言われたのが、その二時間前だった。わたしは特に断る理由もないので、新宿のルミネで一通り身なりを整えた後で池袋へ向かったのだ。

それで今に至る。





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