がらくた | ナノ

「柔造……?」

もう平気だよ、と言ったのに柔造は無言のままずっと歩き続けている。

「柔造、もう、足痛くないから」
「……」

任務の途中、足を痛めてしまったわたしにいち早く気づいたのは柔造だった。任務が終わってすぐ、柔造がわたしのところに来た。その顔はすこし怒っているように見えた。というか、あれは完全に怒っていた。足、大丈夫か?ときかれて、少し痛いかなと答えたら柔造が眉間にしわを寄せた。ああ言わなきゃよかったかも、と思ったときには遅くて。予想通りというかなんというか、柔造はわたしをおぶって帰ると言った。それを断るに断れなくなったわたしは、足の痛みがおさまるまで……という条件で柔造におぶってもらうことにした。
けど、どうやらその条件とやらは華麗に無視されてしまっているらしい。……それにしても、顔は見えないが柔造は完璧に怒っている。いや、こういう場合はキレている、と言った方がいいのかもしれない。

「柔造!」
「……」
「む、無視はよくない……と思う」
「なんや」
「もう平気だから、降ろして」
「嫌」

即答でした。うっ、と言葉に詰まるわたしに対して歩みを止めない柔造。なんだかもうどうでもいい気がしてきた、けれど柔造だって任務の後で疲れているはず……なのにわたしをおぶって帰るなんてもっと疲れるし、迷惑だろう。

「……ごめん」

けどきっと、これ以上なにを言っても取り合ってくれなさそうなので謝っておく。ぴたりと柔造が足を止めた。

「謝るくらいやったらもうこないな怪我二度とするな」

そう言ってくれた柔造に今度はごめんじゃなくてありがとうとお礼の言葉をつぶやいた。



110824