がらくた | ナノ

甘い香りがわたしの身体を包み込んだ。後ろから唐突に抱きすくめられて声が出ない。そんなことをする人はわたしが知っている中でただ一人しかいない。犯人はすぐにわかったが、今は抵抗するのも面倒なので諦めた。

「大人しいな」
「……」
「というより、無反応だな…というべきか」
「…?」

わたしをしっかりと捕らえていた手のひとつが、ゆっくりと離れた。その手を目で追っていたら、それがだんだん上の方に行って、そのまま……耳に触れた。

「つまらないから、少し遊ぶか」
「なん……、ちょっ!」

こいつ、わたしの弱点が耳であるということを知っているな……!どこでその情報を得たんだ、と疑問に思ってすぐシュラが犯人だとわかった。あの子すぐ口をすべらせるから困るんだ。もうやだ、ほんとやだ!なんでよりにもよってアーサーなんかに!

「ッさ、わるな!」
「触るなと言われたら、触る以外に選択肢がなくなってしまうだろう」
「触らないって選択肢どこいったの!?」
「私が消した」
「意味がわからない!」
「やっとオレを見ようとしてくれたな」
「……!」

どうにかアーサーの腕から逃れようと首を後ろにぐぐぐと向けたところで、にやりと笑ったアーサーと目が合う。……こいつ面倒くさい。



110810