がらくた | ナノ

・柔造さんの使い魔



ある出会いをきっかけに、自称悪魔のなまえは俺の使い魔になった。記憶喪失であるらしく、俺と出会うより前のことは覚えていないとか。力を使用していない、通常時のなまえは俺が片手でつかめるくらいのサイズ。人型。重さはほとんど感じない。

「うんうん……」
「なまえ?」

今のなまえは力を使用していて、俺ら人間となんら変わりない姿。今のように無駄に力を使用してこの姿になることが多いなまえは、いざって時に力足りない!いけいけ柔造!なんて使い魔のくせに戦闘に加担しないで小さな姿で逃げ隠れしている。

「やっぱ柔造の肩がいちばん居心地が良いな」
「そうなん?」
「うん」
「前は廉造の膝がええって言ってたやん」
「まあね」
「その前は金造の腹の上がええって言うてたし」
「……ま、まあね…」

目を泳がせるあたり、やっぱ柔造の肩が〜…というのはなまえの意思で言った言葉だとは思えない。どうせ廉造あたりとしたゲームで負け、その罰ゲームで言わされている、とかそんなところだろう。

「で、結局どこが一番ええの?」

こういう時こそ、苛めてやりたくなるもんや。……にやりと笑いながらなまえに聞く。さっき言ったことを、また言わせるために。

「じゅ、柔造の……」
「俺の?」
「柔造の、肩、だよ?」
「……ええ子や」

真っ赤になったなまえの耳に手をのばし触れる。そしてそのまま耳元に口をよせ、囁いた。

「だああああッ!さっきのナシ!別に柔造の肩とか居心地よくない!むしろ悪いね!!」

ポン!と音をたてて、なまえはいつもの姿に戻った。よほど恥ずかしかったのだろう。そんななまえは俺の手の上。

「全身真っ赤やん」
「う、う、うるさい…!」
「で?誰に言えって言われたん?」

まあ予想はついてるんやけどな。

「………………れ、」

長い沈黙、やっとのことで出した「れ」という言葉をきいて確信。言っていいものかすごく迷ったなまえの、精一杯の一文字だったのだろう。

「廉造か」
「う」

バレた、と少し申し訳なさそうな顔をしたなまえに笑顔をむける。

「廉造は後でしばく。……よし、なまえ」
「?」
「もっかい力使え」
「なんで」
「うん?聞くん?聞いても後悔せえへん?」
「や、……じゃあ、イイデス」
「そか。……まあとりあえず、力使うてみ?」
「はいよ」

ポン!

「……で、何するの柔、」

ちゅ。……耳に、唇を近付けてそのまま口付けた。

「ッ、ひ……なな、何すん、の」
「んー?俺が傷ついたから、その仕返ししただけやで?」
「し、仕返しって…」

なんでキスよ、となまえが顔をしかめた。……ほんま、なんでやろなぁ。仕返しとかやなくて、ただ、したくなったからした。なんでやろ、ってそりゃ……好き、やから?

「なんて、アホか俺は」
「??」

最近、廉造とか金造とかと仲良すぎひん?俺の使い魔やのに、とかわけ分からん嫉妬してたなんて…ほんまにただのアホやんか。



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