がらくた | ナノ

また、喧嘩した。燐と。燐にひどいこと言った。それに、叩いちゃった。ごめん、ごめんなさい。もう、もう戻れないよ。
「何やってんだ」
「藤本さん…?」
こんなところにいないで。
「帰ろう、なまえ」
俺達の家に。
「や、だ」
嫌。だって、喧嘩したもん。燐と、喧嘩。また喧嘩したってばれたら雪男にだって呆れられる。藤本さんのやさしい声が、手が、降りてくる。
「なまえ」
「やだ」
「燐はもう怒ってねえって。お前とはやく仲直りしたいって、そう言ってたぞ」
「でも、また、喧嘩しちゃう、よ」
私は他の子とちがうから。
「また喧嘩したら、その時はまた仲直りすればいい」
「藤本さん…」
「おいおい、こんな時ぐらい可愛くパパって呼んでみろって」
「…やだ」
「そういうとこ燐に似てるよなぁ、お前」
「似てないよ、」
「な、帰ろう」
なまえ。
「へんなの」
藤本さんに名前呼ばれたら、ね、もやもやしてたとこが晴れていくの。燐と、仲直りできるかもって思えるの。
「なまえ」
「うん、わかった…かえる」
「んじゃ、手繋ぐか」
「それはやだ」
「…」



110711