がらくた | ナノ

おや、またそんな隅っこで泣いているんですか。
「うるさい」
メフィスト・フェレスの明るい声が降ってきて涙が止まる。
「ここでは貴方の涙を隠してくれるものはありませんよ?」
外は大雨ですけど…、どうです?今から私と散歩でも、というメフィストの言葉を遮って必要ないと答えた。
「…人間とは面倒だ」
「悪魔にどう思われたって構わない」
「本当に、面倒だ」
メフィストの声と一緒に、一気に視界が真っ暗になった。あ。
「なに、して」
…抱きしめられている。というより、覆い被さられている?
「こうしていれば、貴方の涙は他の者から見えないでしょう?」
メフィストの優しさなんか必要ない。ない。絶対いらない。
「やめて」
「嫌です。私がしたいからします」
貴方自身も、貴方の涙も、私がひとり占めします。
「メフィ、スト」
やさしさなんて、いらないのにね。



110710