がらくた | ナノ

「ゆき、おと…こ…くん?」

変わった名前だな、この、奥村くんって子。ゆきおとこくん、か。

「それ、僕のことですか?」
「へ?」
「それです」

わたしが手に持つクラス名簿。それ、と指が後ろからのびてきてそこを見ると眼鏡をかけた男の子が困ったように笑っていた。

「え、あ、」
「おくむら、ゆきお」
「ゆ、ゆきお…」
「…って、読むんですよ」
「! わ、わたしその人に失礼なことを…」
「大丈夫ですよ。その奥村雪男って、僕ですから」
「そう、…え?うわ…あ、あの…!」

ご、ごめんなひゃい!

「ぷっ」

…噛んだ。どうしてこのタイミングで思いっきり噛むんだわたし。奥村ゆきお…くん、が笑ってる。うわ、は、はずかしい…。

「ほ、ほんとにごめんな…さい…ゆ、ゆきおく…あ、奥村くん…」
「名前でいいですよ」
「そう…?じゃあ、その、…ゆきおくん、」
「なまえさんはかわいいですね」

にこり。とゆきおくんが微笑む。
その綺麗な笑みに思わずどきっとする。…ってあ、あれ、わたしの名前、なんで知って…?



110615