がらくた | ナノ

「好きです柔造先輩!」
「おー俺も好きやで」
「あ、あの、」
「ん?」
「すき、です、」
「…!」
「えへ、へ、柔造さんはわたしの大好きな、先輩…です」
「なまえ」
「で、ではまた後で!」





「なまえって全然報われへんよなぁ」
「それ、笑いながら言う台詞じゃないわよバカ」
「一生進展ナシやろ、これ」

にやにやしながら言う金造はただの悪魔だ。魑魅魍魎より酷い悪魔に違いない。

「うるさい」
「俺は口出さん方がエエかー?」
「もう十分口出してんでしょうが、あほ」
「それもそーやな!」
「はー、柔造さん…」
「ほをま柔兄のことばっかやな、なまえは」
「ダメ?」
「別に?」
「ふーん。…ま、金造もだれかを一途に想う気持ちが分かれば今のわたしの考えてることが分かってくるかもねー」
「そんなんもう分かっとるっちゅーに」

しかめっ面でそう言った金造に軽くチョップをされる。

「金造が?分かってるって何をよ」
「気持ちを伝えてるつもりなのに全然伝わってなくて悲しいなぁ、いうとことか?」
「!」
「ま、それは俺も同じやし?」
「金、造…?」
「好きなんや、俺」

おまえのことが。
金造の口がそう動いて、その声が耳に届くより先に、視界を閉ざされ耳も塞がれた。





「はいそこまで」

後ろから抱きしめるみたいに、わたしの視界と耳を塞いだその温度。
身体の熱が一気に上昇した。沸騰した。

「柔造、せん、ぱ」
「好き好き言うて、俺の調子狂わせて楽しいんかなぁって思っとった」

阿呆やな、俺。
つぶやく柔造先輩にわたしは首を横に振った。

「今日はじめて、それ言うてるなまえの目見たんや」
「え、」
「それで気付いたんや。…今まで知らんうちに苦しめてしもたやろ?すまんかった」
「柔造さん…」
「俺も、なまえのことが好きやよ」

女として、と言ってにやりと笑った柔造さんに胸がぎゅっとなって苦しくなった。



110605