がらくた | ナノ

蝮ちゃん、迷惑じゃないかな。こんなの、わたしから貰ったって嬉しくない…かな。

「うぅ…やっぱり…あげるのやめようかな…」

両方の手の平にのせたソレを見てわたしはがくんと項垂れた。

「なまえ?」
「!」

柔造の声がして、自分でも驚くほどの早さで顔をあげた。

「なんやその可愛らしい袋」
「あ、これは、」

顔を顰めた柔造がわたしの手にあるそれを見て言う。
うわ、なんか、なんか知らないけど、柔造の顔すっごい怖い…!

「ま、蝮ちゃんに…」
「蝮ィ?」

「…こんなとこで止まるな、邪魔や」

ま、蝮ちゃん…!
柔造の後ろで柔造に負けないくらいに顔を顰めた蝮ちゃんがいた。
ど、う、しよう…まままま、まだ心の準備が…!

「なんや、蝮か。なまえ、退かんでもええから…ってなんでそない逃げ腰なん?」
「なまえ…?」

柔造を押し退けてこちらに近づいてきた蝮ちゃんとばっちり目が合い、戸惑う。

「…お、おはよー」
「おはよう。……で?」
「?」
「蝮ちゃんに…、の続きはなん?」
「きっ、…あ、えーと…」

ま、蝮ちゃん聞いてたんだね!なんか心なしか蝮ちゃんがニヤニヤ笑ってるように見えるんだけど…!

「な、なんでもないデス…」
「ほぉ?」

刺さるような蝮ちゃんの視線。

「う、嘘つきましたごめんなさい」

…蝮ちゃんについた嘘を突き通せた試しがありません。
満足そうに、にこりと笑った蝮ちゃんに袋を差し出す。

「…じ、実は、蝮ちゃんに渡したいものが、あって…」
「?」
「これ、なんだけど…!」

とてもじゃないが、緊張して目が合わせられない…!
蝮ちゃんから視線を外しながら、袋をなかなか受け取ってくれない蝮ちゃんの胸に押しつけた。

「それ、蝮にあげるもんやったんか」
「う、うん」
「俺はてっきりなまえが知らん男から貰ったもんや思うてたわ…」

やっと袋を受け取ってくれた蝮ちゃんが袋を持ったまま固まっている。
そんな蝮ちゃんに柔造が中なにが入ってるん?と聞いて蝮ちゃんの肩に手をのせた。

「ッ…あてが一人の時に見る!」

肩におかれた柔造の手をぱしんと叩いて我に返ったように柔造を睨みつける蝮ちゃん。

「なまえ、行くで!」
「え、わわ、!」

袋を持っていないほうの手でわたしの腕をつかんだ蝮ちゃんがずんずんと先を歩いていく。

「あ、ありが、とう…」
「え?」

前を歩く蝮ちゃんがちいさな声でぽつりとつぶやく。

「どういたしまして…!」
「要らんって言うたのに、ほんま…阿呆やな」

足を止めてくるりとこちらを向いた蝮ちゃんの綺麗な笑顔にどきりとする。

「よ、よかった…」
「?」
「迷惑じゃないかな、って心配だったんだ…」
「迷惑なわけないやろ!なまえが私にくれるのに迷惑もなんもあるわけな…」
「…?」
「ッ、とにかく!迷惑やないからな!」

真っ赤な顔する蝮ちゃんを見てたらわたしの顔も熱くなってきた。

「うん、ありがとう蝮ちゃん」
「ん…」
「誕生日おめでとう、蝮ちゃん」
「…ありがと、なまえ」

二人して顔を真っ赤にしながら顔を見合わせ、笑った。



110604 祝・蝮誕!