がらくた | ナノ

「……う、」
「扱いやすいガキだなぁ?」
にやにやとした笑いを向けられてもわたしにはそれを否定することはできない。扱いやすいのは自分でも分かるし。獅郎から見たらガキなのだって、知ってる、もん。
「よし。…ま、とりあえず行ってくるわ」
獅郎の手がわたしの頭をぽんぽんと撫でたあと、ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜた。そしてにかっと笑う。わたしはこうしてエクソシストとしての任務をしに夜中に出かけて行く獅郎を見送るのが日課になっている。…毎回、行くなとも言っているけど獅郎に頭を撫でられたら一発で何も言えなくなってしまう。
「かえって、きて、よ」
「おう」
「…はやくね」
「分かった。…けどちゃんと寝ろよ?」
「……」
「なまえ」
「うん、ねる、よ」
「いい子だ」
「…怪我も、しないで、ね」
「気を付ける」
「う、ん」
「眠いのか?部屋まではつれてけねぇけど、」
「! ね、ねむくない…」
「そーかぁ?まぁしょうがねーか、子供が寝る時間はとっくに過ぎてるしな」
「……獅郎、もう行くの?」
「そうだなぁ、そろそろ行かねぇと、だな」
「……、いってらっしゃい」
「おう。そんじゃ、行ってくる」
「……、」
「んな泣きそうな顔すんなって」

行けなくなっちまうだろうが。と獅郎は眉を下げて困った顔をする。泣きそうな顔させてるのは、獅郎のくせに。行かなくても、いいのに。行けなくなっちまうとか言ったって、すぐ行っちゃうくせに。

かみさま、どうか、獅郎をまもって。わたしたちの獅郎を、うばわないでください、

普段は必要以上に信じたり意識したりもしない神に縋りたくなるほど、わたしは獅郎が大切だ。たいせつな、家族、だから。



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