廉造のつまさき | ナノ

扇風機前を陣取ったピンクをわたしは思い切り睨み付けた。退きなさいと視線で訴えてみる。

「……、!」

視線に気付いたピンクの肩がびくりと震えた。

「え〜、なんやごっつ熱い視線を感じるわぁ…」
「気付いてるんなら退きなさい」
「嫌です」
「家から出ろ」
「え?地獄へ堕ちろ?」
「そんなこと言ってない!」
「夏空の下なんてむから始まってしで終わるアレの溜り場みたいなモンですやん絶対に嫌や」

廉造は想像しただけでも気分が悪くなるのか顔を真っ青にしながら言った。ああ、うん、分かるけど。

「溜り場って…大袈裟な…」
「無理。嫌なもんは嫌なんです、ここからは出て行かれへん」
「はあ」
「頼むお嬢…!」
「…扇風機譲ること、いい?」
「……え〜」


扇風機前、奪還しました…!むぎゅううううう!!

「暑いよ馬鹿!」
「んふふ、二人で涼めばええんよねー」
「アホか!アホなの?アホですかーっ!」

ぎゅううう!!背中にべったりくっついて、私のお腹に手をまわして離さない志摩。暑苦しい志摩。耳元でしゃべるな息が暑いわ志摩。

「アホでええよ、一緒に涼もうや、な?」
「な?じゃないよほんと、これじゃ私もアンタも暑いままじゃん」
「俺はこのままがええな。さっきよりもこっちのがええよ、うん」
「……なんで」

あ、嫌な予感がする。そう思ったときは、だいたい手遅れだ。

「やわらかくてきもちエエんよ、いブフオッ!」
「……最低」

それはつまり、お腹の余分なアレがアレってことでしょう?…最低、最悪、外に放り出してやるからこのバカ。



110703