廉造のつまさき | ナノ

※中学生廉造



好きになったひとが年上で、自分より何倍も強くて、年下に興味なくて、弱いヤツが嫌いで、実は俺の兄貴に惚れてて、…とか。いろいろ条件悪くて、振り向いてもらえる可能性はゼロに近い。けど、それでも、好きって気持ちは抑えられへん。自分ってもしかして面倒な男なんかなぁって思ったりもする。
ちなみに今、自分の隣にいるそのひとが俺の好きなひと、やねんけど。

「ぷはー。やっぱ仕事のあとの一服はいいねぇ」
「お嬢さんって仕事中もタバコ吸って、」
「な、ないよ?ちゃんと仕事に専念してるよ?」

まあ嘘なんだってことはすぐ分かる。お嬢さんが嘘つくのが下手で分かりやすいっていうのもあるけど、タバコの事については金兄がいつもガミガミ言うてるし。金兄はいつもタバコ吸うんやめえや!と言っているが、俺としてはそれには賛成のような反対のような、って感じやなあ。もちろん、身体に悪いからやめて欲しいって思うんやけど、それと同じくらいその匂いが好きだ。お嬢さんの、匂いって感じがして…なんかええなぁ、って。

「なんやそれただの変態やん…」
「ヘンタイ?」
「!」
「廉造は明陀一のスケベや〜って金造が言ってたからねえ」
「!…、金兄のアホ…」

にやにやと笑って俺をみるお嬢さんにどきっとする。けどそれと同時に羞恥心に襲われる。好きなひとに言われるんは、恥ずかしい。ホンマのことやけどお嬢さんに言わんでええやんか!金兄のアホ!……もうええわ、開き直ったる。

「お嬢さんお嬢さん」
「んー?」
「タバコおいしい?」
「おいしいよ?あ、けど廉造はタバコ駄目だよ?」
「…なら、キスせえへん?」
「へ?」
「ずっとタバコの味気になっててんけど、お嬢さんの言う通り…吸うわけにはいかんやろ?」

言うと、みるみるうちにお嬢さんの頬が赤くなっていく。

「な、な、…!」
「せやからキスでその味、教えてや」
「……ッ、誰から習ったのそんな言葉…」
「俺は明陀一のスケベやで」
「!」

それくらい知ってるで?にやにや笑って言ってやった。大人をからかわないの…、と更に頬を赤らめたお嬢さんに、俺はすぐ冗談ですよ、と笑った。

…悔しいのは、お嬢さんにこんな顔させることができたんが、半分は金兄のおかげ、ってことやな。



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