廉造のつまさき | ナノ
「志摩くん?」
「あ、……」
やっちゃった、みたいな顔でわたしを見る志摩くんの顔は一言でいうとすごく間抜けだ。
「なにかあったの?」
掴まれた腕が熱い気がするのは気のせいではない。志摩くんに触れられている部分がどうしようもなく熱い。燃えるように熱い。理由はひとつ、わたしが志摩くんのことを……そういう目で見ているからだ。
「い、いやあ、その」
目を合わせようとせず歯切れが悪そうにしゃべる志摩くん。それはなんともレアな光景でした。ほんとに、なにかあったんじゃないかと心配になる。掴まれた腕は、まだ熱い。進行形で熱い。
「お嬢ちゃん、俺な…」
どき、と胸が熱くなるのを感じた。目が合っただけなのにこんなにどきどきすることなんて今までにあっただろうか。いや、なかった。絶対なかった。なんで、今、こんなにどきどきしてるんだろう。へんな、わたし。
「あああ!あかん!やっぱ言えへん…」
志摩くんがわたしの腕を掴んでいた手を離した。心なしか志摩くんが涙目のように見える。
「こんなん情けなくてよう言えへん…いや、でも…」
ひとりでうーんと考え込む志摩くんに、さっきまでのどきどきも腕の熱さもなくなっていく。言いたいことあるなら早く言ってよね、気になってこっちまでもやもやするじゃない!
「志摩くん!」
「ひい!あの、祓魔塾の前にむ…むむ、む、むしさん…が…」
「は」
「今日に限って坊も子猫さんも先行ってまうし…他に誰も居らんし…その…」
お嬢ちゃん、俺のこと助けると思て…一緒に行かへん?
情けないくらい弱弱しいその声とその姿に、わたしなんで志摩くんのこと好きなんだっけと素で思った。なんでだろう、ほんとに。いいよ、と答えるとほんまに!?ありがとお、なんてへらりと笑った志摩くん。それを見てやっぱり志摩くんのこと好きなんだなって再確認。しかし、ここでひとつ残念なお知らせです。
「けど志摩くん」
「うん?」
「わたしも、その、むし…すごく苦手なんだ」
「!」
110704