ショート | ナノ

「フェレス卿の役立たず!」

任務が終わって身体中に傷ができボロボロになった自分を見て吐き捨てるように言う。なぁにが…任務に役に立つ部下を同行させましょう、ですか。あぁ、イライラする。

「おや…それは随分ひどい言い草ですね、ナマエ」

ひょこ。突然横にあらわれた気配にバッと体を仰け反る。

「?!」
「可愛らしい反応だ」

ニヤリと笑ったフェレス卿が目に入ったかと思えばわざわざ仰け反った体をぐいと引き寄せられる。

「ここも、そこも、…あぁこんなところまで…全く、傷だらけですね」

心配しているというわけではない。傷に触れるか触れないかの距離に手を近付けてニヤニヤ笑う。この男、楽しんでやがる…!
だいたいアンタがこっちに寄越した役に立つ部下っていったいなんだったのよ。フェレス卿に指定された部下との待ち合わせ場所とやらに行ってみればそこにいたのは中級悪魔。

「ふざけてるわけ?部下が悪魔ってなんなの、襲われたんですけど?それ片付けようとしてる途中にもともと任務で祓う予定だった悪魔までやってきて…ッ」
「それでこんなに傷だらけに?」

うわ、今、すっごく見下されてる気がする…!
フェレス卿の馬鹿にしたような視線が突き刺さる。

「…はいはいそーですよ」
「正直なのはイイ事ですよ」

にやりと笑ったフェレス卿がわたしの頬に手を伸ばしてきてぴと、と触れた。そこには傷。油断していた時、悪魔につけられたまだ浅い傷だ。…とはいえ、触れられたらもちろん痛い。

「こうされると、痛いですか?」

ぐり、と傷を抉るみたいに力を入れられる。…わたしはこの悪魔に屈しない。痛いなんて、言わない。

「我慢は身体に良くありませんよ?」
「ッ…うるさい…!」
「…まったく、私のナマエをこんな風にするなんて許せませんねぇ」

誰がアンタの、だ!…わたしがそれを口にするより先に、フェレス卿が顔を近付けてきた。

「っ…!」

赤い舌が視界に入って息を飲むと、さきほどまでフェレス卿が触れていた傷をぺろりと舐められた。
唾液が傷に染みてぴりっとした感覚に襲われる。

「全身くまなく、消毒して差し上げます」

全力で遠慮させてください…!



ふたり ぼっち で濁る

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