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「す、勝呂!髪触ってもいい?」
「はぁ?なに目キラキラさせて言うてんねん…」

呆れ顔の勝呂が眉根を寄せわたしを見た。いつもの髪型の影さえ見えない、風呂上りでめずらしく髪を下ろした勝呂。なんか、なんか…、こう、ぐっときました。そしてそれと同時にいじりたい衝動に駆られました。そういうわけなので、頼む勝呂!わたしが真剣な顔でそう言うと聞こえたのはいいぞという了承でもなく、だめだという拒否でもなく、ため息だった。

「してもいいの?ダメなの?どっちの意味のため息なの?」
「したらアカンのため息」
「えええー!」
「お、女に髪、触らせたないわ」

顔を赤くしてそう言う勝呂。風呂上りだから?…ではなく、どうやら照れているらしい。なるほど、こういうことに免疫がないからダメだ、ってことなのだな。ならば、安心する一言をくれてやろう。

「ふむ…、ならばわたしを男だと思いなさい!」
「できるか阿呆!」

素早いつっこみにわたしは感動してます。けど、これは、はっきりと髪いじることを拒否されてしまったことになるぞ。えええ、でもでも、こんな機会なかなかない…!この機会を逃せば、今後髪下ろし勝呂を拝むことさえできなくなってしまうような気がしてならない。勝呂には悪いが、もう方法はひとつしかない。

「い、いじらせろコノヤロー!」
「のわっ!」

そう…無理矢理やるしかない。
わたしは思いきり勝呂の背中にタックル。油断していた勝呂を床に倒すことに成功した。ぐ、腕に力を入れてすぐに起き上がろうとする勝呂に体重をかけて起き上がれないようにした。よっし、完璧!

「おっ…おおおおおま、な、なにし、て」
「ふっふっふ、大人しくしなさいな勝呂くん」
「だあああ!お、おま、は、はやく、ど、退け、や」
「ん?声ちっさくて聞こえなーい」
「おま、ッふざけ、…ナマエ!」

この程度で完璧だと思ったのが間違いだった。にやにや笑いながら勝呂の手にかけようとしたわたしは、いつのまにか勝呂の頭ではなく天井を見ていた。あれ、なんか、頭いたい。

「おいナマエ」
「…いたい、」
「自業自得やろ」
「髪くらいいじらせてくれたっていいじゃんか…」
「嫌なもんは嫌や」
「ケチ」
「ケチで結構」
「…にしても、この体勢はなんか、」
「?」
「勝呂がわたしをおしたお、」

ガチャリ。と音がしてそれと同時に坊ー!というよく聞き覚えのある声。あっ、と思ったときにはもう遅い。


「ぼ、坊とナマエちゃんってそういう関係やったん…!」
「し、志摩さん邪魔したらあきませんやん!ぼ、ぼくたち、すぐ帰りますんですみません!」
「んな訳あるかボケ!ちょお、まっ…ご、誤解や!」
「これぞ自業自得だね、勝呂」
「はあ!?」
「髪をちょっと触らせてくれるだけで良かったのにさ!」
「なんやその笑顔ムカつくからやめえ!」



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