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「ふ、むぐ…むぐ…」
「お前は食べてる時が一番おとなしくて幸せそうやなぁ…」

テーブルに頬杖をついて、することがなくつまらなさそうな表情でわたしを見る柔造さん。
いや!だって!ね!…言葉にしようとするが今のわたしは口いっぱいお団子が詰まっている。

「む!ぐ!…もごごっ!」
「なんか言いたいんやったらソレ食ってからにせぇよ?」

呆れた表情でそう言われた。いまにも大きなため息をつきそう。むう…たしかに、口にモノを入れたまま喋るのは行儀悪いもんな。柔造さんは怒らせたらこわいし、沸点低いし気を付けないとね。

「むぐ。…ぷはー」
「茶も美味いか?」
「志摩ん家で飲むお茶がいちばん美味しい!」
「そーかそーか、そら嬉しいわ」

へらりと笑う柔造さんの笑顔はなんとも嘘っぽい。いや、わたしへの気遣いかなーって思うし嘘っぽいね、なんて言ったら大きな声ですぐ怒鳴られそうだから口には出さないけども。
いやけど!ココで飲むお茶がいちばんなのはホントなんだからなー!とひとりうなずく。あ、そうそう。

「で!わたしがさっき言いたかったのは!」
「おー」
「食べることは生きる理由!甘いものは正義!だからわたしの元気の源は食なのだ!…ってコトなん痛!」

ゴッツン!柔造さんが眉間にシワを寄せてぽつり。アホかお前は。
柔造チョップがわたしの頭を襲ったのはもちろん予告なしである。卑怯だぞー!うー、と痛む頭を両手で押さえると大きなため息がきこえた。

「祓魔塾では何を教わってるんや…」
「え?や、フツーに…」
「ちゃんと授業受けてるんか?」
「う、受けてるよ!」
「ホンマかぁ?」

にやにや。口元がにやりと弧をつくるあたり、廉造とか金造さんに似ててこの兄弟は…と少しばかりむかつく。いちばんお兄さんのくせに、この人を見るにやにや顔はムッとするなぁ。か、完全にわたしのことをバカにした顔だし!こりゃあ絶対、食べることにしか興味がないヤツだ、という認識だな。うん、ちゃんと祓魔師になる気はあるんだからな!

「ま、別にエエけどな」
「…ふ、ふん!」
「あんまケガせぇへんよーに、気ぃ付けや?」
「え?柔造さん心配してくれ…」
「坊に迷惑かけんな、って言うてんねん」
「…、ハーイ」
「なんや急に不機嫌になりよって」
「お団子追加ー」
「食いすぎや」
「えー」

心配してくれてるのかと思って嬉しくなったのに。その感情は坊こと勝呂によってぐちゃぐちゃに塗り潰された。ちっくしょう!ち、小さいころは勝呂と同じくらいわたしのことに構ってけれて優しくしてくれてたのにな!柔造さんのばーかばーか、と心で思いながら勝呂にさらなるライバル意識を抱くわたし。

「鈍感!」
「はぁ…?」
「なんでもなーい」
「?」

廉造に柔造さんが鈍すぎる、ってまた愚痴るとしようか。そして金造さんにもあまりにも鈍すぎることを伝えよう。次に会いにくるとき少しでもこの気持ちに気付いてもらえますように。



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