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「人間はどうしてすぐ泣くんですか」

目を擦っていたわたしの手を、アマイモンが止めた。

「…間違えました。あなたはどうして、すぐ泣くんですか」
「……」

沈黙。なんて、居心地が悪いんだろう。手を掴まれたまま、アマイモンはずっとわたしを見つめている。その瞳を見ることが、わたしにはできない。だから、ずっと俯いたままで。

「そんなに兄上が好きだったんですか?」
「……だった、じゃ、ない」

――今も、それほど、好きなのだ。…口には出さなかったけど、アマイモンにはわたしが言った言葉にどんな意味があるのかくらいすぐに分かっただろう。

「ふーん、そうですか」

わたしの手からアマイモンの手が、ゆっくりと離れた。それに驚いて俯いた顔をあげれば、アマイモンはわたしを見つめたままで、しっかり目が合ってしまった。まっすぐ、わたししか見ていないその瞳と。

「……どうしてかなあ」

言うと、アマイモンは顎に手をあてて目を細めた。その仕草に、見惚れる。

「どうしてナマエは、ボクのことを好きにならなかったのかなあ」
「アマイ、モン…?」
「今からでも、ボクを好きになってくれませんか?」
「…え、ッ?!」

再び腕を掴まれた。そしてそのまま抱き寄せられる。好きになってくれませんか、という言葉に困惑していたらアマイモンの手が伸びてきた。その手はそのままわたしの頬にそえられ、それから耳元に口を寄せてきてふ…と息を吹きかけられた。

「ボクならナマエを、愛してあげられますよ」

甘い囁きにくらくらする。けど、その時わたしの頭に浮かんだのはやっぱりあの人で。ぎゅう、と胸が締め付けられるのを感じた。



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