ファニー・アイロニー
ファジー・ネオテニー 続篇



渚カヲルが完璧だということは皆さんもご存知だろう。鍛錬されたしなやかな肉体と生まれ持った絶世の美貌に、頭脳も性格も最高な彼。伝説になる程の奇跡の持ち主だった。
しかし、隠された処はもっと凄いのである。とても官能的で逞しくも悩ましい、彼の秘密。

なんと、渚カヲルはとんでもない巨根の持ち主であったのだ。

それは学校中の男子の間では決して口にしてはいけないタブー。もしもトイレで彼に鉢合わせしようものなら一度隣になった者は誰だってもう隣には並んではいけないと遠くのトイレへと膀胱を引き締めて駆け出してゆく。カヲルは本人の知らぬ間に男子生徒の男根のプライドを根こそぎちょん切っていたのだった。
シンジは彼のペニスを初めて見た時がオナニーの最中だったので、彼の熱膨張の結果に対して、カヲル君は勃起すると風船みたいにおっきく膨らむんだなあ、なんて呑気に捉えていた。それ程までにその大きさはシンジには非現実的で、まともに考えたらいけないようなものだったのだ。

何故ならシンジのそれはというと、まあ、標準よりも可愛らしい幼いモンキーバナナだったので、カヲルの巨大なズッキーニを見た途端、薄々感じていた男としての自身のレーゾンデートルの欠如がついに暗黒物質に呑み込まれ、残ったのは聖母のような母性と乙女のような女子力ばかり。
つまり、シンジは男らしさを無意識にカヲルへと譲ったのだった。それくらい、カヲルの巨根には凄まじい破壊力があった。

そしてシンジは自分が同性のカヲルを好きだと理解したのはつい最近のことだったので、男同士の夜の営みについての苦労を知る由もなかったのだ。シンジはエロ本を買う代わりにお菓子づくりの本を買ってしまうような清らかな心の持ち主だった。そして、それ程にまだ、子供だった。

「カヲル君?どうしたの?」

それは付き合い始めて数日の経ったある昼下がりのことだった。まだキスの練習をするくらいのふたりは、なんとなく日曜の時間を持て余して昼寝をしようとベッドに横になっていた。カヲルがシンジに言ったのだ。少し眠いから一緒に寝ないかい、と。下心の潜んだそんなセリフにまんまと引っかかってシンジはカヲルに身体を寄せ合い寝転んだ。向かい合わせで息の掛かる程の側で、カヲルの腕に抱かれながらうとうととしていたのだ。そしたらやがて下腹部が押されるような感覚に目を覚ますことになる。

カヲルは初めてのオナニーを過激な持久走にしてしまって、奥手な心とは裏腹に身体は飢えた猛獣と化していた。しかもよりストイックにシンジのヒーローに、そして王子様になろうとして、そのドロドロとした底なしの欲望を自ら隠れて処理することもしなかった。

恋人のシンジに隠れてそんなことをしたら、きっと嫌われてしまう。彼は哀れなくらいにシンジの理想に忠実な男だった。シンジが夢中になるのはいつだってストイックな孤高のヒーロー。まるでオナニーのオの字も知らないような、だ。だからカヲルは先週のダメダメだった自分の失態を、どうにか巻き返したいと必死だったのだ。シンジは一度だってカヲルの髪の毛一本ですらダメだと思ったことはないというのに。

そうやってカヲルはシンジのエッチな想像ばかりして悶々と夜を過ごし、溜まるものを溜め込んで、どんどん自分の身体を限界にまで虐め抜いた。

「シンジ君…はあ、ん、その…」

カヲルの巨根は固く勃ち上がって、彼のズボンを突き破りそうになっていた。部屋着の伸縮性の素材がより彼の雄々しさを引き立てている。もうすぐできっとそれははみ出してしまうだろう。思わずそのフォルムに背筋を震わせながらゴクリ、シンジは生唾を呑み込んでから、ひっそりと息を詰めた。ふたりの顔は触れ合うくらいに近かった。

カヲルの赤い瞳は銀河を呑み込む赤いブラックホールのように、灼熱の欲の中で燃え盛っていたのだった。そして決して銀河を呑み込むまいと切なそうにそのかたちは歪んでいた。パチパチと星が爆発するようなせめぎ合い。それは極めてカヲルらしい紳士的な揺らぎだった。

「僕は…えっと、カヲル君は僕の恋人なんだから、遠慮しないで、いいよ。」

シンジはそう言いながらも期待と不安の中では期待の方が勝っていた。だって僕の恋人は、完璧なカヲル君なんだから。それはきっと天国のように夢見心地なのだろう、と。シンジは自分のお尻がどうなるかも知らずに、彼の銀河の瞳はときめきの中で幾つもの星を生んだのだった。それを見つけて、もうカヲルの赤いブラックホールはぐんぐんと質量を増して巨大化してゆく。そうして痩せ我慢をして汗を滲ませるカヲルを見兼ねて、シンジはぎゅっと彼を抱き締めて、初体験へと誘ってしまったのだった。

カヲルはアナルセックスの定義を知っていた。
けれど、方法までは知らなかった。


「ん、ん…!あぁ!ダメ…ダメだよ!ま、待って…!」

理性を失くしたカヲルは全く完璧とは程遠かった。シンジの身体にむしゃぶりつきながら、もう既に限界近い身体に焦って愛を囁くことも出来ずにいた。性急にTシャツを捲り上げられズボンを膝まで乱雑に脱がされたシンジは、期待よりも不安ばかりで半勃ちのまま泣き出す始末。彼はカヲルとのセックスが気持ち良くない事実に愕然として身を強張らせていた。

そんなシンジなんて御構いなしに、寧ろその泣き姿に興奮すら覚えて、カヲルはシンジの身体を捻って横向きにして彼のパンツを脱がそうとする。けれど汗で肌に張りついたそれは、脚を突っぱねて抵抗する姿勢のシンジからはなかなか脱がせられずに、終いには半分ほど脱がしたままで無理矢理に、カヲルはもうすでに先走っている巨根をシンジのお尻の割れ目へと当てがったのだ。

その事態に慌てたシンジは、やめて、と叫んだ。けれどカヲルにはもう何も聞こえなかった。そして力任せに巨根は前に突き進み、馴らされずに緊張したままのシンジのお尻は強引な異物の混入に息が出来ない程の痛みを彼に伝えて、シンジは無言の絶叫の後に怯えながら嗚咽を噛み締めたのだった。震えて縮こまったシンジにカヲルはハッと我に返って挿入途中の自らを引っこ抜く。それはどんなにしても先端を少し呑み込んだくらいだったのに、シーツには血の色がたっぷりと滲んでいたのだった。そこでカヲルは知った。シンジは快感に恥じらっているのではなく、激痛を耐え兼ねていたのだと。

「ごめん!シンジ君…!」

そう謝っても時既に遅し。痛みの中で身体を震わせ泣くシンジはそれには何も答えられなかった。シンジは心の中で途方に暮れていたのだ。きっと男同士の僕らは気持ち良くなれないんだ、彼はそう思って涙を流したのだった。


それからふたりの関係は歪んだ歯車のようにギクシャクし始めてしまう。気にしていないと言いながらもシンジはカヲルと目も合わさなくなってしまった。それは嫌悪の感情からではない。シンジはいつも通りに振る舞いたいのにカヲルの赤いブラックホールを見てしまうと涙が溢れてくるのだった。彼は何事も無かったかようにカヲルの身の回りの世話をしたり、そっとカヲルの肩にもたれて寄り添ったりしてカヲルを好きだと伝えるのだが、その仕草にはどこか孤独なまでの寂しさが潜んでいた。

それを見つけたカヲルは堪らずにシンジにキスをした。とても情熱的で好きだと内側から叫ぶようなキスはシンジの身体の芯を熱く焦がす。じっとりと湿った手はカヲルのカッターシャツを掴んで、喉の奥では喘ぎが今にも吹き出そうとして、銀河の瞳はビッグバンを起こしそうに瞼の下で灼熱に蕩けている。
そしてそんな時はいつもシンジは腰を反らすように疼かせるもんだから、カヲルは堪らずにその腰を大きな手で掴み引き寄せる。けれど、その度にシンジは小さく叫んでグッと身体を退かせるのだった。

シンジのお尻はまだ治らない痛みを抱えてカヲルに内緒で裂けた箇所に薬を塗るくらいには、カヲルに酷く傷つけられていた。カヲルを拒絶する時のシンジの横顔はまるでヒーローの死を悼むヒロインのように絶望に震えていたのだ。

「シンジ君、大好きだよ。」

「僕も…」

その時カヲルは自分のしくじりを地獄の焔に焼かれるくらい後悔していた。そっと離れるシンジを見ながらその心臓は八つ裂きの刑に処される。


そこでカヲルはふと思い立った。自分に出来ることは努力だ。シンジ君を幸せにするためなら僕はなんだって出来る。そうしてカヲルはやっと気づいた。愛の営みだって勉強が必要なのだ。
そうとなったらカヲルはとことんやる奴だった。彼は自分の情報収集能力を最大限に駆使して色々なあれやこれを集め出した。カヲルは放課後に近所のレンタルビデオ店でアダルトビデオを山のように借りて、その行為を分析し、シンジとのそれに置き換えて頭の中でシミュレーションをした。それを何度も何度も反復練習をして、シンジが気持ち良くなる過程を考えた。それについてもっと深い考察が必要だと、授業中に医学書を読み耽る優等生カヲルに周りのクラスメイトは感服の溜め息を吐いていたが、その内容は主に前立腺についてだった。
もう脳内の可愛いシンジに勃起をしても、放っておくことはしない。彼はインターネットでも日々検索を重ねて、自分の置かれた状況を既に熟知していた。カヲルはシンジに理性を保つ為に“抜く”ことを覚えた。抜いた後でシンジへの罪悪感で暫し落ち込むことは止められないが。

そうして連日の猛勉強はノート何冊分にも至ってカヲルはもう何も迷うことはなかった。コンドームもローションも手配済み。後はシンジの性感帯を彼に直接触れて確かめるのみ。けれどそのカヲルのシンジへの探求家のような情熱はシンジには伝わらなかった。シンジは数日間こそこそしているカヲルに対して恋の苦味を味わっていた。

ー僕がカヲル君を受け止められなかったからかな…
ー僕が女の子みたいになれないから、僕と別れたいのかも…

「バカシンジ!なぁに浮かない顔してんのよ。ホモなんてほっときなさいよ。」

「アスカはまたそうやって。今度は何さ?」

「アイツは噂だとナースとにゃんにゃんしてるらしいわよ。お医者さんごっこってチェリーボーイは知ってるかしら?アンタのヒーローは所詮ドスケベの変態なんだから、気にしないことよ。」

けれど、いつもと違ってシンジは反論出来なかった。もしかしたらそうなのかもしれない。最近カヲル君がよそよそしいのは僕なんかに愛想を尽かして綺麗なお姉さんの方がいいって思っているのかも、しれない。

「…ふん。物分かりがいいじゃない。」

「ねえ、なんでアスカはそんなにカヲル君の悪口を言うのさ。」

「…それは、あんなチンカス野郎に騙されてるアンタを同情してやってるのよ。」

「チ…!って、なんで僕に同情するのさ。僕が嫌な目にあったらアスカは万々歳じゃないか。」

「はあ?アンタ何もわかってないわね…このアスカ様は、アイツがアンタには似合わないって、そう言ってんの!」

シンジの胸がチクリと痛む。

「まあ…カヲル君と僕じゃ確かに月とスッポンを通り越して月と塵くらいの差があるからね。」

「はあ?だ、か、ら!アンタとアイツが月とチンカスだって私は言ってるの!」

「…はあ?」

シンジはそのセリフの意味が理解不能で首を傾げた。アスカの言い間違えだろうかと。周囲の生徒は美少女の彼女から発せられた卑猥な言葉にちらほらと振り向いてしまう。

「…はあ。ま、いいわ。アンタの頭が悪いのは今に始まったことじゃないからね。」

すると何かを思いついたように口角を上げてから、アスカはいきなりシンジの頭をくしゃくしゃと掻き撫でだした。

「わ、ちょっと!アスカ!や、やめろよ!」

「アンタの脳ミソはマッサージが必要なのよ!」

「シンジ君!」

けれどアスカが不器用な心配をしてシンジと楽しくやってる姿をカヲルは見逃さなかった。秘儀のノートの復習をやめてカヲルは頭で考えるよりも先に叫んだのだ。一見仲睦まじいカップルの戯れるような姿に焦りの色を滲ませて。

「あら、弱い者イジメを許さない正義のヒーロー、ホモルのお出ましだわ。」

「君は!シンジ君に手を出さないでくれ!」

アスカの無遠慮な指先のせいでぴょんぴょんあちこちに跳ねた毛先でシンジのまるい頭はまるで遊び毛の小動物みたいだ。それをカヲルは大事そうに、つるつるのまるい後頭部に天使の輪が光るまで、何度も何度も手のひらでそれを撫でつけていく。

「大丈夫かい?シンジ君。」

「…うん。」

それは寂しかったシンジにとってはなんだか甘い愛撫のようにも思えて人知れず鼓動をトクトクと早めていくのだった。完全にふたりの世界に入っているカヲルとシンジを横目で見ながら、アスカは盛大に溜息を吐く。

「あーあ。なんで私がいつもこんな役回りなのよ。ホモがいなけりゃバカはシクシクやりそうだし、ホモがいればいたでバカは私なんて眼中にないんだからね…」


そうして一時的イチャつきをみせたふたりではあったが、急接近して触れ合うと嫌でも失敗したあの情事を思い出してまたすぐに、ひと塊りの距離を持つ。その日の帰り道ではふたりは会話も成り立たずに、互いに何処か傷ついた表情を浮かべて歩いていたのだった。ふたりともこのまま歪んだ歯車がついに壊れて、関係がゆっくりと崩れ去る不安に背中を丸めて下を向く。好きなものほどその熱が冷める温度変化は胸を痛ませるものである。その日は奇しくもシンジがカヲルの家の家事をしながらお泊まりをする金曜日だった。

ふたりは帰宅をして、部屋着に着替えて取り敢えずベッドの上に腰掛けた。外はまだ陽が明るく、初夏の長い白昼の空をしていた。目の前の小さなテーブルの上には氷を浮かべた冷茶がグラスに注がれ汗を流している。それは冷蔵庫に常備してあるシンジのお手製だ。シンジが恋人になってから隅々まで整頓が行き届いて生き生きと鮮やかになった室内を見渡すと、カヲルはまるでそれを名残り惜しいもののように感じてしまっていた。

ーシンジ君はセックスの下手な僕に既に愛想を尽かしたのかもしれない。あんなに傷付けたのだからきっともう僕とはしたくないんだ。僕と目も合わせないで、けれど彼女とはまるで恋人みたいにじゃれて。どう見てもこれじゃ、あっちがシンジ君の恋人みたいだ…

カヲルはいつかのキスから先を拒絶したシンジを思い出して、ゴクリと生唾を嚥下した。横目でそっとシンジの膝を見下ろすと、その上の自分よりもひと回り小さな手の甲がぐっと力を入れている。

ーカヲル君はもう他の人に気持ちが移ってしまってるのかな。あんな風に僕を守ろうとするのはヒーローの性みたいなものなのかも…僕、前に決めたからって泊まりの用意なんてしてきちゃったけど、最近カヲル君は僕を避けてるんだから、そんなの嫌なのかな…

シンジは知らない女がカヲルの巨根をいとも容易く身体に挿れるのを想像して冷や汗を滲ませた。横目でそっとカヲルの下半身を盗み見ると、それを満足に呑み込めない自分の身体を呪った。

ーシンジ君は何故黙っているのだろう…もしかして、別れの言葉を切り出そうとしているのかな。シンジ君の理想とは程遠いあんな稚拙で野蛮なセックスを無理強いしたのだから、やはり、そうなのかもしれない…

ーカヲル君は何故黙っているんだろう…もしも他に好きな人が出来たから別れようなんて言われても、僕、まだ、心の準備が出来てないよ。でも前にアスカが、どんなに気持ちがあっても身体の相性が悪かったらカップルは別れるって、言ってたし…

ふたりは隣に並んで座ってそんなすれ違った気持ちを持て余して黙りこくっていた。生きた心地のしない冷たい血が身体中を巡って時折心臓がヒュッと潰れるような脈動を響かせる。
けれど、そんな氷結した沈黙を破ったのはカヲルからだった。

「あの…シンジ君…」

喉をグッと絞ったようなカヲルの呟きにシンジの肩がピクリと跳ねる。

「話があるんだ…」

けれど、とカヲルは想ったのだ。僕はあれから努力をした。今ならきっと、いや絶対にシンジ君を至高の歓びに身体中を満たしてあげられる。だから、せめてそれを知ってほしい。それを知ってからでも遅くはないだろう、と。
しかしまたしても、シンジは違うことを考えて心臓が止まりかけてしまったのだった。

「カヲル君…」

次の瞬間、シンジは横にいるカヲルに抱きついていた。首に額を押しつけて、身を捩って更に腕に力を込めて、その仕草は甘えていながら誘っているようにも見える。カヲルは突然の出来事に頭が真っ白になった。

「僕じゃ、やっぱり、ダメかな…」

そしてその刹那、カヲルの全身には電撃が走るのだ。耳元に届くシンジの声は潤んで艶めかしく、そして震えていた。

「こ、この前は…僕が、台無しにしちゃったから、さ。本当に…ごめんね。でも、もう二度とやめてって、言わないから…頑張るから、最後まで、ちゃんと…してみて。僕、きっと出来るから…だから、僕を…諦めないで…」

段々と涙に濡れて鼻声が弱々しく萎んでゆく。それを最後まで聴いてカヲルはやっと気づいたのだった。シンジはカヲルに落胆しているのではなくて自分にその刃を向けている。自分に縋りつき落涙する恋人はどうやら自分と同じことを感じているらしい、と。

「だから、もう一度…僕と、しよう。」

それはどんなに苦しくても痛くても構わないから自分を捨てないで、という何とも哀しい献身を表していた。

「お願い…」

それは渚カヲルの小さな歴史が動いた決定的な瞬間だった。シンジ君は僕の事がこんなにも好きなんだ。カヲルはその歴史的瞬間にすうっと深呼吸をして、シンジを抱き締め返すのだ。ギュッと、きつく、きつく。ヒーローのように、力強く。

「シンジ君。ごめんね。これは僕のせいなんだ。僕が無知なばかりに君を傷つけてしまったね。けれど、もう大丈夫だよ。ここ最近ずっとセックスについて学んでいたんだ。そして答えを見つけられた。今度こそ、君を気持ちよくしてみせるよ。痛くないようにね。」

「ほんとう?」

シンジは顔を上げた。カヲルを見つめるその銀河の瞳はもうきっと、新しい宇宙の歴史を刻み始めている。光と熱に溢れて希望の輝きを散りばめているのだから。

「本当だよ。だからもう一度、僕を信じて。」


シンジがコクリと頷くと、もうカヲルは待たなかった。滑らかな速度で首を傾げれば、メレンゲの口溶けのようなキスがシンジに舞い降りる。それはシンジの緊張を解こうといつもよりも慎重に熱い舌を侵入させ、身体を支えてシンジをゆっくりとベッドに寝かせてゆく。そして羽根を這わすような愛撫を少しずつ腕や顔に巡らせるのだ。シンジは期待と緊張でブルッと震えた。

「…明るいうちは、嫌かい?」

「ううん。今、したい。」

シンジは紅潮した頬を上げてふにゃりと微笑んでいた。そのカヲルを信じきってうっとりとする顔の端々にはやはり、不安の影がちらちらと覗いている。

「シンジ君、もう痛いようにはしないからね。」

「ねえ、もしカヲル君が完璧にしても、僕が駄目だったら?僕が駄目で出来なかったら、カヲル君は僕と…別れるの?」

カヲルはそんな上目がちで哀しげに潤んだ瞳に見惚れながら、湧き上がる熱情に紅い瞳を綻ばせた。

「まだそんなことを言っているのかい?僕はまだ文字もあまり知らない頃から君が大好きだったんだよ。君に振り向いて欲しくて人生のほとんどをその努力に費やしてきたんだ。やっとのキスで君に泣かれてあんなにおかしくなってしまった僕を見ただろう?君が僕を捨てない限り、僕は君から死んでも離れない。それどころか君に捨てられても、たとえ君が地獄まで逃げたって僕はどこまでも追い掛けてしまうだろうね。」

「ふふ。こわい、カヲル君。」

「…愛が、重いかな?」

「ううん。うれしい。」

シンジがあまりにも幸せそうに笑っているからカヲルは万感の想いに全細胞が蒸発するくらいの目眩を覚えるのだった。言葉にならない心に突き動かされ、睫毛を震わせ瞳を閉じる。そしてまた、唇を重ねて愛撫を始めた。

ゆっくりとひとつひとつシャツのボタンは外されて、一枚一枚布切れはベッドから床へと落下した。シンジの肌が露わになる度に、カヲルはその全てを愛するようにくまなく指先や舌で愛撫を重ねてゆく。そうしてだんだん呼吸を早めてその丁寧さに時折焦ったそうに身体をくねらすシンジに、カヲルは囁くのだ。

「好きだよ、シンジ君。」

その美声は吐息混じりで官能に濡れていて、シンジの体温が上がってゆく。

「僕も、好き。カヲル君。」

明るい部屋はふたりの身体をさらけ出す。ついにふたりが一糸も纏わない裸になった時にシンジはチラリと下に目をやると、カヲルの股の間からやはり何度見ても腰が砕けそうな雄々しい巨根が頭をもたげて張り詰めていて、シンジはその威力に腰がヒュッと抜けそうになってしまう。

ーカヲル君、やっぱりすごく、おっきい…どうしよう…

カヲルのシンジを想いながら鍛え抜かれた肉体は、無駄なものは一切無く細いながらもしなやかな筋肉が光沢のある白肌の中で美しいラインを描いていて、まるで芸術品のよう。シンジはというとあどけない中性的なフォルムにマシュマロのような感触の身体は、何処か幼いままに大人になってしまったような危険な肉感を湛えていて、まるで禁断の果実のよう。中学の頃は似たような身体つきのふたりだったが、歳月を重ねて広がったふたりの差異は互いの欲望に火を点ける。

ーシンジ君、あまり僕を煽ると君を守れなくなってしまうよ…

「綺麗だよ、シンジ君。」

「僕、男だよ…」

「男だから何なんだい?シンジ君は、世界一綺麗だよ。」

「ん…」

カヲルが耳元で囁くと、シンジは慌てて自分の口を手で押さえた。その声に、言葉に、感じ入って喘ぎそうになってしまったのだ。

「もっと声を聞かせておくれ、シンジ君…」

そんな仕草までカヲルを煽って、彼の息も上がってゆく。カヲルの愛撫は力強くなり、シンジは乳頭を弄ばれたり尻肉を揉みしだかれてポツリポツリと、あん、と喘ぎ声が漏れ出して、次第に余裕がない表情になってゆく。淡い桃色の粒はツンと勃ち上がって、カヲルが片方を指で捻って摘み上げ、もう片方をちゅるっと音を立てて思いきり吸い上げると、シンジは一層高く鳴いてしまう。

「あっ!あん…!」

シンジの嬌声は可愛らしいくらいにか細くて、カヲルの庇護欲を刺激してしまう。シンジの汗で前髪の貼りついた額を撫で上げて、あやすようにそれを何度も繰り返すと、シンジはとろんと潤んだ銀河の瞳でカヲルを愛おしそうに見つめながらチラリと舌を出したのだ。獲物を捉えるようにカヲルはそれに食いつき、押し上げるような激しく波打つキスをして、シンジの後頭部がグイグイと頭上に佇む枕に届いてしまう。

すると此処でカヲルは決心したかのように喉を鳴らしてからサイドテーブルに片手を伸ばして下の引き出しからコンドームとローションを取り出した。そしてペニスに慣れた手つきでさっとそれを装着する姿に、シンジは疑問符を浮かべて目を見開いて眺めていたのだ。

「…君との本番前に、練習をしたんだよ。」

君に格好悪いところを見せたくないからね、とカヲルはちょっと照れたように笑って、もう一度シンジの唇にチュッとキスを落とした。するとシンジはもう真っ赤になってうっとりとカヲルを目で追うのだ。
その時シンジは知らなかった。カヲルはついているものが大き過ぎる為にこの国で一番大きいサイズのコンドームが入らずに、海外からカヲルのそれに合ったサイズを取り寄せていたなんて。

それからカヲルはシンジの頭上にあった枕をシンジの腰に当ててローションの蓋をカチリと開けたから、シンジは急に逃げ腰になってカヲルを不可解そうに眉を下げて見つめた。その顔は何か言いたげだ。

「ローションはね、お尻を慣らす為に使うんだよ。」

「痛くない?」

それはまるで歯医者に行った幼児のような響きでカヲルは思わず表情が緩んでしまう。

「力を抜いて僕に身を委ねてくれたら、きっと、大丈夫だよ。」

カヲルの子どもに諭すような口ぶりにシンジがふわりと笑って頷くと、シンジの膝は持ち上げられた。そして手のひらいっぱいのとろみのある液をペチペチとシンジのお尻の真ん中に掛けると、シンジは小さく喘いで身体をプルプルと震わせた。カヲルの手が優しくそれを馴染ませてゆく。

「んぁ…」

火照った肌にその冷たさが甘い刺激を、ぬるぬるとした感触が奇妙な快感を与えて、それが中心線に沿って粟立ち駆け抜けてゆく。ローションがつうっと垂れたシンジのモンキーバナナはその綯い交ぜになった興奮に背伸びをして腹を打ち、内股がピクピクと震えてしまっている。

「んぅ、はあ…あぁんっ!」

カヲルはどの想像のシンジよりもいらやしいその姿に思わず太くて長いズッキーニからカウパー腺液を滴らせた。まだ、我慢、そう自身に言い聞かせてカヲルはゴクンとせり上がる欲望を呑み込んで抑えた。

「…さあ、リラックスして。」

シンジはカヲルを見つめながら、はあっと息を吐いてみせた。それを合図にカヲルの指先が中心の窪みへと向かう。

最初は優しく円を描くように撫でられて不思議な快感がぞわぞわと湧いてきたが、それがくいっと中に侵入してくるとシンジは異物感に驚き腰を揺らした。それは指先を拒絶して押し返す。ごめん、申し訳なさそうに囁くシンジ。けれど、カヲルは思慮深い顔のまま、すぐさま枕を外して、シンジを横向きに向かい合わせに寝かせた。

「きっと前回の痛みで身体が無意識に強張ってしまうんだ。気を紛らわそう。」

そういうとカヲルはシンジの半勃ちに萎えてしまったペニスを片手で包みながら扱き始めた。シンジはいきなりのその刺激に驚き身体をピクリと跳ねさせてから、カヲルを抱き締め胸板に顔を埋めた。食い込んだシンジの指先が彼の快感の度合いを計るように、カヲルの白い肌を点々とほんのり桜色にした。そうして快感に身悶えているとまた奇妙な違和感を快感のすぐ後ろで覚えたが、徐々に侵入してくるそれをもう吐き出すことはなかった。中指の根本まで入ったら、カヲルはそれを今度はゆっくりと動かしてゆく。

「うぅ…」

「ごめん…もう少し、頑張っておくれ。」

それからカヲルは器用にシンジが達せない加減で扱きながら、一方で徐々に指の動きを大きくしてそこが解れてきたら、指を二本に増やした。そのふたつを開いたり曲げたりしながら更にそれを押し広げようとするとカヲルの胸に埋れたシンジの口からは嬌声と呻き声が混ざり、ふぇ、とか、むぁ、とか、んゃ、とか、そんな不思議な音がぽろぽろと零れてしまう。それを聞いてカヲルは上気した顔を悩ましげに歪めた。そして悶絶するように額や頬をすり寄せるシンジの感触がカヲルを密かに攻め立てて、時折甘えたように舌先でペロリと胸を舐められるとカヲルはきゅっと唇を噛み締めるのだ。

「カ、ヲルく…ん、ふうぇ…」

カヲルの勃ち上がった巨根がシンジに届いて股下をクイッと擦るとシンジはもう小刻みに震えてしまう。もう股の間で蠢く腕の感触ですら快感なのだ。それでもプクッと白濁した液がシンジの幹先から顔を出すとカヲルの手はすっと緩んでしまう。カヲルはもう自身の巨根でシンジを血で染めないようにと丁寧に時間をかけて、執拗に解していった。それからやっとのことで指を三本に増やしてからぐちゅぐちゅと柔らかく中をかき混ぜ始めた時、けれど、シンジはイキたいけどイケない責め苦のような事態についに目尻から涙を垂らして懇願したのだ。

「ぼく、もう…ふぇ!…んぁ、おにぇが、い…」

必死で言葉を発してもろれつが回らずにいよいよ自分がおかしくなってきたとシンジは思った。密かに事を進めようと内股に力を入れてカヲルの巨根を挟もうとするが、なんとも弱々しい抵抗だった。だからシンジは今度は小さく口を開いてカヲルの粒立った乳首を咥えてちゅるっと吸ってみたのだ。

「シ、シンジくん…!ん…う、」

その卑猥な情景はカヲルを激しく煽ってしまい、巨根が更に質量を増して跳ね上がるとシンジの小さなふたつの包みをペチンと打ってしまった。その快感が全身を駆け巡るともうシンジは口もしっかり閉じられずに唾液が垂れるのをそのままに泣きべそをかきながら自身の張り詰めたそれに手をかけようとした。

「も、もう限界なのかい?」

それを咄嗟に制止したカヲルの手をぎゅっとシンジは握ってコクコクと何度も頷いた。

「無理させていたね、ごめん。じゃあ、」

そう言うカヲルの声も感じ入って震えていて、鼻から抜けてゆくような頼りないものになっていた。カヲルは緊張に何処か泣きそうに微笑みながら、そっと中指を曲げて何かを探し出した。

「あぁあ!」

するとシンジがキュッと腰を反らせてカヲルに思いきり抱きついたのだ。棹からはトプッと先走りが溢れてポタポタとシーツに染みをつけてゆく。

「で、でちゃった…」

「ふふ。僕が出したんだよ。前立腺を確認したのさ。さあ、」

それからすうっと三本の指が抜かれて、その余韻にシンジがお尻をキュッキュッと震わせるのも束の間、カヲルはもう一度シンジを仰向けにして、そのまるい後頭部の下に端にのけていた枕を敷いた。そして膝裏を持ち上げて自身の肩に掛けると、浮いたシンジの柳腰を片手で支える。ちょうどふくらはぎを支点にしてシンジの細い足が力無く伸び上がった。その眺めに熱い溜め息を吐きながら、カヲルは露わになった愛くるしいお尻に念入りにまたローションをたっぷりと掛けてゆく。シンジの呼吸はとても早い。

「シンジ君、力を抜いて深呼吸をしていてね。そして痛かったら我慢せずに僕に言っておくれ。また君を傷つけたくないからね。」

「傷つけても、いいから、最後まで、してね。」

「…それは、出来ないよ。」

「おねがい…」

シンジが真っ赤になりながらぽろぽろと涙を溢して言うものだから、カヲルはもう頭が真っ白になってしまう。

「…いくよ。」

その願いには答えずに、カヲルは熱膨張で恐ろしいくらいに成長したそれを手で支えて目的地の窪みにあてがうと、はあ、とひとつ深呼吸をしてからぐっと腰を、一歩、進めた。

「うわ、あぁ!…んぐ…ふぇ、ぁあ…」

それは指とは比べ物にならない圧迫感でシンジは目を見開いたのだ。ゆっくりと確実にズプズプと侵入してくるそれに思わず顔を顰めて、頭にある枕をギュッと握り締める。そうしてまだまだ終わらない不快感に逃げ腰になりかけたのが支えていたカヲルの手に伝わってしまう。

「ん…痛いかい?やめよう、か。」

カヲルが腰を押すのを止めるのを感じてシンジはブンブンと首を振って力みかけた身体を鎮めて深呼吸に集中した。それを見つけてカヲルはまたゆっくりと慎重に圧をかける。巨根にとって小柄な少年のアナルはいささか窮屈過ぎた。穴がキュッと締まる心地はまさに根幹を食い千切られるような痛みが走ってカヲルも実は苦しいのだ。それに、シンジが力を抜いた時には至高の快楽がカヲルの肉棒に纏わりついて、別の意味でもカヲルを苦しめていた。これ以上質量を増してしまったら、ただでさえ限界に近いシンジに更なる負担をかけてしまう。カヲルは一瞬も気を緩めずに全神経を集中させてシンジの中へと入っていったのだった。

「も、うすぐ、だよ…」

シンジが悲鳴の混じった呼吸音を響かせていた、その時だった。ズンッとカヲルが腰を突くと彼の平たい腹がシンジの柔らかな腿肉に当たったのだ。

「入った…」

もうその時にはカヲルは前屈みになって股の間から真下に居る恋人の顔を見下ろせていた。シンジが震える唇をそのままに濡れた睫毛をすうっと上げると、目の前には大好きなカヲルが、居る。

「入ったの…?」

「うん。」

ふたりは熱い恋人の瞳で見つめ合う。それは色は違うけれど、同じ宇宙を浮かべていたのだった。

「よかったぁ…」

シンジのぺったんこの腹は巨根を呑み込んでぽっこりと少し膨らんでいた。そのまるみを見つめてシンジは愛おしそうに手のひらでくるりとそこを撫でたのだ。

「え?…あ、あぁあ!」

するとすぐさま腹の中がドクンと押されて、シンジは驚いて弓なりにビクリと全身を震わせた。爪先がトンと跳ねる。

「ん、…大丈夫、かい…?」

「…んふぇ…どうした、の?」

「ふ…シンジ君があんまり可愛らしいから、興奮して、しまったのさ。」

カヲルは熱い息を吐きながら笑顔を努めていたけれど、汗を滲ませ耳まで紅潮した顔の端々から余裕のなさが伝わってきていた。

「…少しの間、このままでいよう。きっともっと馴染んできたら、気持ちよくなるはずさ。それまで、あまり僕を煽らないでおくれ。」

シンジは、そんなつもりじゃなかったのに、と言おうとしたが、カヲルはシンジの頬を撫でて、君が愛おしくて堪らないよ、と呟いたので、それを呑み込んでから代わりに、僕も、と短く応えたのだった。そうして互いしか世界に居ないような熱のこもった瞳で見つめ合っていると、

「そろそろ、動くよ…」

とカヲルが囁き、微々たる律動が湿った静寂の空間の中で開始された。カヲルはシンジの体内がカヲルを受け入れたのを感じたのだ。カヲルを欲しいと強請るようにシンジの内壁が吸いつくようにキュウキュウと巨根を呑み込もうとしている。だからカヲルは理性と本能の狭間で、ふたりの身体の角度を変えてグリグリとシンジの内側を抉るように巨根を蠢かせてゆく。

「ひゃ、あぅ、やん、はぁ、んにゅ、ふぇ、」

その振動の波の山の部分、グイッと身体が頭上へと傾く時にシンジはさっきから漏れ出てしまうへんてこな喘ぎをリズミカルに宙に浮かせた。

「かわいい、ん、シンジ、くん…!」

「にぁ!ひぇ!みゅ!やぁ!んぁ!あぅ!」

そしてその声を聞く度にカヲルの巨根は限度を知らないようにみるみると硬く膨れ上がってシンジは太い杭でみっちりと繋がれたかのよう。何度も何度も最奥を突かれたかと思うとそれはありえない長さと太さで更に更にと中をかき混ぜてゆくのだから、あっという間にシンジの小さな棹はピンと頭をもたげて反り返り、ピクピクとカウパー腺液を溢れさせてゆく。

「すきだ…!シンジくん!だいすきだ…!ん!シンジ、くん…!」

それでも止まない律動のクレッシェンド。気がついたらシンジは枕ごと頭を持ち上げられて首を傾げて壁に押しつけられていた。けれど、カヲルは日頃の鍛錬が実を結び、もう夢中で腰をドンドンと、振っても振っても疲れを知らずに終わらない。寧ろ勢いをこれでもかと増しながら、シンジくん、シンジくん、と叫ぶのだった。

そしてそれは徐々にパンパンと小刻みに早くなり、カヲルのものはもうシンジの自由を奪うほどの威力で限界まで張り詰めて、ドクンドクンと爆発に備えて昂ぶっていた。覆い被さっているカヲルは汗を振りまき銀糸を揺らして、感じ入って顔を切なそうに歪ませて、熱い吐息で、シンジくん、あぁ、と叫んでいる。激し過ぎるピストン運動の中、シンジはまるで自分の身体じゃなくなったみたいにカヲルに身体を貫かれながらも、あ、もうすぐだ、と意識の断片で思ったのだ。頭を支えていた両の手を目の前のカヲルの首に伸ばして最後の力でギュッと抱きつくと、それがとどめとなって、カヲルはそのシーツを離れたシンジの背中を思いきり掻き抱いてから、渾身の強さでグイッと最奥のその奥へと突き上げた。

「ん…!はぁあ…!」

「あぁああーー!」

カヲルの指がシンジの湿った柔肌に食い込んで、熱いものがドドッとシンジの奥を薄い膜を膨らませて満たした時に、ふたりの腹の間にも同じ温度の白濁液が勢いよく噴射されたのだった。けれど、小さな器よりも大きな器の方が入る中身も多いのだ。そうやってコンマ数秒遅れたシンジの射精がピュッピュッと最後まで出し切り終わっても、カヲルは止められない腰の律動と痙攣する熱い身体で激しく熱を思いきり噴き出していた。そしてーー

「あぁああぁーー!!」

ーーシンジは新たな衝撃に絶叫したのだった。なんと、コンドームが激しい摩擦と射精の勢いの為にパァンと破裂してシンジの体内にカヲルの熱が弾けたのだ。その強烈な快感にシンジは驚いてガクガクと身体を震わせカヲルにしがみつき止められない噴射を体内で受け止めて、カヲルがグイグイと腰を打ちつけ最後まで出し切ると同時に二度目の凄まじいオーガズムをドライで迎えて、激しく肢体を痙攣させて甘い嬌声を甲高く響かせてから、繋がったまま、ぱたりとシーツの上に倒れたのだった。

「はあ…し、シンジくん…!」

「へへ、かをる、くん、す、ごいや…」

まだ全身を巡る快感にピクピクと小刻みに震えながらシンジはとても幸せそうに恍惚と微笑っていた。長い余韻に睫毛が揺れて涙が目尻から溢れている。

「ごめんよ!ん、また僕は、君を傷つけて、しまった…」

息もまだ覚束ないカヲルが快楽に酔いしれていた恍惚の表情から、酔いが覚めたみたいにみるみると涙を溜めて顔を青褪めて、スッと腰を引こうとしたから、

「あ、だ、だめ!」

シンジはそう叫んでカヲルを両手で手繰り寄せて弱々しいなりにしかと身体にしがみつく。

「けれど、早く処理しないと、シンジ君がお腹を壊してしまうんだよ…」

「そしたらカヲル君が僕の看病して。僕、まだこうしてたい。だって、」

カヲル君が僕の中にいて幸せなんだ、ギュッとカヲルを抱き締めながらシンジが耳元でそう甘えた口調で囁くと、破けたコンドームから解放された巨根がまだまだ足りないとドクンと強く脈打ちシンジをまたまた驚かせたのだった。

「あぁ、ん…!」

「あ、煽らないでおくれ…はぁ、」

けれどもカヲルはそう言いながらもこの幸せが名残り惜しくてシンジの意のままに其処に留まり、シンジをギュッと抱き締め返してその余韻に浸ったのだった。カヲルはシンジの中の熱さに、とろけそうだ、と心の中で呟きながら、ふと頭を巡らせた。そこには出逢った日から今までの軌跡が走馬燈のように駆けてゆく。

幼稚園の頃、ヒーローだと言っていつもちょこちょこカヲルの後をついて回ったシンジ。
小学の頃、ふたりで手を繋いで帰ったらクラスメイトに恋人だとからかわれてもその手を離さなかったシンジ。
中学の頃、カヲルが油絵のモデルを頼んだらその季節の全ての放課後をカヲルのために捧げたシンジ。
そして高校の頃、体育倉庫で手を伸ばして掴まえたあの、銀河の瞳のシンジ。

その歴史の重さにカヲルは性感とは違う種の歓喜を覚えて、ポロリ、涙を零したのだった。

「僕たち、出来たね。」

シンジもそれを想い出していたのだろう。その声は感慨深く、潤んでいた。

「そうだね。ありがとう、シンジ君。」

「ふふ。頑張ったのは、カヲル君だよ。」

「気持ちよかったかい?」

「うん、すごく。カヲル君は?」

「とっても気持ちよかったよ。シンジ君と巡り合えて、よかった。」

それを聞いてシンジも涙を溢しながら本当に幸せそうに微笑んだ。ふたりはゆっくりと向き直り、互いの宇宙から流星が垂れている様を見つめ合い、嬉しさのあまりポロポロと涙をそのままにして額を合わせて、いつまでも愛を囁き続けていたのだった。


それからシンジはカヲルの巨根が吐き出した物凄い量の精液の処理が遅れて案の定、お腹を壊してしまったのだった。けれど自分を甲斐甲斐しく世話するカヲルの姿に内心はとても喜んでいた。そんなことは露も知らずに、ぐったりと寝そべる最愛の恋人にカヲルは弱気になって、僕のが大き過ぎたからだ、ごめんよ、なんて頭を下げて謝るもんだから、シンジは可笑しそうに笑ったのだ。

「カヲル君、カヲル君はヒーローなんだから、そこもヒーローサイズでいいじゃない。」

「でも、君を傷つけてしまう…」

「それ以上に、気持ちよくしてくれたでしょ?」

シンジがそう言ってキスを強請るとカヲルはさっきまでの感傷は何処へ行ったのか、一瞬で獲物に食らいつく。

「はあ…困ったな、君にどんどん夢中になる…」

「僕も。カヲル君を知っちゃったら、もう他の人とは出来ないや。」

「シンジ君…!他の人とするなんて!絶対にいけないよ!」

「ふふ。冗談だよ。カヲル君はヤキモチ妬きだね。」

「冗談でもそんなことを言ってはダメだよ!」

「ふうん。もし言ったら?」

シンジはカヲルの百面相が楽しくてからかっていただけなのだが、

「君はまだまだ僕に夢中ではないらしいね。もうそんなことなんて言えないくらいに、僕は君を僕に夢中にさせてみせるよ。」

カヲルの真剣な眼差しに、シンジは覚悟したのだった。カヲルからはきっともう逃げられない。その巨根はもう既に鞘に収まりたがっている。次の日は日曜日。シンジはより快感に溺れさせられる自分を想像して生唾をゴクリと呑み込むのだった。

「明日から、覚悟していてね。シンジ君。」

「じ、冗談なのに…やさしくしてね、カヲル君。」

それからカヲルは更にテクニックを磨き上げて、シンジの繊細な身体を大切に扱いながらも、その巨根を駆使して際限なく愛を伝えて、シンジはもう二度とあんな冗談も言えないくらいズブズブにカヲルに満たされていったのだった。
カヲルは巨根の根元も大きい。つまりはそう。馬力が凄まじくて、たとえ夜が明けて朝が来ても、元気いっぱいで止まらない愛を噴射する。だからシンジは心の底から思ったのだ。カヲル君にまたヤキモチを妬かせてしまったら、僕、きっと、死んじゃう。


ある日の休み時間、アスカは相変わらず大嫌いなカヲルの腰つきを、いやらしいヤリチンね、と悪態をついて罵っていたが、ふと、気がついた。そんなカヲルの横に居るシンジのお尻がなんだか、

「女みたいにクネクネしちゃって。」

カヲルと共鳴してさくらんぼがプルンと揺れるみたいに、いやらしく見えてしまったのだ。それはまるでヒーローとヒロインの後ろ姿のよう。だからアスカはとうとう降参して、薄々わかっていた叶わない恋をついに終わらせたのだった。

「…はあ。はいはい。どうせ私は悪役ですよー、だ。」



top



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -