\. 赤と青は紫にはならない


(in RED and BLUE)





きみとぼく

ふたりだけど

ひとりとひとり

だから

きみが恋しい





横たわるシンジにカヲルはシーツに膝と肘ををついて覆い被さった。見つめ合う瞳がお互いの色を宿して煌き揺れる。紅の中には碧、碧の中には紅が灯されていた。時が止まったような長い沈黙。暗い部屋の中、月明かりも届かない片隅は、何もない世界にふたりだけが潜んでいるみたいだった。


ーカヲル君が僕を見つめている。上から覗き込む影が深くて朧気な顔が、僕を駆り立てる。世界で今、僕にしか見えない秘密めいた君。君の愛情が溢れてそのまま僕にぽたぽた零れ落ちてしまいそうなくらい、色んな想いで満たされている表情。言葉が見つからない。


ーシンジ君が僕を見つめてくれる。全てを知った今までのどの君でもない神秘に満ちた顔が、僕を駆り立てる。僕の影が君に覆いかぶさって世界から君を囲ってしまったみたいな錯覚に目が眩む。僕の愛した全ての君が其処に居るのに、それでいて目の前に居る君は何故か新しい君。万華鏡のように僕を惑わし続けるその表情。言葉が見つからない。


「シンジ君…」

果てしなく続きそうな沈黙を破ったのはカヲルだった。熱に浮かされたように囁いた彼の声は、シンジの耳にはとびきり甘く響いた。緊張のあまり発せられない声の代わりに、潤んだ瞳を揺らして慎ましやかに微笑んだ。

それを甘受と理解したカヲルは、ゆっくりとシンジに体を重ねて抱き締めた。


ーカヲル君が急に僕を抱き締めたから、僕は上ずるような高い声を出しかけて、どうにか喉の奥で飲み込んだ。君がのしかかって初めてわかるその体の重さが堪らなくて、その衝撃に全身が痺れて眩暈がする。密接する体の温度をその重みがひとつにして、もうきっと溶け合ってしまう、そんな変な錯覚でおかしくなりそう。君の存在を強く感じて、僕は、初めて君の存在の大きさに愕然とした。


ーシンジ君を初めて恋人として抱き締めた。君が僕のものになる、そんな感覚が体中の細胞を覚醒させる。僕の生の躍動が頭から爪先まで駆け巡り、激しい劣情の熱が疼き出す。君を奪い去りたい。君とひとつになりたい。けれど、君の漏れ出さないように抑え込んだ声が、僕の胸を締め上げる。君の存在の大切さに途方に暮れる。壊れやすい君を大事にしたい。君の幸せを守りたい。君の為の僕でありたい。

惚けていたままだったシンジは、薄く開けた口で静かに深く息を吸った。そしてそっとカヲルの背中に手を添えて、小さく抱き締め返した。


ーカヲル君の体は熱かった。僕は上がる息をどうにか気づかれないようにやり過ごしていたけれど、彼は僕よりもそれが難しそうだった。はあはあ熱い息を僕の耳元で小さく早く吐き出しては、たまに喉を鳴らしていた。もう耳が痺れてじれったかった。堪らなくて少しだけ身をよじる。すると、微かに震える指先が巻きつけた腰からじわじわ這い上がって脇腹を優しく撫で上げてきた。思わず僕が小さく甘い声を漏らしてしまって自分の腰を跳ねさせたら、彼の指が何故か止まった。


ーシンジ君の反応に身体の奥から沸き出るような汗が噴き出す。僕は節操も意気地もない自分が情けない。全身で君を求めている。けれど、君の気持ちがわからない。近づけば近づく程わからなくて、臆病になった。自分の歯止めの効かない身体が怖い。気を抜けば君に欲情して指が動いた。どう足掻いても下半身にずしりと溜まっていく熱を止められそうにない。僕は何度も描いてきた君を今、腕の中に包み込んでいる。それはとても危険な事なんだと、今更気がついた。



「カヲル君…」

僕は思わずそう呟いた。彼の耳元がすぐ側だから静かに囁いたつもりだったけど、カヲル君は驚いて体をびくつかせた。僕の台詞は少し語尾の上がった響き。君がじっとしているから、頭の隅が冷静になってきて君を心配したんだ。それに、とても待ちわびた再会でいきなりこうなってしまったから、これ以上長くこうして抱き締め合っていたらきっと僕は死んでしまう。体が持たないよ。



僕は肘を突いて上半身だけ起こしてシンジ君と向き合った。同時に君の掌の温もりがするりと背中を離れてしまい寂しくなる。僕は内心を気づかれないように、なるべく穏やかな表情をした。目の前の君は頬が赤く色づいていて、潤んだ瞳や形のいい唇が艶めかしくて、僕の理性をぐらつかせた。そして蕩けて鈍った頭で唐突にずっと気になっていた事を口に出してしまった。

「シンジ君…君は、夢を見たかい?…かつての僕の部屋で…その、君と僕が…」

確信が無くて口籠ってしまったが、彼が耳まで真っ赤にして目を泳がせたので、すぐに夢を共有したんだと解った。今、僕の耳元もきっと彼のと同じだろう。あれはふたりのキスだったと云う喜びと共に欲深い自分への羞恥が僕を責める。

「僕はあの時、意識が夢の中だったから…ちょっと、自分に素直になり過ぎていたんだ…君を傷付けようなんて思っていなかったし、出来ればあんな格好悪い姿を君に見せたくなかった。」

シンジ君の瞳が僕を真っ直ぐ見つめる。僕は自分から始めた告白に恥ずかしさの余りに逃げ出したい衝動に駆られたけれど、どうにか持ち堪えた。

「君は嫌だったかい?あの時、僕はとても身勝手だったね。君はとても優しくしてくれたのに。僕は君が思うよりずっと情けない奴なんだ。だから…君が、嫌な想いをしてしまったなら…謝りたい…」

自分で言ってて哀しくて消えてしまいたかった。

すると予想外に目の前でシンジ君の瞳が涙を溜めて揺れて、大粒の涙がぽろぽろと頬に流れた。目の前の光景に頭が真っ白になる。胸が潰れて、苦しい。


「どうしてそんなこと言うのさ。」

シンジ君の顔が哀しそうに歪む。不意討ちのそれは僕の心を掻き乱す。

「君はかっこ悪くなかった。君は情けなくもない。君は優しかった。すごくかっこよくて綺麗で、僕は君がキスしてくれて嬉しかったんだ。僕はあんな素敵な体験が夢で、途中で終わってしまったのが悔しくて、目が覚めてから…泣いたんだ。それに…それに、ずっとあの夢を想い出してーーー」

僕は自分の指先を彼の唇に滑らせて、シンジ君にこれ以上は言わなくてもいいと伝えた。充分過ぎて、目が熱くなる。ああ、僕と君とは本当に心を通わせていたんだなと思ってしまう。君が同じような気持ちを抱いてくれていたのが嬉し過ぎて、もう止められない。君にキスするのを止められない。君を愛するのを止められない。



(君に会ったらあの夢をやり直したいと思ってたんだ。)
そう続くはずの言葉を止めたのはカヲル君だった。そして次の瞬間には、カヲル君は僕をきつく掻き抱いて、僕は彼に強く唇を重ねられていた。

僕の中に入ろうとするように深く押し上げて吸い付くような口付けのその激しさに僕は怯んで逃げ腰になった。腰が浮つくように体を捩ったら、カヲル君はその動きに合わせるようにして僕の腰を掴んで自分の腰を深く沈めるように擦り付けてくる。その波のようにしなやかな動作がとても男らしくて、僕は僕のまだ知らない君を知ってしまって圧倒された。

舌を拒む理由もなくて、カヲル君にされるがままの僕の口内が支配されてゆく。お互い溢れそうな唾液を飲み込む喉の音が堪らなくて、小さく喘いだ僕の声がふたりの口の隙間から漏れた。

「シンジ君…」

唇の先と先が触れ合ったまま少しだけ顔を浮かせて君が囁く。その響きが低く掠れてひどく色めいて聞こえて僕はまた知らない君を知って頭が真っ白になった。その声が脳内にこだまして体中から汗が滲む。君の言葉が宙に消えてまた絶え間無いキスが再開されても、僕の手は震えて君を抱き締め返せない。初めての感覚に僕は気が動転して、涙の道が出来てしまってる僕の頬に、また雫が垂れた。



ーシンジ君との二度目のキス。それは僕の懇願のかたちではなくて、君への愛を示す僕の想いのかたちだった。僕はありのままを表現して君に僕を知ってもらいたい。だから僕の熱は臆する事なく君に伝えられてゆく。僕は君を愛している。愛することは疚しい事なんかじゃない、と君が教えてくれたから、今度は僕が、それは怖い事じゃない、と君に教えたい。

君の喘いだ声が僕に火を点ける。抑えられない昂りが、僕を追い詰める。シンジ君は何処までを願っているのだろう。君の僕に添えられない指先が、僕と君とのこの先に望む情景の小さなずれを示している気がする。

僕は暫くシンジ君を堪能した後、名残惜しく唇を離した。唾液の糸がぷつりと切れて、視界に広がる同じく僕を堪能して蕩けたように赤く潤んだ君の唇を見つめた。無防備に少しだけ開いた口が、涙を湛えて煌めく赤みがかった青を宿した瞳が、頬を染め上げたその幼さを残した表情が、余りにも美しくて僕の身体は重力を無くしたように崩れてゆく。君に深く堕ちてゆく。



カヲル君が両方の手を頬に添えて僕の顔を包み込む。親指を頬骨に這わせて、人差し指が濡れた目尻を撫で上げて、君の温かさが心にひたひたと染み入る。君が僕を見ている。赤い瞳が熱っぽく青々とした若い欲情の光を宿す。君が僕を欲しいとその表情で伝える。僕は体中の脈という脈が、キスから伝わった君の熱を隈なく行き渡らせているように感じた。

ーカヲル君…君を意識すると僕は体の隅々まで君に奪われてしまったみたいで、自分が自分じゃないみたいで、怖い。僕の心はずっと前から君とひとつになりたいと願っているのに、現実に君と抱き合うと僕は小さな子どもみたいに何も手に負えなくて、怯えてる。

カヲル君の右手が頬から滑り落ちて、首筋を流れて、鎖骨のかたちを確かめるように撫で上げて、肩から腕を伝って、指を僕のそれに絡め合わせる。そのゆっくりと指先が触れるか触れないかの加減が信じられないくらい気持ち良い。僕の体は甘い痺れで爪先まで粟立ち、堪らず噛んだ唇が細かく震える。僕は我慢できずに鼻から甘い嬌声を漏らした。

初めての感覚で焦れったくて内腿を擦り合わせてしまう。体中が熱く火照って呼吸が早くなる。自分の体なのに言うことを聞かない。僕は唾を飲み込んでぼんやりした頭で、どうしよう、と思った。カヲル君は握り合ったふたりの掌をシーツの上を滑るようにして僕の胸の高さまで持ち上げた。ほどけないようにきつく指先を絡め取る。

「君はどうしたいんだい?」

カヲル君はあやすような優しい声で僕に聞く。左手は僕の汗ばんだ額から、前髪をゆっくりと掻き上げる。彼らしい慈しむように優しい微笑み。だけど、薄っすら汗を滲ませて上気し色づいた頬に、真っ赤に熟れた唇がいつもの彼とは違っていて、不思議な感覚にくらくらする。

僕が答えを出しかねていたら、カヲル君は笑みを深くして少し困ったような眉になる。そして瞳を閉じて僕の額に軽いキスを落とした。雨が降るように僕の目尻や鼻や頬にキスが次々と落ちてくる。あちこちにキスの雨が堕ちてからカヲル君はまた小さく笑い、やがて首筋や鎖骨へ、僕の肌が露わになっている箇所へ順番に下ってゆく。

僕は彼の睫毛が震えているのをぼんやり見ていた。今、僕の手首の内側に口付ける君。角度によっては切なそうに羽ばたく睫毛の毛先。そしたら僕の視線に気づいたのか銀糸の間から赤い瞳が僕を見上げる。熱を孕んで鋭く僕を射止めて、その力強さが胸に刺さり、思わず息が止まりかけた。


ー僕は…

僕は、このまま君に流されても構わない気もする。

ーそれはどんな感じなんだろう。

けれど、それでいいのかな。

ー僕は、君と同じようにそれを求めているのかな。

僕は、君と同じ気持ちになれるのかな。



シンジ君はとてもいい匂いがする。君の顔中にキスをしながら、僕はそんなことを思っていた。キスとキスの間にたまに君の肌に鼻を擦らせて息を吸うと、肺が君で満たされていくようで、僕の理性はもう白旗をあげてしまいそうになる。けれど…

きっと君はこの展開に最後までついていけない。それは君の奥ゆかしい性格から。君をずっと見てきた僕はわかってしまう。けれど、君の僕への想いを知ってしまったから、僕は君の言葉でそれを伝えてほしいと思う。


ー僕は君を抱きたい。君が欲しくて堪らない。でも、それよりも、僕はいつか、君と心も身体も重ねてひとつになりたい。だから、君が僕を止めてほしい。さもないと、このまま君を世界の果てまで攫ってしまいそうだから。僕を止められるのは君しかいないんだよ、シンジ君。



ー僕が、こわい、といったら君は少しだけ僕を嫌いになるのかな。僕が、いやだ、といったら君は哀しくて泣いてしまうのかな。僕が、まって、といったらもうずっと僕を待っていてくれた君は怒ってしまうのかな。君がわからないよ。こんなに近くにいるから、君と僕との小さな違いを果てしなく大きく感じてしまう。これがふたりで一緒に生きていくってことなんだね、カヲル君。


カヲル君が真剣な眼で、僕を見上げたままだから、僕は君から目を反らせなくなった。カヲル君はそのままキスをやめて、姿勢を変えて僕に覆い被さるように僕の顔の横に肘をつく。僕の顔の真上から僕を見下ろす君。面と向かって僕に何か伝えようとその赤い瞳がきらきら揺れる。吸い込まれそうなくらい力強くて、それでいてどこまでも包み込むように優しい。際限ない時の中で僕を見ていてくれた瞳。


君の伝えたいことがわかるようになったら、僕はどんなに幸せだろう。
その君の眼にちゃんと答えられたらならーー。


カヲル君が静かに微笑んだ。すると君の顔は僕の首筋に沈み込む。左手は僕の胸をシャツの上から優しく撫で上げて、右手は僕の体とシーツの間に捻じ込まれて僕の腰をぐっと君へと引き寄せた。君の熱く湿った吐息が僕の鼓膜を震わせ、そして君が大きく喉を鳴らした。刹那、僕の首筋にはねっとり熱く濡れたものが這う。

筋に沿って舐め上げる舌の初めての感触に僕は自分の声じゃないみたいな嬌声を高く甘く響かせてしまった。小刻みに震える体。恥ずかしくて熱い顔がもっと熱くなる。

「カヲル君…」

声が震えてしまう。

ーどうしよう。僕はどうなってしまうのかな。

「あっカヲル君!」

カヲル君が僕の耳朶を甘噛みして、舌が耳の中に入り、水音を立てて弄ぶ。君の指先が脇腹を擽り、そのまま下って僕のお尻を優しく揉む。僕は何度目かの甘い泣き声を上げた。君も甘い溜息をついた。

君の体が熱い。シャツ越しなのにその湿った熱を感じる。君が小さく震えて荒い呼吸を飲み込んで、引き攣るように喉を鳴らした。そしてまた甘い溜息をつくと、君が僕の体に腰を沈めて突くように動かして、僕に君の体を擦りつけた。存在感を増して硬く膨らんだものに圧迫されるのを感じて、僕は頭が真っ白になった。君の、熱を孕んでかたちを際立たせたものが、僕に押し付けられて、我に返る。恐ろしさに僕の胸がひゅっと潰れる。それは僕にこのベッドの上でのふたりの行く末を悟らせた。

ーああ、そういうことなんだ…

ーこわい…

もう何も考えられなくなって、僕は叫んだ。

「まって!」

君の体がぴたりと止まる。

「待って…」


ーーー。


ー僕が止めたのに。怯えて、このまま先に進むのが怖くて、待ってと伝えたのに。夢のような時間も終わってしまうんだとわかって、悲しかった。何でだろう、君が好きなのに、大好きなのに、君の望む僕でありたいのに、僕だって君とひとつになりたいのに…僕はバカだ。自分が何をしたいのか、わからない。

急に悲しくなって、僕は泣いた。



ーシンジ君が泣いている…シンジ君を泣かせてしまった。身体の火照りを残したまま、身体の奥は波が引くように冷えていく。君を泣かせるつもりじゃなかったけれど、何故か君は泣いている。君はとても繊細で、どんなに君の事ばかり考えていても君の心は未だに解らない。君は今、何を考えているのだろうか。胸が苦しい。


「どうして泣いているんだい?」

ー君を泣かせたくはなかった。

「………」

君の瞳が哀しく歪み、涙がはらりと頬を伝う。

「嫌だったかい?」

君が小さく唇を開く。

「…まさか…違うよ。」

やっと僕は息が出来る。

「僕は君がやめてほしかったらやめるつもりだったんだ。君の口からそれを聞きたくて、催促してしまったけれど。」

ーなかなか言ってもらえなくて、もう少しで…危なかった。

「…最後までする気はなかったの?」

君は驚いて目を丸くした。

「僕はそうしたかった。けれど君はきっとそうじゃないと思ったから…君を泣かせるつもりはなかったんだ。ごめん。涙の訳を聞かせてほしい。僕は君をもっと知りたいんだ。」

「…僕は、悲しかったんだ。僕は…君とひとつになりたいのに、怖くてできなかった。だから、きっと、悲しいんだ。そうしたいのにできない自分が嫌で…本当はそうしたいから、君との時間が終わってしまうのが嫌で…」


シンジ君は最後まで言葉を紡げずに、僕を見つめたまま、またはらはらと涙を零した。

ーそうか、シンジ君は僕と同じなんだ。心と身体がちぐはぐで、もどかしい。そのちぐはぐの仕方が君と僕とでは違うけれど、その気持ちなら僕にはわかる。


そうか…


僕は君をまたひとつ知って、心が温かいもので満たされてゆく。

君と僕はまるで違って、それを知る度に戸惑うけれど、その違いの謎が解ければ、こうしてただ、愛おしさが待っている。


君がこんなにも愛しい。
君がこんなにも恋しい。


君の涙を拭った。そして君の唇にやさしいキスを贈る。君は泣くのをやめて瞳を涙で煌めかせながら、僕を見つめている。

「待つよ。君の心の準備が整うまで、僕は待つ。だから、泣かないでいいんだよ。僕達はここから始まったばかりじゃないか。僕は君を離さない。ずっと一緒だろう?かつての僕等と違って時間はたっぷりある。時間をかけてふたりで歩んで行こう。僕は君の心も身体も欲しい。そしていつかふたりでひとつになりたいんだ。だから君とこうして心を語り合って前に一歩を進めた事が嬉しいんだよ。僕はそれだけで充分幸せなのさ。」



カヲル君が綺麗に微笑んだ。あまりにも綺麗で、全てが眩しくて、ああ、僕はまた君を好きになった、と思った。

時間…僕らに足りなかったもの。それをふたりでこれから分かち合って行けるんだ。君の言葉が染み渡る。君の想いが僕を少しずつ変えてゆく。僕に勇気をくれる。


君が愛しい。
君が恋しい。



「好きだよ、カヲル君。」

唐突な告白。

見つめ合うふたり。

「…好きだよ、シンジ君。」

ふたりの笑顔が重なる。



同じように微笑んで、
同じように想った。



そしてふたりはそのままベッドの上で横に並んで眠った。手を添えるように淡く抱き合いながら寝息を立てた。ふたりともそれだけでとても満ち足りていた。向かい合い眠る横顔がそれを物語っていた。



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