サチリアジス解体新書


「カヲル君ってエッチなことが好きなんだね…」

僕は呆気にとられて目の前の光景を凝視した。

「違うよ、シンジ君が好きなんだ」

確かに、朝陽を浴びてカヲル君のおっきな槍は僕の方をツンと指して僕を見つめているようだった。あ、僕の視線を感じてピクピクしてる。どうしていいかわからない僕。真面目くさった顔をして謝るカヲル君に、僕の方が申し訳なく思えてきた。
でもね、朝起きて一番に、そんなものが膨らんでズボンから顔を出していたら、誰だって戸惑っちゃうと思うんだ。ちょこんと先っちょだけはみ出たそれが、なんだか切ない。

こんなことってあるのかな、と僕はネットで検索してみた。すると、あるらしい。あれが大きな人は朝勃ちをするとパンツが窮屈になって、それを跳ね返すようにつるんと上を向いて中から出てきてしまう。カヲル君みたいに部屋着も突き破るみたいに出てきちゃうと、ゴムに先端が締め付けられて痛いんだって。よく考えてみればそうだ。カヲル君はあの時、やっぱり痛かったんだ。

でも僕は、そんな簡単にひとつの事例だけで「エッチなことが好きなんだね」なんて嫌疑をかけたわけじゃない。僕なりの悩ましい理由がある。

まず、僕らはまだ“友達”だったのだ。

「好きってそういう意味だったんだ…」

僕は自分の部屋に帰ってきて溜め息混じりにそう囁くと、顔からベッドに崩れるようにダイブした。スプリングに揺られて想う、友の顔。帰り際、カヲル君、ちょっと涙目だった。変な誤解されていないといいけれど。

変な誤解ってなんだ!?まだ“友達”ってなに!?僕はまだ、告白されたわけじゃないし、何を考えているんだ。もしかしたら壮大な勘違いかもしれないし。そうだ。朝勃ちなんて、僕だってある。たまたま僕が泊まりに来た日にエッチな夢を見ちゃっただけかもしれない。

「うーん…」

カヲル君のあんなところ初めて見ちゃった。ズボンの上からでも大きそうだなって密かに思ってたけど、もう立派にかたちまで大人だった。なんでだろう、僕とひとつしか違わないのに。頭にこびりついた光景。カンガルーの赤ちゃんみたいに僕を見つめているそれを考えると、僕の体の奥の方が、熱くなる。

カヲル君と僕はいつも一緒に遊んだ。見目壮麗なひとつ上の先輩に気に入られた僕は鼻高々で、でもそんなひねくれた気持ちも彼の前では不思議とすっと消えてしまうくらい、僕はカヲル君に夢中だった。その笑顔を見つけるだけで、僕はもうカヲル君以外考えられない。でもそれって、同性でも、別に変じゃないと思う。アスカだって外国の女性歌手のポスターを貼って毎日真似して踊ってるもの。カヲル君はそんなポスターの人よりずっと、キレイ。カッコいい。すごい。

けれど僕はたまに小さな違和感を感じていた。カヲル君はすごくスキンシップが多いんだけれど(僕だけ特別扱いなんだ)、抱き締められると硬いものが僕のお腹に当たってしまう。最初は大きな財布だな、と思っていた。でも何度目かに「そんなはずないだろう」と僕は自分にセルフツッコミ。僕だって男だ。僕にもわかる。あれは勃起の感触だ。信じられなかったけど。

どうしてだろうとグルグル頭をそのことが占拠して、でもカヲル君に限ってまさかと、僕は「お年頃だから」なんて今思うと楽観主義もはなはだしい答えを導いてしまったのだ。そして、ついに、今に至る。僕はカヲル君に誘われてカヲル君ちにお泊まりに行った。そしてカヲル君の嬉しいような恥ずかしいようなやさしい魔法にかけられて、いつの間にか同じベッドで眠っていた。抱き枕みたいにされて、僕は至福にうっとりして、羊が3匹も歩かないうちにぐっすりと眠ってしまった。カヲル君の匂いってなんだか、安心する。

「カヲル君って…」

その時、遠くからマンション付属の呼び鈴が聞こえた。日曜日の午前中に誰だろう。僕は気まずくなって朝の途中でカヲル君ちから帰宅したばかり。なんだか怠くて玄関に出たくない。
でももう一度ブザーが鳴って、僕は仕方なく応対することにした。はい、と気のない返事をして玄関のドアを開ける。

「シンジ君…」

そこにはさっきから僕の頭の中を埋め尽くしているカヲル君が立っていた。エッチなものをパンツにしまっているあのカヲル君なんだけれど、目の前にいる彼はそれがまるで幻想だったみたいに頭の先からつま先まで、シャンとしていた。でもどうして花束なんて持っているんだろう。

「僕と結婚しよう」

差し出された薔薇の花束。僕はカヲル君には逆らえない。だって僕は、カヲル君が、好きだから。

「うん…でもまずは、付き合おう?」

全身ギュッと抱き締められて、僕はまた魔法にかかる。

あ、ちょっと、下の方がムズムズしてきた。

あ、ちょっと。







「カヲル君ってやっぱりエッチなことが好きだったんじゃないか!」

僕は呆気にとられて目の前の光景を凝視した。

「違うよ、シンジ君が好きなんだ」

確かに、カヲル君は僕と付き合い始めてから、それを言わないと死んじゃうみたいに毎日愛を囁いてくれる。でも。僕の目の前でビックリするほどそそり勃つそれに、どうしていいのかわからない僕。真面目くさった顔をしておねだりするカヲル君に、僕は時間をスリップしてしまったんだと思えてきた。
だって、さっき終わったばかりじゃないか。僕、もうきっと何も出ないよ。最初に戻る、みたいなデジャヴに僕はもう、おかしくなりそう。

こんなことってあるのかな、と僕はネットで検索してみた。すると、あるらしい。あれが大きな人はあの袋も大きくて、そこにはいわゆる精力が詰まっている。だから出てくるものの量もやっぱり多い。僕がビクビク何も出せなくなっちゃっても、カヲル君は涸れない泉みたいにビュンビュンと湧き出てくる。個体差ってあるんだなあ。

でも僕は、そんな簡単にひとつの事例だけで「エッチなことが好きだったんじゃないか!」なんて憤怒にかまけたわけじゃない。僕なりの悩ましい理由がある。

そう、カヲル君は正真正銘の“絶倫”だったのだ。

「まだ君に注ぎ足りないよ…」

ヘトヘトな僕を愛おしそうに抱き寄せてカヲル君は興奮してる。僕がいいよって言うまでムリヤリには絶対しないんだけれど、もうだいぶ、余裕がなさそう。僕が油断するとちょっとずつ気持ちいいところを触ってくる指先に、僕の中がキュンとなる。

付き合っているわけだから、会えばお互い寄り添い合う。するとカヲル君のはすぐにおっきくなってしまう。手を繋ぐだけでももっこりしちゃう。もっこりしちゃったらしばらくは我慢してくれるけど、気がつけば、僕は自分のお尻をおっぴろげてしまってるんだ。いつも、いつも。

「もう、僕、できないよお…」

カヲル君は着痩せというか、服でたくましさを隠しているから、ズルい。僕、騙されたみたい。初めての時、「そんなの入らないよ!」と僕は叫んだ。まさか僕のお尻にそんなものを挿れるなんて想像もしなかった。でも入った。人体の不思議だよね。

いつの間にか僕はまたゆでダコみたいにクネクネしてる。カヲル君とエッチなことを始めると僕はこうしておかしくなって、最後には、気絶しちゃう。僕だってちゃんと起きたままで終わりにしたいのに、カヲル君は許してくれない。あ、また僕は揺さぶられてる。カヲル君のがもっともっとと内壁をスリスリしてる。

一度くらい、逆になりたい。僕がカヲル君を気持ちよすぎて気絶させちゃうんだ。満足度100%にさせてあげたい。きっと僕が寝ちゃったらカヲル君は残念そうにしてるんだと思う。そう思うと僕はいつも切なくなる。ちゃんとしてあげたいのにできないから僕はつい、さっきみたいなことを言って、カヲル君を焦らしてしまう。出来ることなら僕も同じくらい絶倫になってあげたい。もどかしい。

みんなこんなに何度も何度もエッチなことをしているのかなあ?僕が精一杯、中を締めてカヲル君を感じていると、カヲル君の動きがどんどんすごくなる。あぁ、体が言うことをきかない。ぎゅうぎゅう詰めのカヲル君が暴れ回って爆発寸前の硬さで思いっきり攻めてくる。そこで僕は、風船が破裂するまで膨らむような絶頂感に襲われた。

「あぁ…!」

僕が泣き声で喘ぐとカヲル君は暴走モードに突入。もう誰も止められない。僕はカヲル君に弱みを握られているんだ。ある場所ばかり擦られるとイキっぱなしという状態になってしまう(最初はすごく怖かったけど、もう慣れました)。僕はそうなってしまうと羞恥心とか理性とか全部吹っ飛んで、すごいことになっちゃうんだ。へんてこに体をふにゃふにゃにして、ピクピク激しく痙攣して、やぁん、とか変な声まで出しちゃう。トロトロの思考回路で、女の子みたいに叫んで、ついに何も見えなくなっちゃう。いつも思い出すと消えてしまいたいくらいなのに、何故か僕は同じ道を辿ってしまう。必死でカヲル君にしがみつくのに、抵抗むなしく、僕は意識を手放した。

「僕と結婚しよう」

目覚めると僕はまた、最初に戻る。お腹にかえりたい赤ちゃんみたいに、僕に擦り寄り、そそり勃つそれ。

「うん…でも僕、カヲル君と結婚したらきっと体が溶けてなくなっちゃう」

全身ギュッと抱き締められて、僕はまた魔法にかかる。

あ、ちょっと、下の方をスリスリしないで。

あ、ちょっと!







僕はネットで検索してみた。きっとカヲル君はサチリアジス(ドン・ファン型)。そして僕はいつの間にか、そんなカヲル君との相性100%の体にされてしまったらしい。

「僕と結婚しよう」

僕の中でドクンドクンと期待に脈打つカヲル君。その熱を感じて恍惚とした僕は、ついに、こう答える。

「うん…喜んで」


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