第壱中の体操服が悪い


不機嫌そうな渚とシンジが地蔵のように座っている。今は休み時間なのに。

「あのふたりどうしちゃったわけ?」
「さあ。3限目からなんかおかしいんだよな」

そしてふたりは同時に机に伏せてしまう。


3限目は体育だった。チャイムが鳴って最初の10分、男子は二人一組で準備体操をすることになっていた。渚とシンジはペアになって、そして5分後、動きが止まる。

「勃っちゃった…」
「へ?」

シンジは思わず下を覗いた。報告通りだった。

「授業中に変なコト考えるなよ」
「考えてないよ。見てた」
「見てた?」
「シンジ君見てた」
「は?」
「シンジ君見てた」
「冗談はソコだけにしろよ」
「冗談じゃないよ。君、冗談で勃起するの?」
「…冗談だよ」
「冗談?」

話がこんがらがってきた。深いため息。

「ああもう。とにかく処理してきなよ。僕待ってるから」
「無理だよ。痛くて歩けないもん」

そんな涼しい顔で言われても。

「碇〜!渚〜!何してんだよ!」
「ごめん!僕たちのこと気にしないで先やってて!」

担任は不在。クラスメイトはグラウンドの横のテニスコートに移動していった。厳戒態勢1ランクダウン。けれど、まだ女子たちがすぐそばでハンドボールをやっている。

それなのに、渚の体操服の短パンがパンパンにつんのめってしまう。

「おい、離れててもわかるから隠せよ」
「どうやって?」

自分のことじゃないのになんだかものすごく恥ずかしい。シンジは渚の前を隠すようにして立った。

「僕の肩に寄りかかって」
「なんで?」
「いいから」

言われた通りにしてみる。負傷兵の完成。

「君は足を捻挫したから僕は保健室に運ぶ」
「準備体操で捻挫?」
「うるさい」

そしてふたりは極めて不自然に歩き出した。渚は早く歩けない。たまに、シンジの尻にナニが擦れてビクッと全身を震わせた。ため息が耳にかかりドキドキしてしまう。

「シンジ君の体操服大きめじゃん?」
「うん」
「かがむと乳首見えるよ」
「は?」
「襟口から」

知らなかった。トコトコ歩く。

「向き合って足開いて肩に乗せるストレッチあるじゃん」
「うん…」
「短パンからパンツ見えるよ」
「え」
「パンツもめくれてお尻まで見えてるよ」
「…そんなとこ見るなよ」
「無理だよ。あんなエッチなの。本能だもん」

あのストレッチだけ渚がやけに気合いを入れてやる理由がやっとわかった。

そうしているうちに校舎裏まで辿り着く。

「もう隠さなくていいか」

シンジは渚から離れた。たまに自分に当たると興奮されている気がして、よろしくないと思っていたのだ。

「ひとりじゃ歩けないよ」
「嘘つくなよ」
「ちゃんとトイレまで連れていってよ」
「知ーらない。僕もう行くから」

ほんの冗談のつもりだった。

なのに渚はシンジを校舎の壁に押しつけた。背中にピタリとくっつく。

「ちょっと出ちゃった…」
「え?!」

そして細い腰をつかむと渚は前を擦りつけはじめる。

「なんでそんなに、興奮させるの…」
「や、やめ、」
「我慢、できないじゃん…」
「え、ちょっ」

体が熱い。余裕のない動きの中、漏れる吐息。体操服がめくれてゆく。体を持ち上げられてくねる腰。腿の間に塊を挟まれて、シンジがわけもわからず固まっているうちに、渚はたちまち痙攣した。射精したのだ。


ハプニングだった。未だによくわからない。どうしてあんなことになってしまったのだろう。シンジは混乱して渚がまともに見られない。渚はいろいろ弁解したいけれど動けない。

パンツの中に出してしまった渚は今、ノーパンに制服だった。スースーして気持ちいい。気持ちよくてすぐに勃起してしまう。さっきイク前、思いきり突き上げた時、確かに「やぁ…」とシンジは感じた声を出した。たまらない。思い出す度にまたギンギンになってしまう。渚は前屈みになって授業を受けるしかなかった。

一方シンジは不覚にもエッチな気分になっていた。あの感覚。ムラムラする。お尻を擦られて、ちょっと前も擦れちゃって、目覚めてしまった何かをしずめてしまいたいのに、放課後がまだ遠い。だから内股になってうずくまる。こんな体にした犯人を恨みながら。

最後の授業も終わりにさしかかる頃、シンジは後ろのクラスメイトから肩を叩かれ紙切れを手渡された。四つ折りを開いてみると案の定、あの犯人からだった。思わず手の中のものを握りつぶす。

『ごめん、思春期で。今日一緒に帰ろ?』

ひどい謝罪文だ。


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