「ベッド半分使っていいよ」って言ったら普通の碇シンジなら遠慮すると皆さんはお思いだろう。
そんな時、ドスンッ――横でそんなベッドが軋んだ音がしたら、どうだろうか?

それって、脈アリ?脈ナシ?



プラスチック・トリップ



渚もそこのところが知りたい。

ふたりはまぁ転換期というものを迎えていて(それについては後ほどお話しよう)とてもぎこちない状態にもかかわらず、シンジは渚の部屋に放課後遊びにきた。歯ブラシをしのばせて。つまりわざわざ泊まってくれようというのだ。飛んで火に入る夏の虫。

同じシーツの上で「おやすみ」なんて聞こえてきたから渚はとりあえず返事をした。すれすれでくっつかない背中同士。なのにほんのりシンジのぬくもりを感じるのは気のせいか。気のせいでもドキドキするのが恋心だ。

―脈アリだったら?

どうしよう。攻略法がわからないんだけど。渚は思う。でもやっぱり、

―意識してないってアテツケかも?

それって脈ナシ。シュンとする。自業自得じゃん、なんて渚は自分に説得する。


前の土曜日、シンジはふらっと泊まりにきた。渚は別にかまわない。毎日だってかまわない。悪友よろしく気にも留めない態度で「ふうん」と流したけれど、正直シンジの父親がまるでダメなおっさんなことを神に感謝したものだ。マダオと喧嘩したらお母さんに「いってきます」と律儀に伝えて家出にくるシンジに実は萌えてるなんてことは内緒にしている。(シンジはちょっとスレてたい繊細な年頃なのだ。)

まぁそれで転換期の話になる。シンジはもちろん寝る前にシャワーを浴びる。そしたら自然とパンツを変える。変えたパンツ(使用済)はどうしているのか。綺麗に畳んでビニール袋に入れていた。いくらスレたフリしても性格は出てしまうのだ。

「朝ごはん、何もないけど?」

冷蔵庫が空っぽでシンジはちょっと不貞腐れた声を出す。

「あーごめん。買い忘れた」
「じゃ君、朝ごはんいらないの?」

泊まった次の日の朝はいつもシンジが作ってくれた。彼なりのお礼だと渚も知ってる。だから米・味噌・卵なりはいつも買い足しておいたのだ。けれどその日は何故かどれもスッカラカンだった。

「お米どうしたの?」
「炊いて食べた」
「君が?」

シンジは目を見開いた。渚が自炊するところを見たことがなかったから。

「でもお味噌までなくなってるなんておかしいじゃないか」
「炊いた……じゃなくて溶かした」

シンジが訝しげに見ているので「お湯に」と付け足した。

「じゃあ君が買ってこいよ。君が忘れたんだろ」
「えーだって何買っていいかわかんないし」
「いつも買ってただろ」
「…シンジ君が作るんだからシンジ君が買った方がいいんじゃない?」

それもそうだな、と妙に納得するシンジ。夜のまだ浅い時分、彼は出かけた。

―ふう。計画通り。

味噌をチューチュー吸った甲斐があったよね。玄関のドアが閉まって、渚は両手で母なる地球を抱き締めようと伸びをした。さて深呼吸。第二段階に突入する。

シンジの鞄の中に例のブツはあった。固く閉ざされたビニール袋を開けたら中には、きっちり己の貞操を守ろうと折り畳まれた…

―これが、シンジ君の…!

パンツ!

渚の両手は興奮で震えていた。梅干しを見た時みたいに涎がジュワッと口いっぱいに広がった。両端をピンとつまめばもう、不可抗力。貞操は守れまい。真っ先に見つめてしまう、真ん中らへん。まだほんのりあったかい(気がする)。

鼻をつけて掃除機みたいに息を吸い込むと、何とも言えない何かにムクッと起き上がる、渚の息子。裏返しにして顔を埋めてもうひと吸い。ああ、もういきなりビンビンになってしまった。

タイムリミットはあとどれくらい?やれることは全部やらねば。フガフガしてからちょっと舌でツンツンすると、まるでアレの先端をツンツンしている気分になる。これすごくエッチじゃない?渚は興奮。いや、まだ足りない。もしもシンジ君のパンツに潜ることができたらって思ってたじゃん。そう思ってパンツを被ってまた深呼吸。両手で母なる地球を抱き締めようと伸びをしていたところで気がついた。

シンジが見ている。

「何してんの?」

ドアの前、明らかに不機嫌な声でたぶん言わなくてもわかっていることを聞かれた。不審者を見る目。欲望に忠実な男・渚はまさかバレるなんて考えてもいなかったから万事休す。どうしよう。これは…決してやましい気持ちじゃなくて初恋のピュアな恋心が起こした若気の至りなんだとわかってもらえるだろうか。これは愛なんだ。真実の愛なんだ。

渚はパニクッた。

「君が好きだ。結婚も考えている」

向き直り、至極真面目な顔をして、

「けれどこれはプロポーズじゃない。僕の意志さ。だから返事はいらないよ」

精いっぱいカッコつけて前に小説で読んだ感じで真摯に想いを伝えたのだ。

パンツを被りながらでどれくらい伝わったかはわからない…


―いや、意識してるけどわざと意識してない風を装って、実は愛情表現してるのかも?

超ポジティブシンキング。そうじゃなきゃ、あんなことの後で立ち直れない。

シンジはあれから気にも留めない態度で「ふうん」と流してしまったのだ。いつも通りの態度で渚と接していた。渚はそれがどういうことなのかわからなくて滝の汗。ちゃんと謝りたくても知らん顔をされるから、きっかけがつかめずに四苦八苦。今日もいきなり泊まりにきて「朝ごはん何がいい?」とか普通に聞いてくる始末。ちょっと自暴自棄になって「ベッド半分使っていいよ」なんてふっかけてみたら、こんなことになってしまった。

―どういうこと?

電気を消した部屋の中、シングルベッドに背中合わせ。心臓が限界突破。ドキドキを飲み込んでそう聞けないかわりに振り返る。ゆっくりと寝返りを打つ。シンジの可愛い項が見えた。ツヤツヤの黒髪も柔らかそうな耳たぶもみんな、暗がりの中で手の届く範囲にある。

―いい匂い…

どさくさに紛れて首筋をクンクンすると淡いセッケンの香りが鼻中に広がった。微かにシンジの甘い匂いもする。たまらなくってその匂いに唇を寄せた時、

―!?

シンジがもぞもぞ動いたから、ちょうど首筋にキスした体になってしまう。

「ん…」

シンジの寝息がすごくいやらしい。まるで真夜中にエッチなことしてるオトナの関係みたいじゃん。渚は変な汗をかく。思わずスタンバイをはじめた下の息子を手で押さえた。

―い…いいよね?

好きな子の素肌にキスできる熱に浮かされて、渚はもう一度シンジの首筋にキスをした。ちょこっと舌を出してみた。

―!?!?

そのとたん、シンジが大きく寝返りを打ってふたりは向かい合わせになった。もう唇まで届きそうで、届かない。そのもどかしい距離の先、シンジの長い睫毛がふるふる震えた気がした。

―シンジ君、睫毛長い。人形みたい。

ドキドキで息苦しくなる。シンジの肌はきめ細やかで唇はふっくら美味しそう。甘い上等のお菓子みたいだ。

―口と口のキスってどんな感じだろう。

素肌に唇が触れただけで体中に電気が走った。口ならどうなっちゃうんだろう。どんな味がするんだろう。

―したい…

胸がキュッとなる。首を伸ばすとあと一押しで届きそうだ。シンジの甘いミントの寝息が渚の頬をそっと撫でる。さっきの歯磨き粉ミント味だったのかな、と寝る前のシンジを思い出して、

―いやダメ絶対ダメ!

唇を尖らせたままゆっくりと顔を離す。ぼうっとしてきた頭の片隅、彼の理性が叫んだのだ。パンツ被っただけでもかなりヤバイのに寝込みを襲ってキスまでしたら死刑だぞ!悶々としている息子を股で挟んでそうだと頷く。僕は、紳士だ。

でもまだ欲望を捨てきれず、ちょっとだけならいいよね、なんて思いはじめた時だった。

―!☆◎▲?%&!?

ワンモア寝返り。渚の股間にシンジのお尻がジャストフィット。あまりのショックに渚の息子がぷるんと股から飛び起きた。

―はあ…すごい…

夏の薄い部屋着は中身の形状をありのまま伝えてくれる。想像よりも柔らかいシンジの肉尻。みずみずしくて張りのある白桃が頭をよぎった。ジンジン感じて傾斜がどんどん水平に近づいている渚の息子も、美味しいよ!お母さん!とばかりに喜んではしゃいでいる。快感の目眩にくらくら。出来心でそわそわしていた手がシンジの腰を抱くと、

―あっ…!

今日のシンジは寝相が悪い。グイッとシンジのお尻が欲望のマッチ棒を刺激した。こすったら火が出るじゃないか。そのかわりパンツに小さなシミをつけて、渚は顔を火照らせた。僕たちもうエッチしてるんじゃない?とふたりの姿勢に夢うつつになっていると、

―えっと待って本当に興奮してきた、

事態は転がり落ちる坂のよう。シンジがねっとり腰をくねらせたら(まるでお尻を押しつけるように)もう息子が爆弾になるカウントダウンをはじめたのだ。80%…90%…95%…

―待って待って!

背中を押して離れなきゃ。でも起こしちゃいそうで動けない。どうしよう。

どうしよう!

「〜〜!」

100%…もう発射準備はOKである。





シンジは薄目を開けていた。

―もう渚、危ないんじゃない?

フフッと鼻で笑いそうになる。漏らしちゃったらパンツ履き替えるところ見届けてやろう、とまぁ思うくらいにはシンジはすごく怒っていた。何に?そう、あの告白に。

―そりゃ最初はビックリしたけど…

自分のパンツを被っている親友を見つけたんだから当然だ。でもその時、シンジは渚に嫌悪感というよりは変な慈しみを覚えたのだ。シンジは渚にすごく甘かった。アレを見て「可愛いヤツだな」と思うくらいには重症だった。自覚はない。

―返事はいらないって何?

直訳すると「告白されたからイヤイヤ付き合ってやってもいいと思ったのにそのチャンスを勝手に奪われて意味不明なくらい怒ってる」ということだ。

―僕の意思は?

ややこしいがシンジは「実は両想いだったのにこの気持ちはどうすればいいの?どうにもできないの?…許さない」と渚に復讐している。シンジは自分のパンツを被った渚がフル勃起していたのを見逃さなかったのだ。(そんな姿を見ても恋しいこの恋心をどうか察してあげてください…)

「…う、」

寝たフリのシンジがもぞもぞと腰を動かしたら、渚がキツそうに呻いた。シンジは悪い顔をしてそろそろだなとほくそ笑む。

―渚が悪いんだっ、

そしてとどめを刺そうとお尻を構えた、その時だった。

渚の手がそろそろとシンジの腰を這い、慎重にパンツごと部屋着を下ろしはじめたのだ。あんまり手際がよくて、いつの間にかシンジは膝上まで脱がされていた。

「……、」

シンジが戸惑っていると、後ろでもぞもぞ衣擦れの音がして、

―!!

裸の尻の割れ目にピタリと熱く湿った塊を押し込まれた。興奮して固い爆弾になったそれがヌルヌル動いてちょっかいを出してきたのだ。

「〜〜!」

渚のが僕のお尻に入ってくる、そう思うだけでシンジはすぐに勃ちはじめた。尻の谷間の下、腿の付け根の隙間をヌチャヌチャと暴れだしたその息子の悪戯は、どんどん過激になってきて、

「…ッ!」

あどけないシンジの息子もちょっとお漏らし。ぞわぞわと肌が粟立つ。全身がドクンドクンと脈打ってきた。

―あ…やだそこ、ダメ…!

袋とか裏筋とか敏感な箇所を攻められて為す術もない。まっすぐに上を向いてつっぱねるシンジのソコ。寝たフリが仇となる。今更起きてるなんて言えない哀しいプライド。力を抜いて寝息を立てて、ヤリたい放題されてもひたすら我慢するシンジ。

「〜〜!!」

渚がイッても僕はイかない、シンジはそう心に決めて渚が射精するまではとめちゃくちゃに耐えていた。泣きそうなくらい頑張った。でも、

「…起きてるんでしょ?」
「!?」

スイッチが切り替わり、すべてどうでもよくなった欲望に忠実な男・渚がノリノリで開き直る。ちょっと怒っているようだ。シンジは自分の破裂しそうな息子へと忍び寄る手に息を詰めた。

「…ぁッ!」

渚の手がシンジの息子をやさしく扱くとシンジは背筋をグッと反らせた。もうすでに限界だった体に絶頂の波が立つ。降参の旗がちらつく。

「だめ渚、で、でちゃう…」
「やっぱり起きてたんだ」

いっぱいクチュクチュいじめられて、後ろからもパンパン攻められて、シンジはもう我慢できない。気持ちいい。ダメ、悔しい。涙目をギュッと閉じてふるふると首を振る。やだやだとそのいやらしい手を拒むけれど、

「僕を挑発して楽しかった?」

すればするほど激しくされて、シンジは、あ、あ、と女の子みたいな声を出す。そして、

「い、い、い、い、いく、――」
「もうでちゃうの?」
「――い、イく、イ、あぁッ…〜〜!!」

からかうつもりがおかしなことに。いっぱい出ちゃった…これがシンジの最新の心のつぶやきである。シンジは何故か童貞(処女?)を卒業していた。

更におかしなことに、

「気持ちよかった?」
「…うん、」

その顔は満足そうなとろける笑顔。ちょっと強気で意地悪な渚にメロメロになってしまう、詰めの甘いシンジだった。


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