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*
それは一瞬の出来事だった。
一瞬にして、地球に存在していた生命が消え去った。
…彼以外。
――何が起きたんじゃ?
まだ回りきっていない頭で必死に考える。
そうだ、俺はさっきまで仲間と一緒にテニスをしていた―――。なのに、なぜ?
ふと、地面をみれば身動き一つしない仲間たち。
しかし外傷はない。
――おかしいじゃろ、いろいろと。
ふぅ、と息を吐いて考える。
落ち着け。
俺は詐欺師ぜよ。
冷静さを欠いたらどうなるか…
わかっちょるはずじゃ。
とりあえず、なぜ自分ひとりが生きているのか。
いや、むしろ仲間たちは本当に死んだのか?
まばたきをした一瞬で、こんなに人が死ぬものか?
「ごめん、死んでるよ。こいつらは。」
『!!!!』
突然の声に驚き振り向く。
そこには、
『ゆ…きむ、ら………?』
立海大附属中学校男子テニス部部長――――――“幸村精市”が立っていた。
だが“幸村精市”はほかの仲間と一緒に地面に倒れている。
さらに格好も不思議だ。
まるでギリシャ神話にでも出てくるような――…
「残念。俺は幸村精市じゃないよ。俺は神。」
「さしずめ、そこで死んでいる神の子の親ってところかな。」
『、は?』
どういうことじゃ?
…あぁ、子が神の子と呼ばれているから便乗して自分は神だと言っているだけか。
そうでないと――まさか本当に神がいるなんてそんなわけがない。
「現実逃避はそこまでだよ」
『………なんじゃ、もうアカンのか。少しくらいええじゃろ。』
「ふむ。さすが俺が見込んだだけはあるね。この状況を受け止めるのが早い。」
『さっきから分からんことばかりなんじゃが…説明してもらおうかの。』
「あぁ、忘れてた。そうだね…簡単に言うと」
「きみは実験台として選ばれたんだよ。仁王雅治。」