After the night

ユウキは週明け提出の課題に没頭していた。
残り数枚のところで、一度ペンを置き背伸びをすれば、欠伸が出た。

「ふぁぁぁっ…」

時計を見れば時刻は2時を回ろうとしていた。
欠伸も出るはずである。

「あっ。やだ、もうこんな時間!明日、ノボリさんと久々のデートなのに…!」

ユウキは再びペンを取り、腕をまくった。

「頑張らなくっちゃ」

そう呟くと、また紙に文字を書きはじめるのだった。



After the night



翌日。
何とか徹夜で課題を済ませたユウキは、急いで待ち合わせの場所へと向かう準備を始めた。
シャワーを浴びて、お気に入りのワンピースに身を包み。
徹夜でできてしまった隈を隠すためにメイクを施した。

一睡もしていないため、少し身体が重く感じるが、ノボリに会えると思うとそんなのも気にしない。
足早に待ち合わせの地下鉄へと向かう。

地下鉄の入り口へやってくれば、黒いコートを着たノボリが立っていた。
ユウキに気付いたノボリは、微笑んだ。ユウキも自然と笑顔になる。

「ノボリさん、待ちました?」
「いえ、今来たところです。さ、行きましょうか…」

ノボリが手を差し出せば、ユウキがその手を取った。
にこっと笑うと、目的地まで歩き出す。
歩いている途中で、ユウキがこくりこくりと首を縦に振っている。
頭をボーっとさせ、時折ノボリの声が耳に入らなくなっていた。

「ユウキ?眠いのですか…?」
「ふぇっ!?大丈夫ですよ」

ノボリが顔を覗きこめば、大丈夫を言うユウキ。
しかし、顔色が先ほどよりいくらか青ざめている。

「顔色があまりよろしくないですよ?」
「大丈夫、で…」

そのままユウキの身体が前へ倒れていく。
驚いたノボリが腕で支えたため、地面にぶつかることはなかった。

「ユウキ!?しっかりしてください、ユウキ…!」

ユウキの身体を揺すってみるが、閉じられた瞳は開くことなく、
変わりにすうすうと寝息が聞こえてきた。

「寝てる…?全く…驚かせないでくださいませ…」

安堵の息を漏らしたノボリ。具合が悪かったのではないかと本当に焦った。
気持ちよさそうに眠るユウキを起こすわけにもいかないので、ノボリはユウキを抱き上げると地下鉄へと向かった。


―――――――


仮眠室へやってくれば、そこへそっとユウキを寝かせてやる。
ここに来たのは、家よりも地下鉄の方が近いから。

「んぅ…?」

ゆっくりと目を開く。
そこは見慣れない天井だった。

「起きましたか?」
「ノボリさん!?私…寝ちゃったんだ…」

ノボリが顔を覗かせれば、ユウキは驚いた表情を浮かべた。
やってしまった、と。

「気にしないでください。学校の課題…ですか?」
「うん」
「大変そうですね」

ユウキが成人しているとはいえ、学生なのは知っていた。
デートの時に学校の事もよく話してくれるが、大変だなとノボリはいつも思っていた。

「大丈夫だよ。今日のデートの為に昨日、徹夜で頑張ったんだもん…」

にこっと笑うユウキだったが、ノボリは眉間に皺を寄せていた。

「徹夜ですって!?女性はきちんと睡眠をとらなければいけません!それに寝不足だとお肌の調子も悪くなるでしょうに…」

確かに寝不足は女性にとっては大敵だ。
学校の事を頑張るのもいいが、少しは自分の体調の事も考えてほしいと思う。

「でも、デート…」
「デートなんていつでもできるのですから…」

ユウキにとって課題を頑張るのも全てはノボリとのデートのため。
大変な課題を無理して頑張ったのは、ノボリといる時間を少しでも作りたかったから。
それをいつでもできるで片づけてほしくない。ユウキにとっては何よりも大事な時間。

「確かにいつでもできるけど…少しでもノボリさんと一緒にいたかったから…。だから頑張ったのに…」

ユウキの目には涙が浮かんで来た。
ノボリは一つため息をつくと、ユウキの頭を優しく撫でた。

「わたくしはどうもあなたの涙には勝てる気がしません」
「ノボリさん…」
「これからはデートの前の日はわたくしの家に来てくださいまし」
「…へ?」

ノボリの言っていることに目をぱちくりとさせるユウキ。
ノボリがにこっと微笑んで、ユウキの頬に手を滑らせた。

「少しでも私と一緒にいたいのでしょう?わたくしの家に来れば、課題も無理してすることもなくなりますし、何より一緒にいる時間が増えますでしょう?本当はあなたが学校を卒業するまで待とうと思ったのですが、気が変わりました。どうでしょうか、ユウキ」

デートの日。
つまり休みの前の日はノボリの家でお泊りデートができる。
課題があったとしても、ノボリと一緒にいられる。
わからないところは教えてくれたりしそうな期待を胸に寄せた。

「…っ、ノボリさん、大好きっ!」

ベッドから起き上がると、ユウキはノボリに思い切り抱き着くのだった。


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