Almost dangerous

私の名前はユウキ。
最近、地下鉄のバトルサブウェイのサブウェイマスターのノボリさんとお付き合いを始めました。
ノボリさんは出会ったときからとても親切にしてくれて、気が付いたら好きになってた人。
昼休みの時間帯なら来ても大丈夫と通行証までくれました。
地下鉄で働く人たちもとってもいい人たちばかりで、私のことをすぐに受け入れてくれた。

「もうすぐ昼休みだ。ズルッグ、ノボリさんのところに行こうか」
「ルグ!」

ズルッグと私はノボリさんのところへ行く途中で、不審な人たちを見かけた。

「何なの、あの人たち…」

不思議に思い、後をつけてみた。
もし何か変な事を起こせば、ジュンサーさんを呼ぼう。
ちらっと男達の会話を影から耳を傾ける。

「おい、この盗んだポケモン達はどうする?」
「そうだな、ここにしまっていこうか・・・」

ポケモン?ポケモンを盗んだ…?
この人たち、ポケモン泥棒なの?

そう言えば今朝のニュースでどこかの施設のポケモン達が盗まれたって言ってたっけ。
もしかしてそのポケモン達?
大変だよ、早くジュンサーさんに連絡を取らないと。

慌ててポケットからライブキャスターを取り出した。
じーっと前のやり取りを確認して、ボタンを押そうとした。
私は背後に泥棒の仲間がいたことなんて気が付かなかった。

「ルグッ!」
「!」

ズルッグが声を上げたと同時に腕を掴まれた。
はっとして顔を上げれば、にやにやとした泥棒さんが私を見ていた。

「ここで何をしているのかな?」
「…っ!」

男の声に話していた仲間達も私の方を見てきた。

「おい、こんな小娘に見られているなんて」
「面目ねぇ…」
「あっ…!」

泥棒にライブキャスターを奪われ、地面に叩きつけられて破壊されてしまう。
これで一切の連絡手段がなくなってしまった。
ズルッグが男達を威嚇している。

「ルグ!」
「おっと、威勢のいいポケモンだねぇ…お前のご主人様がどうなってもいいのか?」
「やめっ…離して!」

男は私の身体を引き寄せて、顎に手を置いて顔を固定させる。
それを見たズルッグは、一歩も動けなくなってしまった。

「ルグゥ…」
「そうだよ、大人しくしていれば何もしないぜ…」

そう口では言っているが、にやにやしながらズルッグを檻に入れられてしまう。

「ズルッグ!やめて、ズルッグに何するの!?」
「こいつも一緒にボスのところに連れて行く。ついでにお前もな!」
「きゃ…!」

そう言って腕を引っ張られて、車に乗せらされそうになった時だった。
突如、男が私の腕から手を離し倒れた。
今度は別の人物に肩を抱き寄せられる。

「…?」

不思議に思った私は後ろを見た。
そこには黒いコートを羽織った、良く知る人物が立っていた。

「大丈夫ですか、ユウキ?」
「の、ノボリ…さん」
「ルグゥ!」

いつの間にかズルッグも檻から出て、ノボリさんの肩に乗っていた。
ひょこっと顔を出し、私の腕に飛びついてきた。
安堵した私はズルッグを力いっぱい抱きしめた。
良かった、無事で。

「ズルッグ!」
「さて、あなた方…覚悟はよろしいでしょうか?」

ノボリさんがキリっと残りの男達を睨み付けた。
気のせいと思いたいけど、指の関節がゴキゴキと聞こえてくる。
こめかみに青筋を浮かべている。完全に怒っているようだ。

男達が後ずさりながら、額に冷や汗を流している。

「か、覚悟…?」
「ええ。わたくしの大切な女性を危ない目に合わせようとした罰への覚悟で御座います…」
「こ、こいつやべぇよ!」
「に、逃げろ!」
「そうはさせません!シャンデラ、サイコキネシスです!この男達の動きを封じてください!」

ボールからシャンデラが出てきて、サイコキネシスを発動させた。
男達はその範囲内に収まってしまう。

ノボリさんは次々と男達を一瞬で蹴散らせていく。
前にも似たようなことがあって、その相手を格闘技で倒した時はすごく驚いた。
理由を聞くと、たまにバトルで敗れる人が急に殴りにかかってきたりとかするから、
護身術を身につけたとか言ってた。相手さんには悪いけど、相手をなぎ倒していく姿はかっこいい。
惚れ直してしまうほどだ。顔がだんだん熱くなっていく。

ノボリさんを見つめていれば、パトカーがやってきた。
ジュンサーさんが来たようだ。

「ポケモン泥棒、あなたたちを逮捕します!」

手錠をかけられて、連行されていく男達。
ジュンサーさんは私とノボリさんに敬礼をすると、
パトカーに戻り、業務に戻ってしまった。

「ノボリさん、どうしてここに?」
「休憩中の駅員が教えてくださいました。あなたが変な輩を追いかけていると…」

そう言われると、引き寄せられた。

「あなたが車に乗せられそうになったのを見た時は本当に焦りました。もう、あんな無茶はしないでください」
「ごめん、な…さい」

顔を上げれば、ノボリさんと目が合う。
にこっと微笑めば、ゆっくりと顔が近づいてくる。

触れるだけのキスをすれば、離れて行ったノボリさんの顔。

「次はこれだけでは済ませませんので」

そう言ってノボリさんは意地悪しく笑った。
私は赤くなって何も言えずにいるのだった。
くすくすと笑っているノボリさん。
そんな姿もかっこいいって思っちゃうのは重症なのかな?

「さて、帰りましょうか」
「うん」

ノボリさんは赤くなったまま頷いた私の手を取り、地下鉄までの道をゆっくりと歩いていくのだった。


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