「ほう、パイナップルですか」
「うん!」
ヒヨリはこの頃、食後にフルーツを出す。
今日はパイナップルのようだ。
ヤナップが不思議そうにパイナップルを見た。
「ナプゥ?」
「食べてごらん?」
ヒヨリに言われるがままにパイナップル1切れ取って口に含むヤナップ。
口の中では甘酸っぱい味が広がった。
ヤナップは基本、好き嫌いはしないため、このパイナップルもすぐに気に入ったらしく、
「ナップ!」
と喜んで食べていた。
「ふふっ。あ、口許すごいことになってる…」
口許にはパイナップルの果汁がたくさんついていた。
ヒヨリはハンカチで丁寧にヤナップの口許を拭いていく。
「ナップぅ…」
「はい、綺麗になったよ!」
「ナァップ!!」
「ふふっ」
ハンカチを口許から離せば、ヤナップは嬉しそうに笑う。
ヒヨリもつられてヤナップと笑い合った。
ヤナップと同じようにパイナップルを1切れ取って。
穴を覗き、その先にあるヒヨリとヤナップを見据えて。
「………」
ノボリははっとしてパイナップルの輪の穴の先のヒヨリとヤナップ、
パイナップルの輪をずらした状態でのヒヨリとヤナップ交互に見た。
今の光景はごくごく普通のヒヨリとヤナップの光景。
パイナップルから見えた光景はヤナップが小さな男の子に見えた。
幻覚なのだろうか。
―――これは一体……?
甘えるヤナップがさも小さい人間の子どもにも見えて。
人間もポケモン同様、愛情を持って接すればきっとそれに応えてくれる。
もしかしたら今過った男の子は近い将来、自分達の前に現れるのかもしれない。
それは何年先の話になるのかわからないが。
ノボリはフッと笑うと、瞳を閉じた。
そこにはヒヨリと自分、ヤナップにシャンデラ。
そして、先ほどの脳裏に過った小さな男の子の姿があった。
もしかしたらこれはヒヨリとノボリの未来の形なのかもしれない。
パイナップルの輪を覗いたら
(ヒヨリと作る未来の家族の構成)