ふと思ったこと。
いや、さっきの出来事の内容についてクダリさんに聞いてみよう。

「クダリさん」
「どうしたの、ナマエ?」
「私のどこがいいんですか・・・?」
「・・・ぶっ」

クダリは口に含んだお茶を噴出した。

「やだ、クダリさん。汚いですよ」
「けほけほ。いや、君が突然そんなこというから・・・」

始まりは、昼休憩の前のこと。
いつものように、お弁当を届けに出かけた最中だった。

『ちょっと!』

バトルサブウェイの入り口についたところで、声をかけられた。
振り向くと、そこには数人の女の人がナマエを睨み付けていた。

『なんでアンタがクダリさんの彼女なのよ!』
『そーよ、そーよ!』
『たいしてかわいくもないのに!』

ぎゃぁぎゃぁとわめく彼女たち。
言い返そうと、口を開けようとした時だった。
肩にポン、と手を置かれた。
手を見れば、白い手袋。
上を見上げれば、白い帽子を被ったサブウェイマスターの片割れがいた。
ナマエに微笑みを向けると、真剣な表情で目の前にいる彼女達を見た。

「君たち、ここで騒がれると他のお客様の迷惑になるよ」

クダリがそう告げると、彼女たちは顔を青ざめてそそくさとその場を離れて行った。
笑っているのに、その笑顔はどこか怖いものがあった。
ほっと胸をなでおろしたナマエは、白い帽子の彼の名前を呼んだ。

「クダリさん・・・」
「大丈夫だった?」
「ありがと・・・」

そう言って、二人で肩を並べてここまで来て、ご飯を一緒に食べたのだが。
ナマエはさっきの出来事が気になって仕方なかった。

「ナマエ、もしかしてさっきのこと、気にしてるの?」
「だって、私・・・あの人たちの言うように可愛くもないし、ましてや取り柄なんてないし・・・」

口籠って、視線を逸らした。
クダリは小さくため息をついた。
持っていたカップをテーブルの上に置くと、ナマエの名前を呼んだ。

「ナマエ、こっちおいで」
「クダリさん?」
「いいから、おいで」

ソファをポンポンと叩き、ナマエをこっちに来るように施す。
言われるがまま、クダリの元へ歩み寄る。
そのままぐいっと引っ張られ、クダリの足の間に座る形となった。
恥ずかしくて立ち上がろうとするが、クダリが後ろから抱きしめてきて、それは叶わなかった。
クダリの吐息を近くで感じて、思わず顔に熱がこもる。
きゅ、とクダリの服の裾を掴んだ。
クダリは優しく微笑むと、言葉を紡いだ。

「不安がることはないよ。君は十分可愛いよ」
「え?」

振り向いたナマエの瞼にそっとキスを落とす。
ナマエの額にクダリは己の額をこつん、とくっつけた。
照れくさそうに、ナマエは「ありがとう」と言うのだった。


瞼の上にキスすのは、憧憬の証。
(僕のことで悩んでくれて、一途に思ってくれて)
(僕にないものを君はたくさん持っている。そんな君に憧れた)


おわり。
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -