手の甲


いきなりノボリさんがこんなことを言い出した。

「ナマエ、手を貸してください」
「手?」

言われたままに手を差し出した。

「違いますよ」
「え?」

そう言って、手の甲を上にした。
私の手を自分の顔の高さまで持ってきた。
手の甲の中央にそっと唇を寄せる。
突然の行動に私の顔は赤さを増す。

「・・・っ!いきなりどうしたの?」
「いいえ、ただ、ここにキスをしたくなっただけです」


手の甲にキスをするというのは、尊敬の証。
(いつもわたくしの帰りを待っていてくださる貴女を心からお慕い申し上げます)


おわり。
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