君の笑顔が見たくて


家に帰れば、明かりが灯されていなかった。
買い物かな、って思ってみれば、リビングからすすり泣く声が聞こえてくる。
リビングへ向かい、恐る恐るドアを開けば、ソファーで僕の大事な彼女が膝を抱えて丸くなっていた。


君の笑顔が見たくて


部屋の電気をつけて、彼女の傍まで歩き、優しく名前を呼ぶ。

「ナマエちゃん?」

声をかければ、ビクッと反応する身体。
恐る恐る顔を上げる彼女。
涙目の彼女と目があった。

やばい。その顔、僕的にちょっと反則・・・じゃなくて。

僕の姿がわかって安心したのか、ナマエちゃんはわんわん泣き、僕に抱き着いてきた。

「ひっく、クダリさぁぁぁぁん」
「ど、どうしたの!?」

慌てて彼女を抱きとめて。
彼女は向こうの方を指差してまた怯えた。

「あれ・・・あれ・・・」

一度、彼女の身体を離し、指差した方へ歩み寄る。
どうやら、この子を怖がらせているものはテーブルにあるようだ。
テーブルの上を見れば、綺麗に包みに包まれたものが置いてあった。
包みを取ってみれば、映画と思われるDVDが出てきた。

「これ、映画のDVDだよね?」
「いやぁぁ、見せないでぇええ!」

DVDをナマエちゃんに差し出した途端、また悲鳴をあげられた。
僕は苦笑して、持っていたDVDをテーブルの上に置く。
DVDをナマエちゃんに見せないようにソファーまで手を引いてあげる。

「とりあえず、落ち着こうか?」

そう言って、そっとナマエちゃんの身体を抱きしめた。
あやすように、背中を優しく叩いてやる。

しばらくして、ようやくすすり泣く声も収まってきた。

「どう?落ち着いた?」
「はい・・・お陰様で・・・」

顔を覗いてみれば、ようやく落ち着いた様子だった。
話を聞いてみると、友達に勧められてレンタルショップで借りてきたは良いが、
まさかホラー系統だとは思わなかったらしい。
そういえば、この子は怖いのとかだめだったっけ。
テーブルの上に置いてあるDVDをちらっとみる。

「僕も観てみようかな?」
「え・・・」

固まった顔で僕の顔を見上げるナマエちゃん。
あ、また泣き出しそう。

僕は微笑して、ナマエちゃんの頭を撫でた。

「嘘だよ。これは明日、僕が返しに行ってあげるから。それより、ナマエちゃん」
「はい?」

ナマエちゃんの頬に手を置く。

「泣き顔も結構可愛いけど、僕は笑ってる君の方が好きだな」
「・・・え?」

きょとん、とした顔で僕を見るナマエちゃん。

「どんなことがあっても、必ず僕が君を守ってあげる。だからさ・・・」

まだ涙が残る目尻にキスを落とし。
唇にキスを落として、自分の額を彼女の額にくっつけた。

「笑って?」

そう言うと、ちょっと恥ずかしそうに視線を逸らして。
だけど、すぐに僕の方を向いてくれて。

「クダリさん・・・」
「ん?」
「ありがとう・・・!」

そう言った彼女は、今日1番の笑顔を僕に見せてくれた。


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