ホワイトデー


クダリさんからバレンタインデーに素敵な花束をもらった。
そしてその夜はとても甘い甘い夜だった。
こんなに幸せなバレンタインデーは初めてだった。

もうすぐホワイトデー。

私もバレンタインにもらったんだから、お返ししなくちゃね。


ホワイトデー


「うん、これがいい」

ホワイトデーの数日前、ナマエはとあるブランド店にいた。
クダリに渡すホワイトデーのプレゼントを探しに来たのだ。

以前クダリが仕事用に使える時計があったらいいなというのを言っていたのを思い出して、ここに買いに来ていた。
店に入りすぐに目に留まったのがこの白と茶色のしましま模様でデザインされているこの腕時計。
他にもいろいろなデザインがあるが、クダリみたいに見えたこの腕時計にナマエはどうやらひとめぼれしてしまった。

早速会計を済ませるナマエ。
プレゼント用に包装してもらい、クダリが喜ぶ顔が脳裏に浮かぶと、
柔らかい笑みをもらすのだった。


―――――――


ホワイトデー当日。
昼にクダリから電話が来て、夕方の仕事が終わる時間に地下鉄に来るように言われたナマエ。
当然自分もこの日の為に用意したプレゼントがあるわけで。
ノボリとクダリがいる執務室で待ちぼうけをしていた。

「ナマエ様、申し訳ありません。クダリはもうすぐ戻ってきますので」
「大丈夫ですよ、ノボリさん。私、今日はいくらでも待ちますから」

へにゃっと笑ったナマエ。
ナマエの嬉しそうな表情にノボリまで嬉しくなった。

「ナマエ様、今日は何だかご機嫌ですね」
「そう見えちゃいます?」
「ええ、いつもより笑いが柔らかいで御座いますよ」
「へへっ、今日はホワイトデーじゃないですか。クダリさんの喜ぶ顔が観たくて・・・」

そう言うと、ナマエは頬を赤く染めた。

「バレンタインデーに何かクダリから頂いたのですか?」
「花束と・・・その、・・・クダリさん、を・・・」

ナマエはモジモジと恥ずかしそうにしながら言う。

「左様で御座いますか」
「ナマエ、お待たせー!」

すると、ドアの方からクダリの声がした。
どうやら用を済ませて戻ってきたようだ。

「クダリが戻ってきましたね。ではわたくしはお先に失礼させていただきます」
「お疲れ様でした」
「お疲れ、ノボリ兄さん。頑張ってね」

頑張ってね、と言うのはきっと彼女のことだろう。
今度紹介してね、と思いながらナマエはノボリに手を振った。

「さ、僕達も行こうか」
「はいっ!」

そう言うと、クダリとナマエは帰り支度を始めるのだった。


―――――――


帰り道、ナマエがクダリに夕飯はどうするのかと聞いたところクダリが”家にあるもので何か作って”と言ったので、クダリの家にやってきた。冷蔵庫を開けて絶句したが、クダリが手伝ってくれたので、準備は早く終わった。今は片付けも済ませ、一息ついている時だった。
ナマエはカバンの中から包みを取り出して、クダリに差し出した。

「クダリさん、これ。バレンタインデーのお返しです」
「え、良いの?」
「はい」
「ありがとう、開けて良い?」

ナマエが赤くなって頷けば、クダリは包装されていた包みを開けていく。
この間買った腕時計がひょこっと顔を出した。
クダリはそれを手に取った。

「腕時計?」
「うん。この間、欲しいって言ってたでしょ?」
「嬉しいよ、ナマエありがとう!」

クダリはナマエの身体を引き寄せると、その頬にキスを落とした。

「ひゃっ、くすぐったいよ、クダリさん・・・」

ナマエはくすぐったそうに身体を縮こませた。
クダリもテーブルの下に置いておいた大きな包みをナマエに差し出した。

「はい、ナマエ。僕からもホワイトデーのお返し」
「わぁ・・・。開けてもいい?」
「良いよ」

クダリがそう言えば、ナマエはゆっくりと包みを開けていく。
開けていけば、ツタージャの等身大のぬいぐるみが顔を出した。
ナマエは嬉しくなり、ぬいぐるみを包みから取り出した。

「わぁ、ツタージャのぬいぐるみだ・・・。可愛い・・・!」

ナマエはぎゅ、とツタージャのぬいぐるみを抱きしめた。

「寂しい時、それを僕だと思って抱きしめてあげて」
「え、クダリさんだと思うなら、シビルドンじゃないの?」
「シビルドンは売り切れだったんだ」

クダリはぶぅと頬を膨らませて言った。
ナマエはフッと笑うと、ぬいぐるみを傍に置いてクダリの頬にキスをした。

「クダリさん、嬉しいよ。ありがとう!」

にこっと笑ってそう言えば、クダリはそっとナマエを引き寄せた。
そして、耳元に唇を寄せて甘く低く囁いた。

「今日もバレンタインデーの時みたいに甘い夜にしない?」

耳まで真っ赤にさせると、ナマエはクダリを見上げた。クダリと視線が絡みあう。
そのまま引き寄せられるようにクダリの胸元に額をくっつけると、小さく「うん」と返事をするのだった。


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