眼鏡と僕


「クダリさん、こっち向いてください」
「どうしたの、ナマエ?」

ナマエに呼ばれて振り向いた。
すると、耳に何か違和感を感じた。

「えいっ」
「わっ!」

どうやらナマエが何か耳にかけたようだ。
僕は耳にある何かに手を伸ばした。

「動いちゃだめっ!」

ナマエが少し強い口調で言った。
僕はそれに驚いて、手の動きを止めた。
ナマエがまじまじと僕の顔を見て顔を赤くする。

「わぁ・・・」
「ナマエ?」
「かっこいい・・・」

僕の聞き違いでなければ、今『かっこいい』とナマエは言った。

「見ますか?」

見るって何を?
そう言えば、さっきから何か視界がおかしいような。
ナマエはいつの間に持っていたのか、手鏡を僕に向けた。
そこに写っていたのは、眼鏡をかけた僕だった。

「眼鏡?」
「はい。クダリさんが眼鏡かけたらどんなふうになるのかなって思って」

眼鏡って普通はその人の視力や乱視に合わせて作るものでしょ?
視力がいい人が眼鏡を使うと目が悪くなるって言うのはここから来てるのかな?
この眼鏡は視界が普通に見えるから、伊達眼鏡ってところかな。

というか、僕に眼鏡をかけさせて何がしたかったのかな。
まさか眼鏡の男が好きなのかな。
不安になったクダリはナマエに思い切って聞いてみた。

「眼鏡かぁ・・・。ナマエって、眼鏡かけてる人が好きなの?」
「そう言うわけじゃないんですけど、ふと思っただけで・・・」
「そっか。なら眼鏡はいらないね」

クダリはそう言いながら眼鏡の淵に手を伸ばして眼鏡を外した。
コト、と眼鏡をテーブルの上に置いた。
それを見たナマエが残念そうに呟いた。

「取っちゃうんですか?」
「うん、僕には眼鏡いらないよ」
「どうしてですか?」

首を傾げたナマエの顔の横を通り越し、ソファに手をついて逃げ道をなくす。
もう片方の手はナマエの頬に添えるのを忘れない。
親指でツバサの唇を撫でた。

「眼鏡かけてたら、君とキスするのに邪魔でしょ?」
「え?クダリさん・・・」
「もう黙って」

そう言うと、クダリはナマエの唇にキスを落とすのだった。


眼鏡と僕



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