眼鏡と彼女


僕の彼女はいつも眼鏡をかけている。
付き合う前に聞いたことがあったけど、どうやら彼女はそうとう目が悪いらしい。
まだ1度も見たことがない眼鏡を外してる素顔。
眼鏡を外したナマエって、どんな顔してるのかな?

「ナマエー」

ソファーに寝転がって、雑誌を見る彼女に声をかける。
そのままの姿勢で返事をしたナマエ。

「何ですかー?」
「ナマエっていつも眼鏡だけど、コンタクトにしないの?」
「コンタクトってなんだか怖くて・・・」

そう言うと、ナマエは顔を上げて僕の顔を見た。
どうやら、レンズを目に入れるのが怖いらしい。
そう言うと、視線をまた雑誌へと戻した。
僕はナマエの頭に手を置いた。

「そうなの?眼鏡外したら可愛いと思うんだけど・・・」
「そんなことないと思いますど。・・・え?」

手を眼鏡の淵まで滑らせる。
ゆっくりと眼鏡をナマエの顔から外す。
その行動にナマエは目を丸くしていた。
ナマエは慌てて起き上り、手を眼鏡へと伸ばした。

「わーん、クダリさん。見えないですよ〜!眼鏡返してください〜!!」
「だめ」

眼鏡を奪い返そうとしている手。
ナマエは眼鏡がないと僕の顔が見えないらしい。
僕はナマエの手を掴み、顔を近づけた。
まじまじとナマエの顔を見た。
ナマエは僕の顔が近くにあるのかわかるのかわかっていないのか、顔をきょとんとさせていた。

「え?」
「こっちの方が可愛い」

そう言うと、ナマエの唇にキスを落とす。
ナマエの口からはくすぐったそうな甘い声が漏れた。

「ん・・・」
「でも、僕の前でしか外しちゃダメ」

ゆっくりと唇を離し、額をくっつけて少し不機嫌っぽく言った。

「どうしてですか?」
「だって、こんな眼鏡外したナマエの顔見たらきっとみんなナマエを好きになる」
「ええ〜!無茶言わないで下さいよ〜!!と言うか、眼鏡外せませんからー!」

予想以上の可愛らしい顔立ち。
眼鏡をかけている時とは違う、このギャップを皆が知ったらきっと彼女を好きになる。
ナマエの頬に手を伸ばせば、ナマエは少しムスッとした表情を浮かべた。

「そういえば、眼鏡外したら僕の顔ってどんな感じで見えるの?」
「この距離だと結構ぼやけてます・・・」
「そっか」
「?」

この距離でもぼやけてるって、どのくらい視力が悪いのだろうか。
疑問詞を浮かべてるナマエに僕は苦笑した。

「いや、今、この見えない状態で君を抱いたら何されてるのかわかんないじゃないかなって思っただけ」
「・・・っ。そこですか!!」

顔を茹蛸のように真っ赤に染めたナマエ。
僕はまた苦笑してナマエの頬に手を伸ばした。

「でも、覚えておいてね。今はまだ何もしないけど、いつか君とそういうふうになりたいって思ってるから」
「クダリさんのえっち!」

そう言って、ナマエは僕から顔を背けた。

「ふふ、ナマエ。好きだよ」

そう言って僕はナマエに眼鏡をかけると、額にキスを落とした。


眼鏡と彼女



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